刑事と裸と、どじょうとセンズリ(By 裸武道家♂)


「しかしまあ、佐藤管理官はマジでやってくれたな、裸踊り」
湯のなかに胸まで浸かり、背中と広げた腕を浴槽のふちにもたれさせながら、
組織犯罪対策課の宮地警部補が言った。その言葉に「署長もおられる前でなあ」
と応じるのは、同じ所属の彦根警部補だ。洗い場のタイルの上にあぐらをかき、
スポンジを手に肩から脇腹をこすりながら、宮地いわく「新人時代の警察署で
寮の同部屋だったときはおっかない人だったけど、20年以上たって再会したら
だいぶ性格が丸くなっていた先輩」は、クックッと実に愉快そうに笑っている。
ふたりのそんなやりとりを聞きながら、曽根警察署暴力団担当の大嶺警部補は、
数時間前の宴席を鮮明に思い出していた。
俺のドジョウを食ってみろ……だと。裸踊りというか、チンポ踊りか。
まったくあの人は。警察官の全裸芸など、大嶺にとって自身の経験も含めて、
さほどめずらしい光景ではない。だが、宣言どおり披露された管理官の余興は、
今まで見てきたなかでもかなり豪快なほうだった。

「大嶺さん、すまんね。うちの連中は上から下まで品性が欠落していて」
のんびりと笑いながら、宮地が浴槽のなかで立ち上がる。風呂場の温かさと、
そしておそらくは大仕事を終えた安心感からきんたま袋がだらんと伸びきって、
下のところが湯の表面をなめている。サオのほうも真下を向いて緊張感がない。
大嶺はすぐとなりで肩まで浸かってくつろいでいたから、宮地のきんたま袋を、
鼻先から真正面に30センチと離れていないところで眺めることになった。
彼が言っている「うちの連中」とは、自分自身や佐藤管理官、彦根といった
県警本部組織犯罪対策課の刑事たちのことだ。その表現に、大嶺は少しばかり
淋しいものを感じた。事件解決は本当にめでたいし、そういう形で捜査本部が
解散されることは、刑事たちにとって理想以外の何物でもない。だが、今回は
人間関係に恵まれすぎた。心の底から尊敬できる警察仲間との出会いがあった。
あとわずかな事後処理が終われば、一緒にいて楽しかった別所属のメンバーと、
当分はじっくり顔を合わせることもないだろう。

大嶺のそんな思いが見透かされるはずもなく、宮地は陽気に言葉を続ける。
「でもさ、こうやってチンポぶらぶらさせて風呂に入るのは気持ちいいだろう。
セックスもチンポを使わんとできないしな。チンポまるだしにするってことは、
それ自体が男の快感を象徴する行為だと思うんだよな、俺は」
「ものすごい理論だな」大嶺は笑い返した。理屈と言ってやるべきだろうか。
「管理官もだけど、確かに宮地さんの裸踊りは気持ちよさそうでしたよ」
「気持ちいいぞ。踊ってるときの自分のツラは、鏡で見たくないけどな」
今から2週間前、県内の暴力団幹部2名が殺害された事件は、潜伏していた
容疑者3名の身柄が確保されるに至ると、想定どおり一気に収束へと向かった。
曽根警察署の署員たちと県警本部から派遣された組織犯罪対策課の刑事たちが、
まさに一丸となって仕事を進めてきた捜査本部は、今週中にも解散される。

先々週、まだ解決への進展状況が芳しくなかった頃、捜査本部のメンバーで
中間慰労会が催された。その酒の席で、宮地警部補は今もそうしているように、
サオもきんたま袋も豪放にさらけ出したのである。そして、裸踊りをしながら
組織犯罪対策課の伝統という『おちんちん節』とやらを唱えたのだ。
そんな男ぶりを誉めたたえ、事件が解決したら今度は自分が裸踊りをすると
誓ってのけたのが、宮地の直属の上司に当たる佐藤管理官である。その公約が
今夜――とうに日付が変わっているから昨夜、この曽根署の会議室で催された
事件解決を祝う宴席で、みごとに果たされたのだった。
「大嶺さん。俺や宮地なんか見慣れてるけどさ、あの管理官は身体もチンポも
びっくりするほど立派だろう。顔は宮地と同じでゴリラだけど」
洗い場から彦根が声をかけてくる。大嶺は「ええ、ほんとに」と応じた。
「剣道……七段でしたか。50代なかばであの屈強さ、メタボとは無縁だろうな」
「身体よりもチンポを誉めてあげてくださいよ。そのほうが本人は喜びそうだ」

武道家の鑑とも言うべき、無駄な脂肪が一片も探せない筋肉質の裸をさらし、
警視は祝いの席で男そのものだった。とにかく最初から男気にあふれていた。
「お目汚しとは存じますが、約束どおり、自分をさらけ出したいと思います!」
張りのある声で宣言すると、宴席のまん中に進み出て、衣服を脱いでいった。
曽根署の署長・副署長も列席する、男ばかり30人近くの目前で、佐藤管理官は
背広の上着やらネクタイやらワイシャツやらを取ってたちまち上半身裸になり、
続けてズボンを下ろした。そして、ふんどしいっちょの雄々しい姿を披露した。
白の越中だった。似合ってるなぁ、と低く歓声が湧いた。中間慰労会のときに、
自分は根っからの剣道バカでふんどしを愛用しているのだと話していたのだが、
その席にはいなかった署長や副署長は、余興のための衣装だと思ったらしい。
「佐藤さん、用意がいいな。裸になる気まんまんで用意してたのか」
署長に上機嫌で茶化され、管理官は「いえ、普段から下着はこれ一辺倒です」
と応じて笑いを誘うと、やがて照れ臭そうな愉快そうな、覚悟を決めたような
絶妙の顔をしながら股ぐらに手をやり、ふんどしをはぎ取ったのである。

