上野新平シリーズ(第54話):家庭菜園のお爺ちゃん(4)By源次郎


久し振りに定時に退社し電車を降りて自宅近くまで来たところで善吉お爺ちゃんが前を歩いている後姿が目に入った。

駆け足で追いつき肩を叩く。

「お、新平。お帰り、今日は早いんだな。」

数日会っていなかった善吉お爺ちゃんの顔だった。
これが自宅だったら、直ぐに抱きついてキスしただろうが残念だ。

「お爺ちゃん、只今。久し振りだったけど元気だったですか。」

「ああ、ワシは元気だ。新平は、どうなんだ。最近帰りが遅いようだったが、無理するなよ。」

「有難う。ちょっと忙しくって残業続きでしたが元気でしたよ。」

「そうか、それは良かった。仕事が忙しいってコトは一番だ。不景気でリストラされたって人も居るからな。」

「お爺ちゃんの知り合いの方ですか。」

「いやな、世間で言ってるから…。」

「何か隠しているでしょう。お爺ちゃん、顔に書いてありますよ。」

「新平には隠せないんだな、あっははっ。上の娘婿なんだが、あと数年で定年だったんだが、突然肩叩きにあったんだ。」

「それは心配ですね。」

「ワシ達が心配しても何もしてやれんのだがな。」

「そうだ、お爺ちゃん。昨日、戸畑さんから電話が有って、今週の土曜日に菜園に来ないかって誘われました。」

「土曜日か、残念だな。健康検査なんだ。」

「土曜日にですか。」

「ああ、日曜日に老人会で一泊旅行なんだ。それで、旅行会社が前日に問診と簡単な検査をやるらしい。今日は、その打ち合わせの帰りだった。」

「一泊旅行ですか、良いですね。付いていきたいな。」

「今年が最後の参加になると思うんだ。新平が来てくれたら楽しいだろうが、老人会だからな。」

「最後の参加って、どうしてですか。」

「うん、80歳未満って規約でな。それも2年おきだから、ワシも参加できなくなる。」

「元気な老人だっているのに年齢制限するって困りますね。」

「ああ、元気だからって90近いのまで行きたがるのでな、話し合いで決めていた。でも老人会の世話も卒業したかったし丁度いいんだ。」

「楽しんで来て下さいね。奥さんもご一緒なんでしょ。」

「うん、張り切ってる。」

「戸畑さんの菜園には、今回は一人で行ってきますが、次は、きっと一緒に行きましょうね。」

「ああ、宜しく言っててくれ。お礼も忘れずに伝えてくれ。」

「はい、伝えておきます。それでは。」

「後で家に行って良いか。」

「え、そんな遠慮した言い方無いでしょう。待っていますよ。」

「新平が最近、忙しくって疲れているんじゃ無いかと思ってな。」

「そんな事有りませんよ。是非来て下さい。」

ちょっと元気が無い善吉お爺ちゃんが気になったが、家の前で立ち話しして別れる。

「邪魔する。」

まだ、新平が着替えを済ませない前に、裏の勝手口から片手鍋とビニール袋を持って善吉お爺ちゃんが入って来た。

「あら、早いんですね。今からシャワー浴びようと思っていたところです。鍋なんか持って何が入っているんですか。」

「うん、すき焼きの材料だ、一緒に食おう。その前にシャワーか、一緒に入ろう。」

「構いませんが、奥さんも来られるんですか。」

「どうしてだ。」

「だって、すき焼き一緒に食おうなんて言ったでしょう。」

「婆さんは、昨夜から孫のトコに行ってる。明日帰るからって言ってきた。」

「また熱でも出されたんですか、お孫さん。」

「うん、身体が弱いんだろうな、すぐ熱出して幼稚園休みたがるそうだ。」

「ご両親が、お勤めで淋しいからではないんですか。」

「そうかもしれん。困ったモンじゃ。」

「お待たせ、お風呂が溢れ出しました。」

「おお、新平。久し振りだな。」

