(志朗のエロエロ物語(4))留四郎の春(その3):By志朗


留四郎の春(その3)

二日前には本館だけは一度訪問した際、案内されたのだが、その際案内されていなかった別棟のそこは、今日が初めてだったのだ。

先日に続いて、その日も同じ老執事に案内されたのだった。で、先ずは、屋根付きのこぢんまりとした本館との通用門でもある「裏門」を通り抜けたのだった。

そして、更に多くの樹木が生い茂った少し小高い丘を越え、その古い瓦屋根の乗った塀沿いに少し下った処にそれは大きな池があったのだ。

其処には彩りも豊かな数十匹の錦鯉が悠然と泳いでいる、
それはもう、大きいというよりは遥か向こう側の景色がややもすると霞んで見える程の、壮大な池が眼前に広がっていたのだった。

案内の執事さんに依ると、元々は、きっと自然の池が有った処に後から庭園を造成したのかも知れないとのことだったのだ。

そして、その池の左側には、それは如何にもどっしりとした一部二階建ての、豪壮な総檜造りの日本建築の邸宅が眼に飛び込んできたのだった。

それは、古風ながらも日本瓦屋根の一部二階建てで、やはり大きな屋敷だった。

如何にも和風建築のどっしりとして落ち着きを感じさせられる、古いながらもそれは、大豪邸とも言えるかなり壮大な屋敷だったのだ。

ま、言ってみれば壮大な洋風邸宅内のその奥まった所にある丘を越えると、更にもう一棟、今度は古風で落ち着きのある和風建築の大豪邸があったという按配なのだ。

それが判った時、留四郎にとっては、少々奇妙にも感じられたのだった。

古い家屋がそっくりそのままの状態で保存されてあったと言う事なのだろうが、留四郎には、それは如何にも歴史の深さとか、更にはその風情さえも肌で感じさせられる建築物だったからなのだ。

そして二人は、更にその北東側に廻ったのだった。

其処には以外なほど明るい玄関があり、そこから旧屋敷に入ったのだ。だが、思ったよりは、それはむしろ現代的な感じさえもする玄関口なのだった。

案内役の老執事によると、一部老朽化した部分は、古(いにしえ)の部材も補給出来ない故、止むを得ずある程度は現今の部材による和風に修復した由だった。

その北東側には、以前お抱え運転手が居た部屋で、これも八畳程の和室があったのだが、その運転手は体調不良とかで、現在実家に戻っていて今は空き部屋になっている由だった。

老執事に依ると、勿論その節彼が運転していた高級外車は、今はガレージに格納されたままで、それを運転する者は、現在誰も居ない由だった。

従って昨今では、当主・田口由蔵の外出時には、電話にて常に専属で契約しているハイヤーを呼ぶのが習わしだったそうなのだ。

して、いよいよこの旧邸宅内の中心へと、留四郎は歩を進めたのだった。

で、まずは南西側にある手前のその部屋は、床はフローリングになっており、応接セット一式がさりげなく配置されていた。勿論この部屋も、かなり現今風に手直しされていたようで、意外とモダンな造りだったのだ。

そして、その奥の部屋は、畳が意図的に一段と高めに敷き詰められていたし、またその奥には、床の間があり、壁面には掛軸もあったのだ。

更には、座敷の中央部分には木製の火鉢まで置かれていて、とても落ち着いた雰囲気を醸し出していたのだった。

なんとも、洒落た和洋折衷の現代感覚の先端をいく感じさえするのだった。

今にして思い起こすと、当時としては、それはとてもモダンな室内にアレンジされていたのだった。

で、現在住んでいる洋風の新館が建てられる数年前迄は、当主も此処に居住されていた由だったのだ。

そして、更に一旦廊下に出た後、その隣室に入ると、大凡十畳以上も有りそうな和室が、しかも襖つづきで二部屋あり、午後の陽ざしを燦々と浴びていたのだった。

で、その南側には、先程チラッと垣間見えた日本庭園が、何と、真正面からその全景を眺めやることが出来たのだった。

それは若輩者の留四郎でさえ絶句する程の、正に絶景とも言えるド迫力で、その雄大な日本庭園が眼前に展開されていたのだった。

改めて、その縁側に立って、その豪勢な庭園をじっくりと眺めやる留四郎だった。

留四郎自身にとっては、それまでの縮こまった心の総てが、その一瞬の間に何処かへ吹っ飛んでしまった様な、それは清々しい感すら覚えたのだった。

それはもう、恰も、今まさに自分の第二の人生がここから始まるかの様にも感じられ、大いに胸が躍る様な高揚感にさえ充たされた留四郎だったのだ。

しかも、老執事の談では、此処を取り敢えずは、留四郎の部屋として自由に使ってもよいのだと、当主は言われたそうなのだった。

なお、その際の『取り敢えず』という意味合いのその心は、近い将来は本館での起居を『当主と共にする』という意味合いが込められていたと言うことなど、その節の留四郎には露程も知る由も無かったのだったが・・