「よっ、ふんどしはずしたら、日本一でかいチンポが顔出した!」
彦根が芝居がかった口調で声をかけた。いつもやっていることなのだろうと、
大嶺は当たり前に了解した。そして、日本一というのは大げさではあるまいと、
警視のむき出しになった股間を凝視してしまった。白髪まじりの陰毛の繁みは
ボウボウと密度が濃く、それに覆われてサオの根もとからかなりのところまで
見えにくくなっているが、そこからぐいと伸びて露わになっている部分だけで
充分に巨根と思えた。きんたま袋はだらんとした緊張感の欠けた代物ではなく、
大きめの睾丸を内包しながら陰茎にほどほどの近さで付き従っていた。
「曽根警察署のみなさんと仕事ができたことを、私は心の底から感謝します!」
そう言いながら、全裸になった管理官は両手を腰に当て仁王立ちしてみせた。
圧倒されたような短い沈黙のあと、うおおおっ、という唸り声のような歓声と、
男ばかりの力強い拍手が湧き起こった。
そこから先は、しばらく爆笑が止まなかった。チンポをぶらつかせた警視は、
使っていない紙皿を1枚だけ手に取ると、それを太ももの高さに両手で持った。
そうしてチンポを隠すのかと思いきや、きんたま袋をすくい上げるようにして、
チンポを一品の料理のように皿の上に載せたのだ。

「今夜は獲れたてのドジョウだ! 俺のドジョウを食ってみろ!」
きんたま袋の下に皿を当てがったまま、管理官はガニマタでひょいひょいと、
小さくスキップするようにして宴会場のなかを走りまわった。紙皿の大きさは
子供の顔ぐらいで、よく見るとその上にチンポが載りきらず、亀頭のところが
ふちからはみ出しているのだった。それに気付いた者が「本当にドジョウだな。
不気味に長いし、黒ずんでるし」などとコメントして、さらに笑いを煽った。
いかなる豪傑とはいえ、管理官の顔が真っ赤だったのは酒のせいばかりでは
なかっただろうと大嶺は思っているが、いずれにしても、裸っぷりが羞恥心で
沈静することはなかった。あげくには署長の目の前まで行き、腰を突き出して
紙皿に載せたチンポをことさらに誇示した。署長に「やっぱりドジョウだけに
生ぐさいな」と顔をしかめられても、管理官はひるまなかった。
「署長のお墨付きをいただきました! 俺のチンポは本物のドジョウです!」
そう声を張り上げて言いながら両腕バンザイしたかと思うと、すぐに下ろし、
今度は両手を使って、なんとロープをたぐるようにサオをしごき始めたのだ。
「それそれ、ドジョウが暴れる、ドジョウが暴れる……」
中腰のガニマタで、小さく地団駄を踏むように両足を交互に蹴り上げながら、
右手でサオの根もとから先端にかけてひとしごき、右手がサオを離れるや否や、
今度は左手でひとしごき……その繰り返しは、確かに暴れるドジョウを懸命に
捕獲しようとしている姿に見えなくもなかった――

「結局あれは……管理官、チンポが大っきいことを延々と自慢したわけだな」
風呂桶の湯をザッと背中に流しながら、彦根が笑いを含んだ口調で言う。
「両手でしごいてドジョウ。両手でつかんでゴシゴシやってさまになる長さが
うらやましいってな。俺の粗末なチンポだと、片手ひと握りで隠れちまう」
「彦根先輩、わかってるなぁ」宮地がきんたま袋をぶらつかせて大笑いする。
「そこまで理解しちまったら、それこそ管理官の思うツボだよ。それにしても、
今回は管理官、やっぱいつもの仲間ばっかりじゃないから少しは遠慮してたな。
あんなにゴシゴシしごいて、チンポあんまり勃ってなかったからさ」
先輩に劣らぬ洞察である。大嶺は噴き出してしまい、その拍子に浴槽の底で
尻を滑らせて顔まで湯に浸かりそうになった。彦根も笑いながら立ち上がると、
前を隠さずにのしのしと近付いてきながら「遠慮って何なんだよ」と言った。
「あそこまで下品なことやっておいて、遠慮してたから勃起しなかったって?
さすがにあの人は、周囲への気配りの基準が世間一般とは別次元なんだな」
彦根が浴槽のふちをまたいで入ってきたので、大嶺は交替すべく湯から出た。
警察署の道場の風呂場だから全体はもちろん広いのだが、浴槽はそうでもない。
3人で浸かることは可能だったが、身体を伸ばしてもらいたかったのだ。

「俺、管理官のあのドジョウすくい、前にも見たことある」と、宮地が言う。
「彦根さんが転勤してくる前にさ。確か――2年前の古木組内部抗争のときか。
あの事件の打ち上げで、やっぱりああやって両手でドジョウしごいてた」
「おっ勃てたのか」彦根が湯のなかから握りこぶしを突き上げるようにする。
「もうギンギンに。さすがに当時の課長もいいかげんにしろってキレてたよ」
「放っておいたら、そのまませんずりこいて飛ばしてたかもな」
「そうそう。俺もひと段落したあと、管理官に『あんなにしごいておっ勃てて、
せんずりおっぱじめるかと思いましたよ』って言ったら、ムッとしてやがんの。
酒や食いものが置いてあるところで出したら汚ないだろうが!って」
「それは非常に道徳的と言うべきか」
普段から下ネタの大好きなおっさんたちが、真っ裸でいつにも増して豪放に
品のない話題に興じている。ましてや――大嶺も他人のことは言えないが――
ふたりともまさしく「ヤクザを取り締まるデカ」にふさわしい、恰幅のよさと
威圧感ある面構えだ。髪型も彦根が五分刈り、宮地はパンチパーマときている。
異様に男臭い眺めである。洗い場の椅子に腰を下ろし、ほとんど丸坊主の頭に
ごく少量のシャンプーをまぶして掻きむしりながら、大嶺はもう数歩だけ深く、
俺もああいうなかに入っていけたらと考えていた。

「あのさ、大嶺さん。今さらだけど」
身体のほうを洗い始めた大嶺に、宮地がニヤニヤと視線を向けてきた。
「佐藤管理官もでかいけど、大嶺さんのチンポもでっかいんだよなあ」
そのとなりで、彦根が手を叩いて笑い出す。大嶺は中腰の姿勢に立ち上がり、
一瞬どうしようかと考えたあげく、股ぐらをふたりのほうに向けてみせた。
「いやいや……管理官に比べたら情けないもんですよ、この程度では」
「わざわざ見せろなんて言ってないだろう」宮地が笑った顔のままで怒鳴る。
「あんたも柔道強そうな立派な体格だし、チンポもそんなに大きいんだからさ、
裸踊りなんかやったら注目集められるんじゃないか?」
「ええ、まあ……注目されても困るんですけどね、俺も脱いだり脱がされたり、
若い頃ならよくありました。柔道の特練でね」
苦笑しながらそう言って、大嶺は座り直した。ただし、洗い場の鏡ではなく
宮地たちに身体の正面を向け、膝を広げて股間をしっかりとさらけ出しながら。
宮地が得たりといった顔で頷き、彦根はニヤリとして「特練か」と言った。