素早く服を脱いで、風呂のドアーも閉めずに善吉お爺ちゃんが新平に抱きついてキスしてくる。

「相変わらず気が早いんだから。」

新平も、満更でもない。
しっかり受け止めて抱きついて唇を重ね舌を絡ませていく。

「ああ、新平。淋しかった。」

新平の首にぶら下がる様に両腕を回して顔中を舐めまわしてくる。

「う、うう、顔も洗っていないから、ちょっとシャワーかぶらせてよ。」

「嫌だ、待てない。あ、ああ。」

足元に座り込んで新平の股間に顔をつけ、頬擦りして、チンポを咥えてくる。

新平も久し振りでも有ったので、直ぐにでも射精したかったが、寸止めさせて我慢する。

「奥さんが留守だってのに、一人で、すき焼きなんかするつもりだったんですか。」

向かい合わせに食卓に座って、ビール片手に、牛肉を炒めながら善吉お爺ちゃんに聞いてみた。

「予定では、今夜帰宅する心算で居たらしいが、熱が下がらなかったらしい。それで、これは昨日から買っていた牛肉だった。夕べも新平が遅かったので食べられなかった。」

「それは済みませんでした。竣工前の工事があって、バタバタしていたんです。でも、奥さんは、すき焼きを一回パスさせられたんですね。」

「あいつは、いつだって良いんだ。それより新平、もっと食べなきゃ。」

「お爺ちゃんだって、あまり食べていないでしょう。はい、あーんして。白菜も食べないと駄目でしょう。」

「うん、あーん。うんうん、やっぱり新平と食べると美味しいな。」

「私も、一人で食べるより楽しいです。」

「焼酎、まだ作ろうか。」

「あ、私は、もう充分です。お爺ちゃん、飲んでばかりで食べたんですか。」

「ああ、そんなに食べられないから。」

「それでいて焼酎は入るんですか。」

「うん、焼酎は別のところに飲んでるからな。あっはははっ。」

後片付けも、そこそこに寝室に行ってDVDをセットして裸になり抱き合って観賞する。

いつしか、テレビ画面と同じことが、現実として再現され始められていた。

「お、おお、新平、今日は元気が良いな。う、うう、うん、もっと奥に、そうそう、あ、ああ、いいなあ・・・。」

「お爺ちゃん、締め付けが凄いよ、あ、ああ、もう駄目、射っちゃう、あ、ああ。」

二人の絡みは、呼吸も合って、新平が先に射ってしまった。

「どれ、お待たせ、ゆっくり扱きますからね。」

「あ、ああ、いいなあ、そのいやらしく、ヌメヌメしたシゴキがたまんないんだ。あ、ああ、ワシも、あ、ああ、お、おお、ううーん。」

善吉お爺ちゃんは、何時に無く多量の精液を腹の上に吹き上げている。

「新平。疲れたろう。」

「はははっ、お爺ちゃんと一緒だから疲れなんか、吹っ飛んだよ。」

「そうか、有難う。寝ようか。」

お爺ちゃんが、その後に何か話していたようにも思ったけど眠ってしまった。

目が醒めたのは、何時もの時間だった。
早起きする善吉お爺ちゃんは、新平に抱きついた格好で鼾かいている。

起こさないように布団から出て朝食の準備が出来た頃、寝ぼけ顔のお爺ちゃんが居間に入って来た。

「新平、早いんだな。」

「そうじゃ無くって、お爺ちゃんが遅いんだよ。疲れたんでしょう。」

「うん、それよりグッスリ眠れた。最近では珍しいくらいだ。」

「そう、それは良かったね。先に朝食して出勤するけど、お爺ちゃん、ゆっくりしてて良いからね。」

「ああ、有難う。」

毎朝の満員電車だが、今朝は苦にならなかった。身体がリフレッシュした清々しい感じだ。

出社して間もなく、女子社員が入れてくれたお茶を飲んでいるとき携帯電話のバイブが震え出した。

『何だ、早くからMビルからだろうか』

湯呑み茶碗を机に乗せてから受信ボタンを押した。

『飯塚ですが、上野さんでしょうか。』

