上野新平シリーズ(第51話):家庭菜園のお爺ちゃん(1):By源次郎


「上野主任、大丈夫でしょうね。お願いしますよ。」
「ああ、佐々木ちゃん、大丈夫だよ。出欠通知のハガキにも、『出席します』って書いて返信してただろ。」
「主任は忙しいから心配なんです。」
「あはははっ、佐々木ちゃんの披露宴だろ、何があっても、そう雨が降っても風が吹いても、出席させてもらうよ。槍が降ったら駄目だろうけどね。」
「まあ、槍が降ることは無いでしょうから…、宜しくお願いします。なんせ私親戚が少ないんで肩身が狭いんです。」
「そんな、親戚の数で結婚する訳じゃ無いんだから。」

会社の女子社員が、大学出て入社し、半年後に総務課の次期課長候補の青年と『出来ちゃった結婚』する。その披露宴の参加確認に来ていた。
女子社員ってのは、こんな調子だから困った物である。年功序列で結婚してくれたらいいのだが、唐突に早い奴とか、40歳過ぎた、扱い難い『お局様』が居たりする。
結婚披露宴当日、上野新平(53)は、早めに会場に来てしまった。
続々と出席者が入ってくるが、流石に新郎新婦ともに同じ職場だから殆どが顔見知りで新鮮さが無い。
数人ずつが待合ロビーで談笑しているが、工事現場の工程打ち合わせをしている者さえいる。
どのグループの会話にも入る気がしない。
すっかり白けた気分である。
これじゃめでたい披露宴だと言うのに申し訳ない。

そんな時、女子社員の数人が、新平の傍で新婦の話を始めだした。
聞くとも無く隣のソファーに座った岡部ちゃんの話が耳に入った。
「ご両親が亡くなったのは、彼女が小学1年の夏休みだったそうよ。」
「可哀想よね、一緒にドライブ中の交通事故だったのよね。でも大塚君と出来てたなんて知らなかったわね。」
「そうよ、なんでも、付き合い始めたのが、新入社員歓迎会の二次会の帰りだって言うから驚きよね。」
「全くだわ、彼だって焦ってた感もあるわね。なんせ、35歳だから、ひと回りも年上だからね。」
「お腹の赤ちゃん、5ヶ月に入ってるんだって。」
「見習うんだったわ。ホホホ。」

嫉妬も含めてだろうが、お祝いに来たのだろうに、新郎新婦のスキャンダルみたいな話で盛り上がっている。
椅子を立って、広いロビーを歩いてみた。
一見豪華そうなシャンデリアが下がっていて、『金掛かってんだぞ』って雰囲気だ。
雑談している招待客から離れたソファーの傍で床までのガラス窓を向いて立っているお爺ちゃんがいた。
背筋がピンと張った姿勢の良いお爺ちゃんだ。
どちらかの親戚の人だろうか燕尾服着ている。
殆どが略礼服だが、最近の若い者は、普段のスーツ姿も多くなった。
たまにしか着ることがないので勿体無いのは判るが、一着くらいは持ってたが良いと思うんだが、その辺りが年代の差だろうか。