「特練」というのは、柔道や剣道などの特別練習だとか特別訓練の略語である。
さまざまな大会のおおむね1~2か月前から、各所属では出場選手候補として
指名されたメンバーが、戦力強化のために普段よりひときわ濃密な鍛錬に励む。
本来の担当業務を一部免除されて、その分の時間を費やしたりもするのである。
特練期間、特練選手といった言い回しは、警察関係者にとっては日常語だ。
大嶺は、柔道が好きなわりにそれほど強くないと自分では思っているのだが、
どこの所属に転勤しても、毎年のように特練の人員として吸い上げられてきた。
ずば抜けた実績こそないものの、自分が副将を務めたチームが県警で準優勝を
飾ったことがある。20年前、刑事としては駆け出しだった頃のことだ。

「特練も裸踊りするイメージだな。汗臭い男の世界だ」彦根が言葉を続ける。
「やっぱりなあ、大会に向けてテンションが上がって、打ち上げのときなんか
解放感あるもんな。血を吐くほどの稽古で鍛えてきた裸を見てくれ!って……
そう言いながらチンポとケツまで見せるんだろ?」
『大会に向けて』という箇所を『事件解決に向けて』に変えれば、前半部分は
刑事警察についての話になる。彦根もわかって言ってるんだろうと思いながら、
大嶺は「そうですね。やっぱり酒の席ではバカが多かった」と笑ってみせた。
「慰労会で裸踊り、俺もやりましたよ。もちろん、宮地さんや管理官みたいな
芸達者なやつじゃなくてね、すっぽんぽんになって両手にお盆かなんか持って、
左右交替でこう、きんたま隠しながら踊るやつ」
立ち上がってふたりのほうに裸体を向けて、大嶺は右手、左手と交互に数回、
手のひらを股ぐらに当てがう動きをした。彦根が笑いながら小さく拍手をくれ、
宮地はわりと真剣な表情で「ああ、それが裸踊りの基本だよな」と言った。
「あとは……真っ裸で阿波踊りなんか。チンポまるだしもいいところで」
なんだか俺、やたらと調子に乗ってるなぁと思いながら、大嶺はそれもまた
簡単に実演してみせた。ばんざいして両手を頭の上でひらひらと動かしながら、
膝を左右交互に軽く蹴り上げる。タイルを踏んで跳ねる足の裏で温水がはじけ、
股ぐらのものが重たくぶらつくのを感じた。いい気分だった。
「おいおい、滑ったらケガするから」ほとんどあきれた表情で笑い続けながら、
彦根が肩を叩いてくるようなしぐさで腕を伸ばす。大嶺はぺこりと頭を下げて、
また椅子に腰かけた。宮地は「なんか楽しそうだなあ」などと感嘆している。

「やっぱ大嶺さんは、柔道も強そうだし人間性もいいから可愛がられたんだな。
先輩から裸踊りやれって命令されてもさ、そんなふうに信頼関係があったから、
あんまり思い出したくない記憶にはなってないんだろう」
宮地にまじめな口調で言われ、大嶺は目を見開いた。俺を過大評価しすぎだ。
それが光栄というよりは心苦しかったので、あわててやんわりと反論した。
「というより、たまたま俺の場合は、先輩命令ってほどのピリピリした空気を
経験したことがないだけですよ。たとえば、大会で予想外に好成績を修めると、
晩の慰労会でもみんな浮かれるでしょう。で、せっかくうれしい席なんだから
遠慮しないで盛り上がろうってことになると、やっぱり若いもんが先に立って
真っ裸になるんですけどね、結局はおっさん連中もけっこう脱いでしまって」
そうそう、みんなで一緒に脱いだと言えば、酒の席ばかりではない。あれは、
野間河警察署の特練員のときだった。試合開始前の控え室で、主将の号令一下、
補欠も含めた選手全員が「体調の万全ぶりを確認し合う」という名目のもとに、
全員柔道着を脱いで真っ裸になり、サオをしごいて勃起状態を見せ合ったのだ。
当然のごとく誰よりも先に真っ裸になった主将は大嶺と同年代で、その当時で
30歳そこそこだったのだが、彼の提案に、50歳を過ぎた警備課の課長代理まで
笑いながら従ったのだ。フリチンになるのはべつにいいけど、勃起に関しては
俺だけ配慮してくれよな、エロ本使わせてくれるとか……などとボヤきながら
懸命にひねくりまわして半勃ちにまで持っていき、気合入れの声出しをすべく、
ビンビンに勃起させた若手選手たちと全裸のスクラムを組んだ――

そんな経験談を披露しているうち、大嶺はあろうことか、股ぐらのあたりが
むずがゆくなってくるのを感じていた。実際、目線をちらりと下半身にやると、
隆々というほどではないものの、まるだしのサオが明らかに持ち上がっている。
話しながら当時の若い自分を包み込んだ男臭さ、粗野な大らかさが思い出され、
酔っぱらったような高揚感を覚えたのは事実だが、それが勃起に至るとは。
幸いと言うべきか、宮地はやけに真摯な表情で「カラッとしてていいよなあ」
などと感想を述べながら話に聞き入っている。彦根のほうは――いつのまにか
湯に浸かりながら居眠りをしていた。顔を天井に向けて口を半開きにして……
やたら饒舌にしゃべっていたのが急に黙り込んだことからして、もしかしたら、
だいぶ前から意識が朦朧としていたのかもしれない。疲れているのは当然だ。

「俺も特練では、よく裸になったもんだよ」と、宮地が言った。俺も特練では、
じゃなくて『俺は特練でも』の間違いじゃないのかと茶化そうとして、大嶺は
言葉を呑み込んだ。いずれ裸踊りやらチンポ露出やらの下ネタの話題だろうに、
宮地の表情にいつもの陽気な好色さが欠けているような気がしたからだった。
「俺もけっこう特練やってたけどさ、大嶺さんの話みたいな雰囲気じゃなくて、
もっと陰湿なパターンのほうが当たり前だったような気がするな」
宮地が話すには、人前での真っ裸は座を盛り上げるための余興というよりも、
後輩を辱めて楽しむための手段だと考えている先輩をおおぜい見てきたという。
羞恥心を取り除いて勝負度胸を据えるという大義名分のもとに、宴席ではなく、
稽古後の道場でしらふで裸踊りをさせられた、真っ裸で四つん這いにならされ、
活け花と称してケツの穴にタンポポの茎を3本も4本も挿し込まれたあげくに、
その茎を無理やり食べさせられた――そして、そういった目に遭わされるのは、
宮地の体験に限れば、いつも当然に若い衆だけだったという。