「はい、上野ですが、どちらの飯塚さんでしょうか。」

「どちらのって、ワシだよ。新平だろ。」

「あれっ、ひょっとして…。あ、飯塚さん。」

『そうだよ、飯塚だよ。』

此の時、新平は、サウナで会った元営業マンのお爺ちゃんの名前を聞いていなかったのを思い出した。

「ああ、その節は、お世話になりました。ちょっとまだ目が醒めていないようで失礼しました。」

『なんだ、もう9時過ぎだぞ、目が醒めていないって酷いな。』

「はははっ、ウソですよ。惚けただけです。」

『いま電話して構わないか。』

「はい、伺いますが、お急ぎでなければ、後で此方らから電話させてもらいますけど。」

『そうだな、急ぐってことは無いので、お昼にでも電話もらえるか。逢いたいんだ。』

「承知しました、ちょっと調べてから確認させてもらいます。有難う御座いました。」

『すまんな…。』

「いいえ、こちらこそ失礼しました。では、のちほど。」

新平は、思いがけない電話で、携帯を折りたたんだ後、大きく深呼吸をして、ゆっくり湯呑み茶碗を取り上げた。

『飯塚お爺ちゃんは、きっと隠れ家にいるんだろう』

昼食後、約束していた飯塚お爺ちゃんに電話を掛けたが、留守電になっていて、出てくれなかった。

午後は、施工が遅れ気味のMビルに出掛けることにした。

途中、作業服のポケットに巻尺が入っていないのに気が付く。

『3丁目公園』と書かれた看板前に車を停めて、金物屋に行く。

公園のトイレが見えたので入ってから行こうかと思ったが、誰かが入っていくのが見えたので買い物が済んでから小便することにした。

その時、公園のベンチに座ってたお爺ちゃんが、立ち上がって追い掛けるようにトイレに入るのが見える。

『はははっ、お仲間さんだったり…』

そんな考えをする自分に苦笑する。都合良く、あちこちに、お仲間さんが居るわけ無いだろう。

希望した5mの巻尺を買い、車に戻る途中で公園に入る。トイレの前に、先程誰かの後から入って行ったお爺ちゃんがベンチに座っていた。

「こんにちは。」

黙って通っても良かったが、身なりもキチンとしたシャツだし、耳の上にだけ残った白髪が可愛い好感持てるお爺ちゃんだったので挨拶してみたくなった。

肌艶はいいようだが、なんとなく淋しそうな雰囲気でもあった。80歳くらいだろう。

声を掛けられたお爺ちゃんが吃驚した顔で新平を見上げている。

最近の都会では、こうした通りすがり同士で声を掛け合うことが少なくなった為だろう。

これが田舎だったらごく普通のことかもしれないのだろう。

「あ、はい、こんにちは。」嬉しそうにニコニコして挨拶を返してくる。

トイレに入って3個並んだ小便器の中央でチンポを引っ張り出し放尿し始めたところに先程のお爺ちゃんが入って来て、隣に立った。

『うん? さっき入った筈だったが』

隣の小便器に立った、お爺ちゃんはチンポは掴んでいるようだが小便の音がしない。

ふっと横を見ると、新平のチンポを覗き込んでいる禿げた頭があった。

「あれ、お爺ちゃん。珍しいですか。」

「あ、ごめんなさい。勢い良く小便が出ているので羨ましくって見とれてしまいました。」

「あははっ、お爺ちゃん、しょんべんの出が悪くなりましたか。加齢で出が悪くなるのは仕方ないですよ。」

「立派なチンポですね。」

新平の言葉は聞いていないようだ。

「立派だなんて照れますね。」

『ぷるんぷるん』とチンポを振って、根元から数回扱いてズボンに仕舞おうとしたら、お爺ちゃんの手が伸びてきた。

「あっ。」

「ちょっと触らせて下さい、駄目ですか。」

「あははっ、駄目ですかって、もう握っているでしょう。」お爺ちゃんが握ってきた手をゆっくり外しズボンにチンポを仕舞いチャックを上げる。