コツ、コツ、コツと、目的が無さそうな素振りで窓際のお爺ちゃんに近付き観察して見たくなった。
70歳代半ばだろうか、白髪で短髪にヘヤークリームが光っているが、頂上は禿げている。
丸顔で眉が濃い。お爺ちゃんの傍のソファーに腰を降ろしながら声を掛けてみたくなった。
「お天気が良くって、いい披露宴になりましたね。」
「え、あ、はい。いい天気になりました。お忙しいのに有難う御座います。」
急に声を掛けられ吃驚した様子で返事を返してきた。やはり親戚のお爺ちゃんらしい。
「大塚君の親戚の方ですか。」
「いいえ、紀子の祖父で戸畑です。会社のお方ですか。」
「佐々木ちゃんのお爺ちゃんでしたか。失礼しました、上野です。」
「ああ、上野主任さんでしたか、紀子から時々話を聞いていました。」
「あははっ、あまり良い話では無かったでしょう。」
「いいえ、いつもお世話になっていて優しい方だと言っていました。あんなお父さんが欲しいとかも。」
「あははっ、まいったな、お父さんですか。それは恐縮です。佐々木さんも、仕事の覚えも良いし、テキパキと働いてくれますから助かっていました。」
「どうでしょう、たいしたしつけもしてやれなかったので、我侭で足手まといだったでしょう。」
「そんな事は有りません。仕事を辞められるそうでガッカリですよ。素直で、会社でも評判が良かったのに残念です。」
「私も気が付かなかったんですが、半年もしないうちに赤ちゃんが出来るって聞いて驚いています。」
「はははっ、目出度いことを一緒に聞かれたんですね。」
「はい、大学に入学してから別居していましたから、たまにしか会っていなかったんです。久し振りに顔を見せにきたら結婚するんだって言い出しましてね、ただただ吃驚でした。」
「それは、驚かれたでしょう。大学に入るまではご一緒だったんですか。」
「ええ、聞かれていると思いますが、小さいときに両親亡くしまして、あの子の母親は私の一人娘だったんです。婿も母一人子一人だったので、私達が引き取りました。」
「それは大変でしたね。」
「いやぁ、生き甲斐でもありました。」
そうした会話をして居る所に、披露宴会場に入るよう案内放送が始まった。

そろそろ披露宴が始まりそうです。それでは、また後ほどでもお話聞かせて下さい。」
「お、そうですね。ボチボチ会場に入りましょうか。」
佐々木ちゃんのお爺ちゃんが立ち上がって右手を出して握手を求めてきた。
新平も立ち上がって両手で包むように、お爺ちゃんの手をしっかり握って別れたが、どさくさにでも抱きつきたかった。
分厚くて、温かい体温が伝わる手であったが、その時、お爺ちゃんの目が潤んでいるのも見逃さなかった。
『二人目の娘を取られるようだ』とも言っていた。
判るような気がする。
披露宴は、会社での忘年会や新年会を延長したようなもので、カラオケがメインになっていた。
披露宴の途中も、佐々木ちゃんのお爺ちゃんが気になって時々様子を伺っていた。
『お、トイレにでも行くのかな』
会場が盛り上がり、ざわめきが一層喧しくなった頃、佐々木のお爺ちゃんが会場出口に向かっているのが見えた。
新平も、ナプキンで口を拭いて立ち上がり、お爺ちゃんの後を、それと無くついて出る。
『あ、やっぱりトイレだ』
お爺ちゃんがトイレに入るのを確かめてから偶然に一緒になったようにドアーをあけた。

「あれ、上野さんも、ご一緒でしたか。」
佐々木のお爺ちゃんがチャックを下げてちんぽを引っ張り出しながら声を掛けてきた。
「はい、賑やかな良い披露宴でしたね。」
5個ほど並んだ小便器の中央に立っているお爺ちゃんの隣に並んでチャックを下げる。

「有難う御座います。何もかも、任せっきりで不安でしたがお陰さまで良い披露宴で安心しました。」
「いやぁ、なかなか立派な披露宴でした。」
「お、上野さんは、流石に若いですね。小便にも勢いがあっていいですね。」
「はははっ、勢いはあるかもしれないんですが肝心なところは峠を越えましたからね。」
「そんな事は無いでしょう。今からですよ。爺になると、小便の出まで悪くなります。」

以外にも下ネタを話題に出されて嬉しくなる。お爺ちゃんもチョット酔いが回って饒舌になったのだろうか。
上から覗き込んだお爺ちゃんのチンポは確かに大きくはなかったが、色艶も良く美味しそうだった。
チンポ全部を引っ張り出して、根元を3本の指で掴んで腰を突き出す格好で放尿を続けている。
とっくに排尿済ませていたが、お爺ちゃんのチョロチョロいわせる小便が終わるまで待って、新平もチンポを振って褌に納めた。
並んで洗面台で手を洗いながら鏡に映った顔を見合わせ無言のままニッコリ笑い合う。
この可愛いお爺ちゃんが、お仲間さんだったら良いんだが見た目では判断が難しいのが此の世界だ。