「慰労会はむしろ静かだったな。やっぱり署長やら副署長やら参加するからさ。
大嶺さんの話みたいに成績がよけりゃ裸踊りしてもシャレになるけどな」
公的な宴会の終了後、結果を出せなかった若手選手は道場に連れて行かれて
全裸にさせられた。いつも以上にチンポを強調して見せつけなくてはならない
卑猥な動きの裸踊りを強要されたことはそう嫌ではなかったが、真っ裸のまま、
ふたりひと組でたがい違いに頭を向けて寝かされ、先輩たちに見物されながら
男同士で相互にフェラチオをさせられたときには涙が出たという。
「試合から帰ってきてすぐに風呂は済ませてたからさ、清潔だし平気だなんて
自分に言い聞かせながら、とにかく相手のチンポコを口のなかに突っ込ませて、
べろんべろんなめまわして。俺、まだ二十歳そこそこだったから、女にだって
フェラなんかしてもらったことなかったんだぜ。なのに初体験の相手が男でさ、
しゃぶってもらうだけじゃなく、俺のほうもしゃぶらなきゃいけないんだから。
なんかもう必死で、しゃぶり合いながら泣けてきちまって」
話し方にようやく宮地らしい覇気が出てきたが、楽しんでいるのではなくて、
思い出しながら怒っているのだと大嶺は思った。フェラチオなんぞは論外だが、
たとえば裸踊りに関しては、自分の経験と重なるところがなくもない。しかし、
とにかく聞いていて強く不快に感じるのは、歪んだ上下関係の醜さだった。

「で、俺のフェラチオの相手っていうのが、白バイの奴でな」宮地は続ける。
「俺と交番勤務の頃から仲のよかった後輩なんだよ。そんなことがあって以降、
俺と顔を合わせるたびに辛くてたまらないって言い出してさ。そりゃもちろん、
おたがいに若手いじめの被害者だってことは、そいつだって理解してたけどな。
自分の人生において、男とチンポコをしゃぶり合ったって事実が忌まわしくて
気がヘンになりそうだって。それで、2か月ぐらいして警察辞めちまった」
宮地は浴槽のへりに両腕を置き、そこに上半身の体重を載せるような格好で
頭を前のめりにさせながら、大きく息をついた。苦味の強いため息だった。
「最低ですね。後輩いじめをする奴らは」大嶺は思ったままを言葉に出した。
「単なるふざけを超えてます。強制猥褻じゃないですか。男ばかりの環境なら
下ネタも楽しいのに、そういう奴らが世の中のいろんなことをつまらなくする。
なんだかんだ言っても、人生で出会う人間は自分じゃ選べませんよ」
言い募りながら、ちょっとムキになりすぎてるなぁと自分では思った。だが、
宮地はうつむきかけていた顔を上げ、なんとも人懐っこい笑みを向けてきた。
「あんた、そうやって人の昔話にも腹を立ててくれるんだ。ほんといい人だな」
そして湯のなかで姿勢を正すと、まじめな顔で「ありがとう」と頭を下げる。
大嶺はひどく照れてしまい、流れを変えようと急いで続きの言葉を探した。
「だけど宮地さん……組織犯罪対策課は、そういう連中とは対極の環境ですね。
さっき管理官が裸踊りしたときだって、ほら、おたくの若い刑事さんたち――」

例の「ドジョウすくい」がひと段落してからも、佐藤管理官は真っ裸のまま、
ふんどしさえ身につけずにチンポをぶらぶらさせながら酌をしてまわっていた。
それを見て、下座の卓で水割りを作っていた組織犯罪対策課の若手刑事たちが、
やっぱ俺たちも脱ぐべきだよな……と、いささか怖じ気づいているような顔で
話し始めたのだ。それを聞き取った管理官は、彼らに向かって言い放った。
「裸になりたきゃ止めないけどな、上司がチンポ出したから俺らも出すなんて、
たかが裸踊りだぞ、なんでもかんでも上下関係を持ち出す必要ないだろうよ」
きまり悪そうに笑う若い衆を尻目に、管理官は宴席全体を見渡して言った。
「こいつらも普段はよく裸踊りしとるんですよ。しかしながら今夜のところは、
曽根警察署のまっとうな感覚のみなさんの前で脱ぐのは恥ずかしいらしいので、
私よりもはるかに羞恥心が人並みなこいつらは、着衣で許してやってください。
真っ裸になったところで、私のチンポの引き立て役にしかなりませんから」
会場は新たな爆笑に包まれ、署長も「佐藤さん、どうも絶好調すぎませんか」
と咎めるような口調で言ったものの、顔は笑いをこらえきれていなかった――
大嶺がそのときのことを持ち出すと、宮地は「ああ、そうだった」と頷いた。
「若い奴らに対しても配慮があるんだ、あの人は。まあ、自分が裸になるのが
単純に大好きだから、楽しけりゃ細かいことは気にしないって面もあるがな」
「なんたって大らかで、お行儀よすぎないのが理想の上司ってもんですよ」
「そうそう、まさにそのとおり」