お爺ちゃんは、残念そうに新平の顔を見上げて来る。
自分のチンポは仕舞ったのでは無く、自然にズボンに隠れてしまったのだろう。

ズボンのチャックは開いたままでいる。

「お爺ちゃん。」

新平が、お爺ちゃんを引き寄せて抱きついてやると、両腕を挟まれて下げたまま黙って身を委ねるように力を抜いて、されるままでいる。

「ふっふぁ…。」

ぶら下げていたお爺ちゃんの手が新平の股間を弄り始める。

トイレの外に人の気配が無かったので、両手でお爺ちゃんの顔を挟んで上向きにさせ、唇を重ねてみた。

「う、嬉しい・・・。」

お爺ちゃんは、舌を入れて絡ませてくる。

「ここでは、誰かが入ってくるとマズイですから、個室に入りましょう。」

お爺ちゃんの手を引いてトイレのブースに入り鍵を掛ける。

お爺ちゃんは、すぐに新平の首に手を回し、ぶら下がるようにしてキスを求めてきた。

ゆっくり抱きしめてやって唇を合わせる。すぐに、お爺ちゃんの舌が入って来て絡ませる。

新平が、お爺ちゃんの股間に手を伸ばして、チャックを下げようとすると腰を引いてしまった。

「あら、嫌だったですか。」

「そうじゃ無い、ワシの元気が無いから。」

「いいじゃないですか、ちょっとシゴかせて下さいよ。」

「うん、それより、兄さんのをしゃぶらせてくれんか。」

「ああ、良いですよ。でもあまり時間が無いんで…、あ、ああ。」

新平が言い終らない内に、チャックを下げて反勃起したチンポを咥えている。

このお爺ちゃんは、さっきもそうだったが、返事する前に行動に移している。

お爺ちゃんの口いっぱいに勃起した新平のチンポを両手で拝むように支えて、ぎこちなくではあるがジュルジュル尺八してくれている。

そのまま時間が有ったら、ゆっくりしゃぶって貰いたかったが現場での工程会議も気になって来た。

足を踏ん張って、天井を向き、歯を食いしばる。

「お爺ちゃん、ちょっと手でしごいてよ。早く射きたいから。」

お爺ちゃんは、亀頭を咥え、舌先で尿道口をチロチロ刺激させながら竿をシゴいてくれた。

「あ、ああ、い、射くよ。きた、きた、あ、ああ…。」

お爺ちゃんの口から竿を抜こうとしたが間に合わなかった。

『ビ、ビ、ビビッ』

新平の精液は遠慮なくお爺ちゃんの喉深くに飛び散るように入って行った。

「あ、ああ、ごめん。間に合わなかった。あ、ああ。」

ごくん、ごくんと、喉を鳴らして美味そうに新平の精液を飲み込んでいる。
その後、舌で竿を舐めまわして綺麗にしてくれた。

そうした、お爺ちゃんを上から見ていて怖くさえ思えてくる。

お爺ちゃんを立たせて、キスをしながら耳元で囁く。

「ね、お爺ちゃん。何時もこんなことしてくれているんですか。」

「いいや、初めてです。」

「それにしては上手でしたね。ここの常連でしょう。」

「いいや、今日が初めてです。」

顔を真っ赤にして否定してくる。

一緒に、手を洗って表に出た。先程まで、お爺ちゃんが座っていた藤棚の下のベンチに誘って腰を降ろす。

「どうして、ここを決めたんですか。」

「あのな、先週、初めて隣町の川通りにあるサウナに行ったんです。」

「初めてのサウナだったんですか。」

「ああ、初めてだ。今は内風呂になって、人のチンポを見ることが出来ないでしょう。それで、どうしてもチンポを見たくって行ってみたんです。」

「うまく見れましたか。」

「うん、久し振りで充分見て廻った。それで最後にサウナにはいったんです。そうしたら、私が居るのを知っていて、いい歳したのが男同士でキスをし始めた。驚いて動けなくなって見ていたら、椅子に寝転んでシックスナインっていうのを始めてしまったんです。」