鏡の中で合わせた目から、何かしら信号を受けたかったが何にも無かった。
トイレのドアーを開けて先に出ようとしたお爺ちゃんがチョットよろめいたとき、腰を支えてやった。
お爺ちゃんの背後から抱くように支えてやったが、新平の固くなりだしていたチンポを意識して押し付けてみた。
「あれ、酔ったかな。」
お爺ちゃんは、照れた顔して新平を振り返りお礼を言い、気付かなかったのか、そのまま会場に入っていった。
お爺ちゃんと一緒に、小便出来ただけで、何となく満足感さえあった。
最後の花束贈呈では、親代わりをしていた佐々木ちゃんのお爺ちゃんとお婆ちゃんだったが、見ていても可哀想なくらいお爺ちゃんがシャクリあげて泣いていたのが一番記憶に残った。

「お、新平。お帰り、早かったな。流行の二次会とかは行かなかったのか。」
垣根に這わせたバラの手入れをしていた善吉お爺ちゃんが声を掛けてきた。
「あなた、お爺ちゃん。自分の息子でも無いのに新平さんを呼び捨てにしたら失礼でしょう。」
近くで洗濯物を取り込んでいたお婆ちゃんに聞こえたらしい。
「いいんだ、息子見たいなものだろう。」
善吉お爺ちゃんが『はっ』として、肩をすくめて舌を出している。
「ご免なさいね。此の人すぐ図に乗って、口が悪いんだから。」
「ああ、構いませんよ。奥さんも気軽に呼び捨てで呼んで下さい。」
「な、新平も言ってるだろ。」
「困った人ね。新平さん、結婚式だったの。」
「はい、会社の仲間の結婚式披露宴でした。」
「まあ、おめでたいことで、天気が良くって、出席者のかたも着物を汚さず助かったでしょうね。」
「なんだ、お前。着物の心配か。ったく、オンナはこんなことしか考えないんだから」
「あら、大事なことよ。これで雨にでもあったらクリーニング代までかかるんですから。」

老夫婦の喧嘩とも単なる日常会話ともつかないやりとりに苦笑しながら、お爺ちゃんにウインクして自宅に帰った。
礼服を脱いで洋服タンスに仕舞う前に、衣文掛けを取り出し、暫らく長押(なげし)に吊るしておくことにする。
酒を溢したりして汚していないかを簡単にチェックして、そのまま、アンダーシャツとふんどし一枚で寝転んでしまった。
気疲れだろうか、会社から帰宅したときより身体が重い。夕飯作るにしても早いので一眠りすることにした。

どの位眠ったのだろうか、窓からの陽射もなくなり夕方になっていた。
遠くで竿だけ売りのスピーカーの声が聞こえる。懐かしい声だ。
『あれ、善吉お爺ちゃんが来ている』
台所から、俎板(まないた)の音がしている。
何かを刻んでいる音だが、せわしく微塵切りしているようだ。
お爺ちゃんの後ろから足音を忍ばせて近付いていく。
最近、床の張替えをすませたので軋む音がしない。
息を止めて背後に近付いて、膝を折り腰を少し落として両手をお爺ちゃんの腰を抱くようにして股間をムンズと掴んでやる。

「お、吃驚した。起こしてしまったか。」
作業している手も休めず、白葱を細かく刻んでいる。
「何しているんですか。」
金玉を揉みながら耳元に息を吹き掛けて聞いてみる。
「お、止せ、包丁が危ないだろ。」
「あれ、危ないのは、包丁じゃ無くって、不器用な手が危ないんでしょう。」
「ばか、減らず口聞くんじゃない。お、おお、本当に止さんか。」
「何しているのか教えてくれたら辞めてもいいよ。」
新平の半勃起したチンポを、お爺ちゃんの背中に押し付けながら腰をグリグリさせる。