宮地がきっぱりと言い終えたときだった。風呂場の磨りガラスの戸が引かれ、
大柄な男がひとり入ってきた。佐藤管理官だった。絶妙すぎるタイミングだ。
「おう、ヤクザ顔負けのおやじ3人、フリチンで猥談してたのか」
そう言いながら、大股で歩いて近付いてくる。手に持っている緑色の容器は
ボディソープだろう。タオルは携えておらず、ドジョウはつくづく大物である。
そして筋肉の盛り上がった裸体は、まだ強く酒臭さを放っていた。
「ええ、そうです。やたら男臭い猥談してました」宮地が浴槽から返答する。
「管理官のチンポはドジョウの化けものだったとか、大嶺さんが柔道の特練で
よく裸踊りしたとか、俺が特練でフェラチオさせられたとか、そういう話を」
「そうか。俺は基本的にマンコが好きだから、朝からチンポの話はきついな」
昨夜の打ち上げの宴席は、午後10時を少しまわった頃にはお開きとなったが、
会場の撤収作業が終わったあとも、余力のある者は残った酒やつまみを持って
各グループに分かれ、それぞれ空いている部屋に移って2次会へと流れ込んだ。
大嶺も宮地に声をかけられ、彦根も交えた3人で階下にある視聴覚室に移動し、
大いに語りながら飲み続けた。日付が変わったと気付いてもまったく頓着せず、
さすがに飲み過ぎたので風呂にでも入ろうかと5階の道場に上がってきたのは、
実に午前4時をだいぶ過ぎた頃だった。
管理官は打ち上げが終わるや、疲労がどっときた、眠いから家には帰らずに
泊まっていくと仮眠室に向かったから、充分に睡眠を取ったあと、こうやって
朝風呂と洒落込むのにちょうどいい時刻に目が覚めたというわけだろう。今は、
もう明け方の5時をまわっているはずだ。

「ミヤさんが特練でフェラチオさせられたって、あれか。後輩が辞めた件か」
管理官はそう言いながら、大嶺のすぐ傍らに椅子を置いて腰かけた。宮地が
ちょっと驚いたような顔になって、浴槽のへりに上半身を乗り出している。
「俺、管理官に話したことありますか?」
「いつだったか、飲み会のときに聞いたぞ。おまえ、自分のせいじゃないけど、
自分が後輩にとんでもないトラウマ与える役割を担ってしまったのが辛いって、
ほとんどベソかきながら話してたじゃないか」
「そうとう酔ってたんだろうな……」
「けしからんよ。クズに限って先輩風を吹かせたがる」管理官は吐き捨てた。
「最近は、毎日のように公務員の不祥事が新聞やら何やらで叩かれてるだろう。
なかにはどうでもいいやつもあるわな、慰安旅行の宴会やカラオケボックスで、
男の仲間うちだけで裸踊りしたとか……だけど目下の者をいじめる行為だけは、
徹底的に叩いてもらうほうがいい。人が人の人生を悪意で狂わせちゃいかん」
両手で石鹸を泡立てて身体をこすりながら、管理官は怒りを露わにしていた。
その語調に、大嶺はふと衿を正したくなるような気持ちになった。

「俺も先輩にいびられてトラウマってほどじゃないけどな」管理官は続けた。
「剣道の特練でさ、若い頃にはちょっとこれは……って思うことも多かったよ。
特練期間中の土日に強化合宿があって、まあ、山奥で部外者なんか来ないわな、
だから治外法権。俺、少しは強かったもんだから生意気だって因縁つけられて、
プライド捨てさせてやるって言われてさ。合宿所の庭で、みんなの見てる前で
真っ裸になってウンコさせられたよ」
大嶺は顔をしかめた。宮地も、警察関係者ではない人間が腐乱死体の写真を
見てしまったときのような表情をしている。管理官は苦く笑ってみせた。
「命令してきた首謀者っていうのが、いわゆる武道の強さだけで可愛がられて
昇任していくタイプの男な。なんか最近は指導者やってるけど結果が出せずに
肩身がせまいらしくて、それはそれでざまみろって話なんだが……思い出すと、
どうしてあのときウンコつかんでそいつの顔に塗りたくってやらなかったのか
後悔するんだよなぁ。ほんと下っ端の巡査には人権なかったもんな」
しんみりしてしまった。自分の奉職する組織が、正義であってほしい職場が、
後輩に対して男同士のフェラチオや人前での脱糞を強要する行為を、結果的に
黙認しているという事実が、あらためて大嶺には悲しかった。そうした風潮に、
自分は何か抗ってきただろうか――と考え込んだ。

「まあ、あれだな。クズ野郎の話なんざ腹が立つだけだから」
大嶺の顔色を読んだわけでもあるまいが、管理官は空気を入れ替えたように
声と表情を明るくした。宮地も「そうですよ。まったく」と笑顔になっている。
彦根が湯のなかでハッと目を覚まし、「あ、管理官だ」と言った。
「それより、あんたら3人。俺のチンポが大きいだの長いだの立派すぎるだの、
ずいぶん噂してくれたんじゃないか? 上司の陰口は感心できないわな」
管理官の言葉に、その3人はそろって笑い出した。そこまで褒めてはいない。
「そりゃ管理官、あんだけ見せびらかして、噂されなきゃ逆に悲しいでしょう」
彦根にそう言い返され、管理官は「まあそうだけどよ」と笑いながら凄む。
「だったら俺も、あんたらのチンポを見てああだこうだ言わせてもらう。ほら、
そこに3人、一列でならんでみろ。大嶺係長がまん中だぞ」
べつに険悪な雰囲気ではないからいいが、どうもおかしなことになってきた。
言われたとおり、3人は洗い場に立って、横一列にならんだ。大嶺をまん中に、
右側が宮地、左側が彦根だ。と、大嶺は両脇のふたりが目くばせを交わすのを
見て取った。その意味を考える前に、ふたりは両側から裸体を密着させてきて、
大嶺の背後にそれぞれ腕をまわしてきた。そして、宮地が左手で大嶺の左肩を、
彦根が右手で大嶺の右肩をつかみ、がっちりと力を込めた。
「ほら、大嶺さん。ちゃんと肩を組んでな」
管理官に言われるまま、大嶺は腕を広げて、両脇ふたりの肩をつかみ返した。
全裸の男たちのスクラム体勢である。振りほどこうと思えば造作もなかったが、
大嶺はそれをしなかった。あまりに無粋というものだし、それに正直なところ、
裸同士の密着になぜかそれほどの嫌悪感も湧かなかったからだ。

3人のまん中となると、両手は完全に封じられ、股間を隠すことができない。
もっとも、片手は使えるはずの宮地も彦根も、そんな気はさらさらないらしい。
もちろん大嶺も隠すつもりはない。真っ裸の男が3人、陰毛がボウボウに繁り、
包皮がむけて亀頭が露わになり、使い込んで褐色になっている成人の男性器を、
3本ならべてぶらぶらとさらけ出しているのだ。
管理官はざっと身体を洗い終え、浴槽のへりにどっかりと腰を下ろしていた。
当然のように両膝を大きく開き、股ぐらのドジョウを見せつけながら。そして、
いずれもそのドジョウほどのサイズを持たない3本は、管理官の顔の真正面に、
鼻先から数十センチしか離れていないところに陳列されているのだった。
「どれ、俺があんたらのチンポの大きさを比較してやろう」
管理官は前屈みになり、3人の股ぐらを右から左、左から右へと眺めまわす。
大嶺はどういう表情をしてよいものやら判断できずにいたが、両脇のふたりは、
さっきからもうずっと笑いっぱなしだった。やがて、管理官は姿勢を正した。
「なぜかじっくり見ちまったけど、一目瞭然だったな。優勝、大嶺警部補」
そう言って、気の抜けた拍手をする。彦根に「ほら、お墨付きだ」と言われ、
大嶺は不自由な体勢でひょいと頭を下げた。管理官はニヤニヤしている。