それまでの、余りにも狭小で日光も全く当たらないジメジメとした屋根裏部屋生活から、例え築年数は古くとも、一気にお大名のような日当たり満点の南側和室が、しかも、二部屋も自由に使えるなど、まさに夢の中のまた夢の様な生活環境の激変に、留四郎自身は戸惑いと共に、この時ほど、幸福感に満ち溢れたことは、嘗て一度として無かったのだった。

そして更には、いま己が眼前には、それは大きな池が視界いっぱいにまで広がっていたのだ。

しかもその池には、目にも鮮やかな赤・白・黒そして更には、それ等の斑模様と、更には彩りも豊かな多くの黄金色に輝く錦鯉の数々が、恰も時空を超え、それはまるで近い将来の留四郎の輝かしくも豊かな生活を暗示するかの如く、そしてそれはまるで『人魚』の如くに、悠然と泳ぎ回っていたのだった。

また、庭園の此処彼処には、樹齢数百年以上も経過したような巨木の数々も生い茂っていて、それらは何れも一流の庭師の剪定による、それは見事な趣をかもし出していたのだった。

さて、それから数日後、依頼していた運送会社の小型貨物トラックが留四郎の住まいへ来たのだ。
それを待っていた留四郎は、僅かばかりの引っ越し荷物を載せた後、道案内も兼ね、一緒に引っ越し先まで運んでもらったのだ。

引っ越し荷物といっても、寝具と大学関係の書物やノートなどの文具品等と、身の回りの衣服や履物程度だったので、運送会社に頼まずともリヤカーや大八車くらいでも十分だったのだが、距離も結構あったし途中に坂道等も有ったので、取り敢えず依頼したのだった。

で、引っ越し荷物を積んだ小型貨物車が田口邸に到着した際には、既に正門も開けられていたので、そのまま本館前まで進んだのだった。

ただ、面接時に訪問した際に現われた例の老執事は所要があって、当主・田口由蔵と共に外出中の由にて、今回、現われたのは、和服姿のかなり年配の品のいい女性で、これは後で判ったのだが此処に通いで働いていた、所謂「炊事婦」と思しき女性だった。

だが、これは後で判った事なのだが、その女性は、ただの「炊事婦」さんなのでは決してなく、嘗ては一流の日本料理店で男性調理師達に伍して腕をふるったと言う、正に超一流の調理師さんでもあったとのことだった。

ただ、当主・田口由蔵は、ここ十数年間というものは、絵画の商用で欧州への旅行がそれは頻繁となり、次第に洋食に慣れると言うか、いや、むしろ、日本料理よりもそちらの方が自分に向いていると思うようになったとのことだった。

兎角、外国人との折衝での食事には、なかなか和食を摂るというのは無理があったのかも知れないのだ。

そこで、それまでの和食(菜食)主体だった田口由蔵は、次第に洋食(=肉食)主体へと比重が移った結果、近年では、可なりの脂肪肥りとなってしまったらしいのだった。

だが、一流というのは、何をやらしてもごく短期間で、新しい技術を身につけるのが早いとも言われている様に、田口家の一流和食料理人も同様に、当主の洋食趣向をいち早く察知するや、直ぐにそれに対応したのだった。

で、ここ数年の間に、その毎食のメニューも、今ではすっかり洋風料理となり、しかも、よりハイカロリーの肉食を主体としたものに激変した由なのだった。

さて、話を元に戻そう・・

本館の正面玄関前まで運送して来た小型貨物自動車から、屈強な男性と共に引っ越し荷物を荷台から下ろした留四郎は、裏手の旧館へと専ら案内役程度のごく軽い小荷物だけを持って、そのかなりきつい斜面の坂道を、息を切らせながら少しずつ運んだのだ。

普段から、多少は力作業にも慣れていたつもりの留四郎だったのだ。しかし、意外と裏手の坂道が結構きつく、それでも若さに物を言わせて、なんとか無事に引っ越し作業を終わらせる事が出来たのだった。
つづく
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( 志朗さんの了解を得て(ゲイの老け専出会い)「お爺さんの玉袋」に掲載されたものを転載させて頂いています。但し、原作には多くの写真が掲載されていますが、公開を控えた方が良いと判断し、転載しませんでした。)

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