「そうだ、礼服は風を通したが良いんで、物干し場が影っていたから出して吊るしてる、もう良い頃だから取り込んで来い。」
「あら、そうでしたか。すみません、有難う御座います。でも、何作っているんですか。奥さんはお出掛けですか。」
「ああ、婆さんは、スーパーから市場に行った。出かけたら二時間は帰って来ないから喧嘩相手が居ないので退屈になったので味噌ジャム作ってやろうと思ってな。」
「何ですか、その味噌ジャムって。」
「いいから、出来上がったら味見させてやっから、礼服取り込んで来い。」
「ったくぅ、人使い荒いんだから。」
「生意気言うんじゃない、自分のことじゃろ。」
「あ、そうだった。あはははっ。」

物干し竿に掛けられていた礼服を取り込んで戻ると、台所にお爺ちゃんの姿が無かった。
「お爺ちゃん、何持って来たんですか。」
勝手口から、湯呑み茶碗を持って、片手で蓋をするようにして入って来た。
「新平、小麦粉きらしてたぞ。隣に行って、かっぱらって来た。」
「かっぱらってだって、自分ちでしょう。」
「そうなんだが、新平の家で使うんだから『かっぱらって』来たようなもんじゃ。」
「何か人聞き悪いな。せめて借りて来たくらいの表現でいいでしょう。あれ、人参なんか摩り下ろしてる。それも味噌ジャムに入れるんですか。」
「ああ、レシピは後から説明するから、小麦粉を水でトロトロに柔らかく溶かしてくれ。」
言われるまま小麦粉を溶かして、お爺ちゃんに渡してフライパンを覗き込んで見て見る。

味噌をほぐし、葱の微塵切り、摩り下ろした人参を入れている。
その後、砂糖、塩、卵一個、出し汁少々、すりゴマと入れて、最後にトロトロの小麦粉、それに準備した蜂蜜、生生姜他2・3種のものを入れて、とろ火でゆっくり混ぜながら焦がさないようにしている。
「そんなのって、美味しいんですか。」
「判らん、出来上がって不味かったら捨てたら済むことだ。」
「え、初めて作るんですか。」
「うん、今日なラジオで言ってたんで材料だけメモしていたんだ。美味かったら家でも作って食おうと思ってな。」
「それって、私が毒見するんですか。」
「毒は入れていないから大丈夫だ。」
何だかんだと言いながらも、味噌ジャムが出来上がった。
「うん、美味だ。舐めて見るか。」
出来上がった味噌ジャムを指に取っているお爺ちゃんの薬指を舐めて見る。
「あ、変わった味ですが、美味しいです。」
「だろっ。」
「うん、確かに甘すぎも無く美味しいです。ご褒美差し上げないと。」
フライパンなどの洗い物を始めたお爺ちゃんの背中から抱きしめる。
「あ、待て、これを洗ってしまうから。な、な、おい、水が飛び散るから待てって言ってるだろ。あ、ああ。」
「洗い物なんか後で良いでしょう。ご褒美を先に・・・。」
「しょうがないなぁ、このすっけべぇ。あ、あう、あう。」
「しょうがないは、防衛大臣のセリフですよ。助平は、お互い様だったでしょう。」
唇を合わせて舌を絡ませ合う。
善吉お爺ちゃんのベルトを緩め、お尻の方から両手を入れて双丘をムンズと掴む。
指で、お爺ちゃんの菊座を探り中指の第一関節くらいを入れていく。
「あ、よせ、い、痛い。う、うう。」
「ごめん、痛かった?」
「うん、そんままじゃ痛いだろ。」
「そうだね、今度時間が有ったら、ゆっくりゼリー使ってあげるからね。」
「ばか、そんな予約は出来ない。でも、どんなだろうね、あははっ。」
「あ、お爺ちゃん。奥さんが帰って来たら困るでしょう、あ、お、おお。」
お爺ちゃんに、褌の横からチンポを引っ張り出されて咥えられてしまった。
考えてみたら新平は、褌一枚で転寝(うたたね)していたので無防備な状態のままだった。