「ちなみに最下位は、彦根さんな。自覚はあると思うけど」
「ええ、俺は祖チンですよ。だけど現実、これでガキ2人こさえましたから」
彦根は胸を張る。大嶺が見たところ、そう小さくはないんじゃないかと思う。
管理官のドジョウすくいのことを話していたときに本人が笑い飛ばしたように、
確かに「片手ひと握りすれば隠れちまう」サイズかもしれないが、たいがいは
そんなものだろう。だが、横からそんな弁護を差し込むことが、この場面では
もっとも不要であるということは、大嶺も理解していた。
「なあ、大嶺さん」管理官が呼びかけてきた。彦根のチンポを指差している。
「こいつはね、なかなかに男気がある奴なんだよ。今回はお見せしてないけど、
宴会ではしょっちゅう、こいつと俺で真っ裸になってね、チンポおっ勃たせて、
剣道やるんだよ。サオとサオを打ち合う剣道」
「サオとサオを、ですか」大嶺は繰り返した。そういえば中間慰労会のときに、
管理官がちらりと話していたような気もする。なるほど、警察だけに剣道か。
「そう。20センチぐらいの近さで向き合って、手は使わんように背中で組んで、
腰だけひねるみたいにして動かしてね、サオとサオをぶつけ合う」
ご丁寧に解説してくれる。彦根は笑い続け、宮地が「ありゃえげつないよな」
と顔をしかめる。大嶺には、その光景をありありと思い浮かべることができた。
それにしても、このふたりじゃ長さが違ってやりにくいだろうなあ――などと、
具体的でバカバカしすぎる懸念を抱いてしまうぐらいに。
「それで、今さら言うのもなんだけどさ」管理官は楽しそうに言葉を続ける。
「こいつより俺のほうがずっとチンポが長いだろ。なのに、いつもこいつから
チンポで剣道やりましょうって誘ってくるんだ、さっさと真っ裸になって」
彦根がいたずら小僧のように「へへっ」と笑う。大嶺もつられて笑った。
「で、俺が、たまにはチンポの長さが釣り合う奴とやってみてえなあ、なんて
憎まれ口を叩くわけだよ。そしたらこいつ、俺のチンポと一緒に見せたほうが、
管理官のでかさが引き立つでしょう、上司を立てるのも部下の仕事です、だと。
単なるバカなのかもしれんが、いい奴だよなあ」
「それは――私なんぞも見習うべき姿勢です」と、大嶺は神妙な表情を作った。
彦根が横で「大嶺さん、まじめに相手しなくたっていいんだよ」と苦笑する。

「それはともかく」管理官は大嶺の股間へ、それから顔へと、視線を巡らせた。
「大嶺さんのチンポはでかいな。見てるだけじゃつまらんから、いいよな?」
ええと、それは……問いかけの意味を問い返そうとする大嶺を放っておいて、
管理官はボディソープの容器を引き寄せると、中身をたっぷりと両手に取った。
そこに浴槽の湯を加えて盛大に泡立てる。そして、泡にまみれた右手を伸ばし、
当たり前のような動作で大嶺のサオをぐいと握ってきた。
「かっ、管理官……!」
両脇のふたりが、肩をつかんでいる手にいっそう力を込めてくる。さすがに
腰を引きそうになったのだが、そのせいでほとんど動くことはできなかった。
「まあ、そんなに緊張するな。背中の流しっこの延長みたいなもんじゃないか。
あんたは仕事よくがんばってくれたし、お礼にチンポぐらい洗わせてくれよ」
管理官は笑いながらそう言って、石鹸でぬるぬるした右手で、大嶺のサオを
やんわりとしごく。ほどなく左手も出してきて、本格的に「作業」を開始した。
石鹸を大嶺の陰毛にこすりつけて泡を増やし、両手でサオをはさむようにして
丁寧にこすり、きんたま袋を裏側までやわやわと揉みしだいてくる。
「気持ちいいだろう、上司の人にチンポ洗ってもらうのは」
宮地が目下の者にしみじみ語りかけるような口調で声をかけてくる。大嶺は、
顔がひどく紅潮しているのを感じながら、なんとか「はい……」とだけ応じた。
管理官の手の動きに、どうしようもなく性感を呼び起こされていた。もっとも、
それも狙いだろう。洗うだけならとっくに終了しているはずなのに、管理官は、
大嶺のサオ、きんたま、サオ、きんたまと、同じところ何回もいじくりまわす。
たまに手のひらを亀頭に強くこすりつけられたりして、そのときは不本意にも、
大嶺は「うあっ!」と声をあげながら腰を突き出してしまうのだった。
そう、あれだけの裸踊りをやってのける人でもある。自分も他人も関係なく、
とにかく男が「性」を開けっぴろげにする姿が大好きなのだ。そこに親しみや、
人間臭さといったものを見い出す人なのだろう、佐藤警視という人は――
当然のごとく、大嶺のサオには状態の変化が生じている。石鹸の泡に隠れて
様相が見えにくくなっているが、じかに両手でこねくりまわしている管理官が、
ぐんぐん硬くなってきていることに気付かないはずがなかった。