「あらら、人前でですか、それは驚きますでしょう。」

「ああ、暫らく見せてもらった。その後、若い男が入ってきたら、二人は離れて出て行ったんです。」

「後を付けたんですか。」

「いいや、二人とも湯に浸かりに行ったので付いていかなかった。」

「それで終わりですか。」

「うん、それからロビーで、ここの公園が発展場だって言ってるのを聞きました。それで昨日と今日来てみたんです。兄さん発展場って何のことですか。」

「あははっ、私も良く知りませんが、発展場って言うくらいだから、此の道が理解出来て、ここで出逢ってその後発展していける場所と言う意味ではないでしょうか。」

「ふーん、そう言うことですか。面白そうですね。」

「あのぉ、差し出がましいようですが、充分気を付けて下さいね。先月だったか、どこかの発展場で財布取られたりしたとかありましたから。」

「そんな悪いことする人も居るんですか。」

「居ますでしょうね。それと病気にも気を付けないと駄目ですよ。あ、私は病気は大丈夫ですから。」

「病気って、梅毒とかですか。」

「それも有るかもしれませんが、治らない病気とかも有りますからね、判るでしょう。」

「うんうん、そうでしょうね。」

暫らく話していたが、現場が気になったので、名残惜しむお爺ちゃんの手を握って再会できたら、ゆっくりやりましょうと言って別れた。

今日は、思いがけないことが2回もあった。飯塚お爺ちゃんからの唐突な嬉しい電話。

それに今日が初めてだと言ってた公園のお爺ちゃん。

もう一度何かがありそうだと思うと、眠い工程会議も苦にならなかった。

昼食後、約束していた飯塚お爺ちゃんに電話を掛けたが、留守電になっていたので、会議が終わってから電話してみた。

『プルプルー、プルプルー』

呼び出し音だけで、肝心の飯塚お爺ちゃんは、何度も電話を掛け直して見たが出てくれなかった。

『お昼に電話するって言ってたのだが、どうしたのだろう』

ちょっと心配になったが、そのうち新平も忘れてしまっていた。

退社時間の午後五時前に会社に戻れたが、別の現場からの呼び出しが掛かってしまった。

「ちょっと宗ちゃん、外出掲示板はファンクション5だったよね。」

最近は、外出掲示板がパソコンに入力することに変った。

「あら、そうですよ。お昼も同じこと聞かれましたね。どうしたんですか。」

「それがね、昨日、消防設備設置申請ソフト入れてから、バッチングしてるんだ。また入力しててよ。」

「良いですけど、トップから簡単に入れましたよ。」

「あらそうだったんだ、有難う。」

『午後4時30分~午後6時まで。S体育館現場。直退。連絡は携帯電話』

バタバタと書き込み会社を出て電車に乗る。いつも通勤で乗降している駅で降りてタクシーを拾う。

自宅とは反対方向に走る。左側に商店が並び、広い歩道には片流れの屋根が掛かっている。

暫らく走っていると、善吉お爺ちゃんが歩いている後姿が目に入った。

家とは反対方向に歩いている。それも、二人連れだ。一緒に歩いているお爺ちゃんは、何処かで会ったようだ。『誰だったかな』

二人の間には、コンビニ袋を仲良く手をくっ付けて一緒に下げている。あまり重そうでない荷物だ。

時々顔を見合わせて笑いながら楽しそうだ。

タクシーで追い越す際に、相手のお爺ちゃんの顔がはっきり見えた。

何時だったか、公民館で料理教室の入会手続きをしてあげたお爺ちゃんだ。

あの時、お昼ご飯を近くの食堂で一緒に食べて、その帰りに、お爺ちゃんのマンションにお邪魔したんだった。

たしか、奥さんが倒れられて入院されて植物人間状態で、一人暮らしと言っていた人で、映画館で誘われて男同士の関係を教えてもらったと言っていた。

たった一回だったが、成り行きで、その日に絡んだお爺ちゃんだ。
名前が思い出せないが間違いない。

でも、どうして善吉お爺ちゃんの知り合いだったのだろうか。一緒に料理教室に行ってたんだろう。

だとしたら善吉お爺ちゃんの料理が上手だと言う事が理解できる。

まさか…、
二人の間は男同士の関係が出来ているのではないだろうか。
考えられないことはない。

『善吉お爺ちゃんも頼もしいな』