「あ、ああ、疲れているからって言ってたでしょう。それに、あ、ああ、奥さんが、お、おお。」
流し台に掴まっていたが善吉お爺ちゃんの頭を抱えて腰を前後させてしまう。
「こっちに来い。」
折角の尺八を途中で止められ、手を引かれて寝室に入る。
「ここなら大丈夫だろ。」
布団に転がされて尺八を再会されてしまう。
「うっわぁ、それって強姦みたいなものですよ。あ、ああ、ね、ね、お爺ちゃん、折角だからゆっくりやろうよ。ね、ね、お爺ちゃん。」
無言のまま、黙々と、新平のチンポを舐めまわし、雁を咥えて手でシゴキ始める。
「そんな、バタバタしなくっても、あ、あ、ああ、いいよ、いい・・・。」
犯されている気持ちのまま最後までいってしまった。
「おお、うまかった。味噌ジャムが冷えたらタッパーに移し冷蔵庫に入れておくんだぞ。」
善吉お爺ちゃんは、捲くりあがったシャツをズボンに納めて、さっさと帰っていった。

数日後、昼食を済ませて会社に戻った時、それを待ってたように新平の机の電話が鳴った。
「はい、上野です。やぁ、佐々木ちゃん元気だったか。」
『嫌だわ、もう佐々木じゃありません。』
「そうだったね、大塚さんになったんだったね。どうだい新婚生活は。」
『もう、主任ったら。』
電話の向うで顔を赤くさせている姿が目に浮かぶ。
「それで、新婚旅行は何処に行ったんだったかな。」
『あら、披露宴で言ったでしょう。妊婦は飛行機に搭乗出来ないから出産後に家族旅行だって。』
「あ、そうだったんだ。トイレにでも行ってて聞いていなかったようだ。」
『あ、それで思い出した。主任ったら余計な話しさせるっから忘れるところだったわ。』
「何だよ、それで思い出しただなんて、気になるじゃないか。」
『主任さん、私の祖父とロビーで話されたんでしょう。』
「ああ、お爺ちゃんと披露宴の前にチョット挨拶させてもらったよ。優しそうなお爺ちゃんだね。」
『優しそうに見えるのは外ズラだけです。鬼みたいに怒るんですから。』
「はははっ、鬼だなんて言ったらバチがあたるよ。」
『はい、心の中では感謝しています。』
「心の中だけでなく態度で感謝を現さないと駄目だよ。あれ、説教しているようだね。それで用事は何だったんだろ。」
『そうそう、また忘れてしまうところだったわ。祖父が、お世話になった主任にお礼の挨拶したいのでって言ってるの。』
「別に、お世話だなんて、佐々木ちゃんには私がお世話になったようなものだけど。」
『そうじゃ無くって、家庭菜園した野菜を食べてもらいたいのだと思うんです、誰彼と無く差し上げて自慢したいんです。』
「ほう、自慢の家庭菜園ですか、いいなぁ。でも私は一人暮らしだから貰っても食べきれないよ。」
『あまったら、ご近所に分けてあげて下さい。』
「そう、だったら私が、お爺ちゃんの所に遊びに行って貰って来るよ。」
『それでは申し訳ないですから。ご迷惑でなかったら土曜日か日曜日に電話して行かせますから貰ってやって下さい。押し売りみたいですみません。』
「そんなこと無いよ。それでは宜しく伝えててね。佐々木ちゃんも、落ち着いたら会社に遊びに来なさいよ。」
『有難う御座います』
全く期待していなかった、佐々木のお爺ちゃんに会えそうだ。また並んで小便する機会があったらいいが。