「大嶺さん。こちらの署の少年係に、宮島っていう巡査部長がいるだろう」
きんたま袋の裏側に指をこすりつけてくるようにしながら、管理官が言った。
場違いな印象を受けながら、大嶺は頷いた。宮島は、5歳ばかり年下の後輩だ。
たまたま昔から一緒の所属になることが多く、そのせいもあって仲がよい。
「俺、あいつと前の所轄が同じで、けっこう親しいんだ。それで今度の事件で
俺らがこっち来たとき、捜査本部で一緒に仕事することになった大嶺係長って
どんな人なんだろうって、あいつに訊いたんだよ。そしたらさ――」
管理官は笑み崩れた。悪くは言われていないと思うが、大嶺は緊張した。
「あんた、宮島のために裸になったんだってな。若い頃、一緒の柔道特練でさ、
大会でいい成績が出せなくて、慰労会のときに性格の悪い先輩が酔っぱらって、
あいつにネチネチ絡んだんだって? それであんた、あんまり飲んでないのに
真っ裸になって、裸踊りしながら酌してまわって場を盛り上げたんだよな」
そんなこともあったと、大嶺は苦笑した。その先輩はたちまち興味を移して
はしゃぎ出し、おまえのチンポはくせえな、などと上機嫌に言い立てていた。
「その後のことを、宮島は話さなかったと思いますが」大嶺は神妙に言った。
「俺、自分の酒のコップにチンポ浸して泳がせまして。それを飲み干しました。
先輩は大喜びで、翌日会ったら大会じゃなく俺のチンポ芸の話ばっかりして」
大嶺のきんたま袋をいじるのをやめずに、管理官は大きな口を開けて笑った。
両脇の宮地と彦根も、スクラムを組んだ裸体をゆらすようにして爆笑する。
「そうか。大嶺さん、わかってると思うけど」管理官は大嶺の顔を見上げた。
「俺はそういうことをする、あんたみたいな男が大好きだ。俺だけじゃなくて、
彦根も宮地も、うちの課の少なくとも俺のところの班で仕事やってる男どもは、
全員あんたのことが大好きだと思う。あんたは尊敬に値する人柄だよ」

それからしばらくたって、管理官はようやく大嶺のチンポを解放してくれた。
最後に桶の湯ですっかり石鹸を流してもらい、ギンギンの勃起が露呈されると、
宮地と彦根はスクラムを解き、3人の男に真正面から凝視されることになった。
照れ臭かったが、管理官に人間性を賞賛されたことに比べれば恥ずかしくなく、
大嶺は両手を腰に当てて立ち、手を使わずに陰茎をくいくいと動かしてみせた。
今はどんな裸踊りでもやってやりたい気分だった。
「しっかりおっ勃てて、豪快だなあ、大嶺さん」管理官が小さく拍手をする。
「立派に臨戦態勢のチンポじゃないか。俺がフェラチオしてやろうか?」
さすがに冗談だろうと、宮地と彦根が笑う。大嶺も笑った。だが、管理官は
あくまでもまじめな表情で、大嶺の股ぐらと顔に交互に視線を向けてくる。
「フェラチオしなくていいのか? 俺はあんたを尊敬できる人間だと思うから、
フェラチオぐらいは平気でしてやれるがな。他人に命令されて誰かのチンポを
しゃぶらなきゃならないのは耐えられんが、俺が自分でしゃぶると決めたなら、
存分にしゃぶるぞ。男と男でフェラしても、それ自体はどうってことない」
大嶺には、管理官の言わんとすることが見えてきた。ちらりと視線を逸らし、
宮地の表情を窺う。彼もまた理解したようだ。彦根だけが笑いながら「管理官、
よっぽど大嶺さんのことが気に入っちゃったんだなあ」などと言っている。
「男と男でフェラしたって、それ自体は何でもない」管理官は繰り返した。
「それって、裸踊りしたついでの余興だとしたら、流れがいいんじゃないか?
せっかくチンポ出したんだからって、宮地さんや俺みたいな裸踊りしたあとで、
それじゃ続いて男同士で相互フェラチオします!なんて言ったら大ウケするぞ。
汚ねえとか、くせえチンポよく食えるなとか笑わせてさ、盛り上がるぞ」

先輩命令で、後輩とシックスナインの形でチンポのしゃぶり合いをさせられ、
その後輩は「男とチンポのしゃぶり合いをしたことの忌まわしさ」に苛まれて
警察官を辞めたという。宮地の心のなかで、それは大きな傷となっているのだ。
その後輩が被害者であることは事実だが、加害者は断じて宮地ではない。だが、
それに近いようなものだと思ってしまっている。後輩は「先輩にいじめられて」
辞職したのではない、殴られても蹴られても罵られても裸踊りをさせられても、
それを理由に辞めはしなかった、男同士でフェラチオなどしてしまった自分が
ただただ許せなくて、許せない自分を捨て去ることの一環として辞職したのだ、
そして、フェラチオの相手は不本意だったとはいえ、この俺だったのだ――と。
大嶺のそんな想像は、さほど的はずれではないはずだった。
「なあ、ミヤさんよ」管理官は宮地に近寄ると、裸の肩をびしゃりと叩いた。
「悲しいのは、男同士でチンポしゃぶり合ったことじゃなく、理不尽なことを
立場の弱い者に強要して楽しんでるクズが多いってことだ。その後輩のことを
本気で思いやるんだったら、そういうクズの連中を自分の力で、力が及ぶ限り、
叩きのめしてやるべきじゃないのか」
宮地は管理官の顔を見返した。にらむように見た。そして、頷いた。
「攻撃すべき相手は、あくまで犯罪の加害者だ。刑事として忘れるなよ。」
その言葉は、大嶺の胸に染みた。宮地も心なしか、表情に決意の色が見える。
事情を知らないはずの彦根まで、何がしかを感じ取った顔をしている。
明け方の風呂場で、全裸の男4人がチンポまるだしで寄り集まっていながら
あまりにも高尚さを感じさせる空気だ。だが、管理官の声がそれを打ち破った。
「よし、もうすぐ朝日が昇るな。早朝登山にでも出かけるか」
意味を把握しかねている3人に向かって、管理官はきびきびと説明した。
「屋上に出て、朝日を拝むんだよ。署内を歩くんだから、身体は拭いてからな。
だけど拭いたらタオルは置いてな。この格好で、股間はいっさい隠さずにな」
そう言って、管理官は腕を伸ばして足を開き、真っ裸の大の字を作った。