早速、その週の土曜日に佐々木のお爺ちゃんから電話があって午前中に来てくれることになった。
当日は、朝早くから家の中を掃除して、お爺ちゃんの到着を待った。
何度も壁に掛けた時計を見上げながら、寝室に入ったり居間に来たりして落ち着かない。
軽のワゴン車と言ってたが、それらしいエンジン音も聞こえない。
10時過ぎても、佐々木のお爺ちゃんは来てくれなかった。詳しく場所を教えていたから間違うはずは無いと思うが、何となく心配になって来る。
玄関の外に出て通りを見たが、それらしい軽ワゴン車の姿は見えない。
「新平、誰かを待っているのか。」
三度目だったか、外に出たところに、隣の善吉お爺ちゃんが庭先から声を掛けてきた。
「ああ、お爺ちゃん。おはよう御座います。」
「うん、おはよう。何ださっきから通りばかり気にしているようだが、お客さんか。」
「ええ、此の間、結婚した社員のお爺ちゃんが野菜を届けてくれるって言ってきたけど遅いんで心配になって。」
「交通事故でも心配しているのか。」
「嫌なこと言わないでよ、縁起でもない。」
「あははっ、そんな怖い顔してムキになるな。週末で渋滞しているんだろう。何度か来て貰ったことがあるんか。」
「いいえ、初めてだから心配なんです。」
「そうか、その内見えるだろうから、お茶でも飲まんか。」
「はい、有難う御座います。もう暫らく待ってみます。」
会いたかった、折角の佐々木のお爺ちゃんの訪問だ、善吉お爺ちゃんに邪魔されたくなかった。

家に入り、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し、コップに注いで一気に飲み干した。
『ふぅー、怖い顔したんだ』
食卓の椅子に腰を降ろし落ち着いて、善吉お爺ちゃんに、八つ当たりしたのを思い出し苦笑して反省した。
『お爺ちゃん、ゴメンね』
その時、表で車のエンジンを切って止まった気配がした。
『ああ、やっと来てくれたんだ』
食卓の椅子から立ち上がろうとしたとき、玄関が空いて善吉お爺ちゃんの声がした。
「どうぞ入って下さい。待ちわびていたようですよ。」
『またまた余計なことを言ってる』
「やあ、すみません。遅くなってしまいました。こんにちは、戸畑です。」
大きなザルにこぼれそうに野菜を入れて、善吉お爺ちゃんの後ろから佐々木のお爺ちゃんが入って来た。
「ああ、佐々木さん、じゃ無かったですね、戸畑さん。おはようございます。場所が判り難かったですか。」
「いいえ、場所はだいたい判っていましたが、新鮮な物が良いだろうと農園に行ってから来ましたので、すっかり遅くなってしまいました。」
「それは、わざわざ大変でしたね。凄い、そんなに沢山持って来られたんですか。有難う御座います。」
「どうぞ、ご近所の方にも分けて上げてください。あれ、先程の方は。」
「私のことですか、どうぞ上がって何も有りませんがお茶でも。」
善吉お爺ちゃんが先に上がって急須にお湯を入れている。
「あ、福島さん。そんなこと私がしますから。」
「いいから、早く上がってもらいなさい。」
此の時、新平は、どうしてだったか善吉お爺ちゃんが鬱陶しくさえ思えた。

「戸畑さん、どうぞ上がって一服して下さい。」
戸畑お爺ちゃんは、玄関で不思議そうに善吉お爺ちゃんと新平の顔を見ている
「ああ、あの方は隣の福島さんです。お爺ちゃん、後は良いですから私がします。」
ちょっとお爺ちゃんを邪魔にしたような言い方になったようだったが、善吉お爺ちゃんは、ニコニコ笑って湯飲みにお茶を注いでいた。
「ああ、お構いなく。お届けしただけで失礼しようと思っていましたから。」
戸畑お爺ちゃんが遠慮して帰ろうとしている。
折角来てくれたのに、逢ってゆっくり話したかったのに、このままでは帰ってしまわれそうだ。
「そんな、こんな遠くまで来て下さったのに、そのまま帰らせることは出来ません。ちょっと上がって下さい。」
躊躇している戸畑お爺ちゃんの手を掴んで無理にでもとの思いで上がってもらった。
「すみませんね。それでは遠慮無く一服させてもらいます。」
「そうですよ、このまま戸畑さんに帰ってしまわれたら佐々木ちゃんに怒られますからね。はははっ。」
居間に居た善吉お爺ちゃんに帰ってもらいたくて目を合わせようとしたが、食卓の椅子を引いて戸畑お爺ちゃんを座らせようとして新平と顔を合わせようとしない。
「ああ、福島さん。有難う御座いました、後は私が・・・。」
そう言い掛けたが、善吉お爺ちゃんも椅子に座って、お茶を啜りだしている。
『ああ、神様・・・』
新平にしては、戸畑お爺ちゃんと二人っきりで話したかったが諦めるしかなかった。

一時間近く居てくれた戸畑お爺ちゃんだった。
その間、二人のお爺ちゃんの会話に割り込もうとしたが、趣味で始めた家庭菜園や庭木の手入れの話しで盛り上がっている会話の中に入れない。
昼食でもと勧めてみたが、午後から友達と野菜の植え付けの予定があるらしく帰ってしまった。
「戸畑さんって言ったかな、善い人のようだな。」
善吉お爺ちゃんは、使った湯呑み茶碗を流し台に持って行って洗い出した。
「そうですか、あまり話したことが無いので判りません。」
ちょっと『ムッ』となっている新平は語気が強くなってしまった。
「何だ、話ししたこと無かったのか。」
「あの人のお孫さんから聞いていただけですから。」
「ふぅーん、でも、わざわざ野菜を持って来てくれたんだから、てっきり知り合いかと思っていたんだが。」
「披露宴で挨拶しただけです。」
「今度、借りている畑に遊びに来てくれって言ってたな。」
「そうですか、私は聞いていませんでした。お爺ちゃんだけ行って下さい。」
「なんだ、機嫌が悪いな。どうしたんだ。」
「そんなこと有りませんよ。それより、玄関の野菜は適当に持って帰って下さいね。」
「ワシは要らん。」
機嫌が悪い新平の態度が理解出来ない善吉お爺ちゃんだった。
「そんなこと言ったって、私だけで処分出来ないでしょう。」
「向かいの人とかに分けてやったら良いじゃないか。」
このまま二人の会話が途絶えてしまう。

新平がトイレに立った間に善吉お爺ちゃんが玄関から帰って行く気配がしたが、なにも話さずに帰ったようだ。
その日は、気分が晴れず、昼食も食べず午後からは寝室でボンヤリと過ごしてしまう。
『ちょっと大人気なかった』
新平がトイレに立ったとき善吉お爺ちゃんが淋しそうにして俯いていたのが思い出された。
『悪いことしたな』
夜になって、善吉お爺ちゃんの様子を見たくて適当に野菜を分けて持って行ったが、お爺ちゃんは、奥さんが声を掛けたが出て来なかった。
「ご免なさいね。どうしたのかしら聞こえないわけないのに。今日は、なんか午後から変なの。」
「ああ、野球でも見られているんでしょう。また巨人が負けているんじゃないですか。」
「そうなのよ、昔っから巨人が負けてるとこうなのよ。」
「はははっ、毎日勝ってくれって言っても無理でしょうから。」
「そうなの、勝ち続けると面白く無いといってみたり。また阪神が優勝したときなどは、どこのファンだったのと思うくらい喜んだりするんだから。」
「はははっ、悪く言うと天邪鬼(あまのじゃく)ですか。」
「そうかもね、ほほほっ。」
そうした話しをしながらも、お爺ちゃんがステテコ姿でニッコリ笑って出てくるのを期待したが駄目だった。
『善吉お爺ちゃん、ゴメンね。明日は機嫌直してね。』
福島さんの玄関ドアーを閉めながら夜空を見上げた。雲に霞んだ十三夜の月までも悲しそうだった。

(つづく)

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(本作品は源次郎さんのブログ「お爺ちゃん達のときめき物語」(http://sinpei53.at.webry.info/)に掲載されたものを、源次郎さんのご了解を得て、転載させて頂いたものです。)

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