もうじき朝の訪れを迎える警察署の階段を、やたらと身体の大きな男が4人、
真っ裸でのしのしと昇っていく。建物内とはいえ、11月上旬のこの時刻だから
冷え込むのは当たり前だ。チンポを手で隠すことなど誰ひとり考えてはおらず、
佐藤管理官、宮地、彦根の股間のそれは、気温に応じてやや小さくなっている。
といっても、管理官のものはそれでもまだ巨根を疑わせるサイズではないが。
「大嶺さん、すごいね。ぜんぜん元気が失われてないよ」
彦根が股ぐらをのぞき込んで茶化してくる。大嶺は照れながら笑いを返すと、
怒張したサオを根もとから手でひとしごきしてみせた。身体は冷えているのに、
そこだけが欲情に熱を持ったようになり、青筋を立ててビクビク脈打っている。
この年齢でなんとも節操のない――という恥ずかしさを感じなくはないものの、
むしろ一緒に歩いている3人に対し、その無節操さをさらけ出せていることに、
たまらない心地よさを覚えていた。

「大嶺係長、寒いな。もうちょっと近付こうや」
宮地がニヤニヤ笑いながら、さっきと同じように大嶺の背中に腕をまわして
肩を組んでくる。男同士の裸体の密着に、やはり嫌悪感はまるっきりなかった。
それどころか、気温の低さに人肌の温もりがありがたかった。
風呂場のある道場は5階で、屋上はそのすぐ上だ。ほどなく階段を昇りきり、
全裸の男たちは外に出た。東の空を、顔を出し始めた太陽が茜色に染めている。
建物から出ていよいよ身体は本格的に冷えてきたが、朝が訪れる一時の眺めは、
頭の中身が澄みわたってくるような爽やかさだった。
「いやあ、いい朝だなぁ。仕事もほとんど終わったし、最高の夜明けだ」
宮地がそう言いながら大嶺の身体を離れ、両手をばんざいして裸踊りをする。
寒さを吹き飛ばすような、威勢のよい真っ裸の阿波踊りである。続けとばかり、
彦根も踊り始める。ふたりとも縮んでいるなりに、チンポはよくぶらついた。

大嶺は、屹立を保ち続けるサオを手でぐいと握りしめ、その硬さを確認した。
そうすることで、自分の雄々しさ、猛々しさを自分自身に教え込んだ。そして、
宮地たちの仲間に入った。気合いを込めて踊るほど、きんたま袋は持ち上がり、
サオはますます熱くなる。チンポまるだし、勃起まるだしで裸踊りをしている。
バカになりきれるうれしさに、意識が遠のきそうにすらなってしまう。
管理官は腕組みをして、裸踊りをする3人を大いに笑いながら見物している。
踊ってこそいないが、真っ裸でチンポをさらけ出しているのは一緒である。と、
ふいに「おい、大嶺さん!」と言って、警視は大嶺の下半身を指差してきた。
「大嶺さん、先っちょ。チンポの先っちょが糸引いてるぞ」
その言葉に、3人は裸踊りをやめ、いっせいに大嶺の股ぐらに視線を向けた。
怒張したサオの先端から、確かに先走りの透明な露がたれているのだった。
「立派なもんだな。チンポまるだしで裸踊りして、恥ずかしいと思うどころか、
興奮してなおさら元気になるんだもんな。男らしいじゃないか」
彦根にそう褒められ、管理官と宮地からはニヤニヤしながらの拍手をもらい、
大嶺はそれ以外にどうしようもなく、ぺこりと頭を下げた。3人が爆笑した。

「仲よしの男同士で真っ裸になって、こんなにすがすがしい朝日を浴びて――」
両手を上げて大きく伸びをしながら、管理官がしみじみした口調で言う。
「気持ちいいよな。こういう場でせんずりしたら、快感が2乗、3乗だよなぁ」
そちらの言葉は、大嶺ひとりに向けられたものだった。大嶺は下半身を見た。
先走りをたらしっぱなしというのも、まあ、なんだ、だらしがないよな――
「大嶺さん。朝日に包まれながら、せんずりしてみるか?」
ほとんど間髪を入れず、大嶺は「はい!」と返事をしていた。それと同時に、
チンポを右手でぎゅっと握りしめて――今度はその硬さを確認するだけでなく、
シコシコとしごき始めた。宮地と彦根が、笑いを控えた表情で見守っている。
「思いきり出せ。あんたまじめだから、2週間せんずりもしてないんだろうし」
管理官にそう言われて、大嶺はまた「はい!」と答えた。溜まっているのは
図星だった。仕事がひと段落したらとは思っていたものの、まさかこんな形で
解消するはめになるとは想像もしていなかった。大嶺はせんずりを続けた。
先走りはとめどなくあふれ、それを指ですくい取ってサオにこすりつけると、
気持ちよさに不覚にも「あっ」と声を洩らしてしまった。それを笑われながら、
腰を突き出すようにしてサオをしごくうちに、うずきあげるものがあった。
「すみません……出します……あ……」
「いいぞ。出していいんだぞ。仲間しかいないんだからな」管理官が言った。
「出ます……うっ……出ます!」
大嶺は射精した。握ったサオの先端から、白い液が低く放物線を描きながら
2度、3度とぶっぱなされる。気持ちよかった。快感に頭がクラクラした。
「おおっ、これはまた大嶺係長、ずいぶんいっぱい出たなぁ」
宮地が屋上の地面に目をやって笑う。大嶺の足もとから少し離れたところに、
濃厚そうに白濁した子種の液がぶちまけられて、生臭さをぷんぷん放っている。
人前でせんずりをしたことよりも、その量がやけに多いことが、射精を終えて
すっきりと冷静になった大嶺にはひどく照れ臭かった。
「俺たちの前でこんなに気持ちよさそうにザーメン出して」管理官が言った。
「なんかもう、他人ではいられないな。大嶺さん、組織犯罪対策課に来るか?
一緒に仕事してさ、事件解決したら、みんなで裸踊りするか。な?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌月はじめ、大嶺は署長室に呼ばれ、転勤の内示が出ていると告げられた。
「あの大きいもんを見せたがる管理官が、ぜひにってな」署長は笑っていた。
「大嶺さんは能力的にも人間的にも抜群だが、ああいう裸踊りは得意かどうか
保証できないって俺が言ったら、大丈夫ですよって。何が大丈夫なんだか」
あの早朝のことを話したら処分食らうかなと考えながら、大嶺は頭を下げて、
「ありがとうございます」と言った。
(了)

(Posted by Ichi : 裸武道家♂さんの了解を得て熟年男性専科2に掲載されたものの原稿を頂戴し掲載致しました。)

*「Ichi&お仲間の作品(禁18歳未満)」に戻る。

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閲覧記録

2012年04月 327回/月 11回/日

2012年03月  74回/月 15回/日

カテゴリー: 作者:裸武道家♂ パーマリンク

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