何となく、嫉妬めいた気持ちだが、応援してあげたいとも思う、複雑な気持ちがした。

現場での打ち合わせが手間取り、帰宅したのが、午後8時過ぎていたが、福島善吉お爺ちゃんの家の電気は点いていなかった。

善吉お爺ちゃんの奥さんは、今日も娘さんの所に行ってて外泊だろうか。

遅い晩ご飯を済ませてシャワーを浴び、缶ビールを持って寝室に入る。

その時、気になって善吉お爺ちゃんの家を見たが、帰宅した模様は無かった。

テレビを点けたが、たいして面白い事もやっていない。布団に入って時計を見たら既に午後11時だった。

『あ、思いがけない第3番目って、善吉お爺ちゃんの外泊だったのだろうか』

二人のお爺ちゃん達、どんなことやっているんだろうか、そんなことを考えながら寝てしまった。

翌々日、戸畑お爺ちゃんの菜園に出かける朝、車に乗り込んだところに善吉お爺ちゃんが駆け寄って来た。

「今日は、戸畑さんとこに行くんだったな。」

「ああ、お爺ちゃん。おはよう御座います。今から行って来ます。」

「これ、婆さんが買って来ていたんだが、何とか言う菓子らしいが戸畑さんに渡してくれ。」

「そんな気は使わなくっても良いですよ。お礼の土産は昨日買っていましたから。」

「それはそれ、これはワシからだ。宜しく言っててくれ。」

「そうですか、それでは、お預かりします。あのぉ…。」

「何だ。」

「あ、良いんです。それでは、お爺ちゃん行って来ます。」

「言いかけてて、どうしたんだ。」

「いいえ、今日は帰りが遅くなるかもしれません。明日の朝は、見送り出来ませんので旅行は楽しんで来て下さい。」

「ああ、有難う。一日空けるが、何かあったら頼むな。」

「はい、それでは。」

新平は、一昨日の駅前で一緒に歩いていたお爺ちゃんのことや、その晩、善吉お爺ちゃんが外泊したのを聞きたかったが『野暮なこと』と聞くのをためらって苦笑した。

昨晩、戸畑お爺ちゃんに電話して、詳しい場所を聞いていたのだが、その際、菜園の運営は4人のお爺ちゃんでやっているとのことだった。

『4人のお爺ちゃん達が…』考えただけで嬉しくなってくる。出来ることなら全員喰ってやりたい気持ちだ。

4人の内訳は、過去に別々の建設会社で営業をしていた仲間で、公共工事などの指名競争入札の際、建設会館の会議室やホテルで、受注者を決めるために談合していた仲間だそうだ。

会社勤務時は、刃物まで持ち出しかねないような喧嘩仲間だったが、同じ頃定年退職をしたこともあって、これからは喧嘩する必要もないので『何か一緒にやろう』と言って協同で休耕田を借りて家庭菜園を始めたらしい。

しかし、新平にしては、大型建設工事を受注談合していた仲間が、一緒に家庭菜園を始めるなんて、何となく怪しい匂いがするのだが、菜園に行って間違っていることを知らされた。

国道の海岸線沿いを走り、郵便局を目印に山に向かってなだらかな道が続く。
しばらく走ると盆地のような広大な農地が広がっている。

途中、農家が数軒あったが、何れも裕福そうな家屋で、引き込み道路も、それぞれが舗装された綺麗な道だった。

終戦後の農地改良で整地されたのだろう、綺麗に碁盤の目のような農道が作られていた。

その奥の山の麓に荒れた休耕田があり、ぽつんとプレハブの家が建っていた。

そこに行く途中、西部劇で見られるような柵があり、道路幅に合わせた簡単に施錠される腰高の扉がある。

お爺ちゃん達が、遊びで作ったのだろうか、貧相な柵と扉だった。

プレハブ小屋の前に、軽トラックが2台、軽ワゴン車2台が停めてある。
それぞれ、お爺ちゃん達が乗ってきた車なんだろう。

新平が乗ってきた「3ナンバー」のワンボックス車は場違いな感もする。

軽トラックの横に並べて停車させ、プレハブ小屋に入ってみた。
入り口横には、ドラム缶で作った風呂があり、中に入るとピカピカに磨かれた農機具が数台置いてある。

低い床だが、畳みが8枚敷かれている。
休憩所にしているようだ。
壁には、ココに来て着替えたと思われる洋服が掛けられていた。

靴はスニーカー履いて来たが、考えてみたら農作業する服は着ていなかった。
車に戻ったら、アウトドアーようの服くらいは載せているが、先ずは戸畑お爺ちゃんに会って挨拶しないと始まらない。

小屋を出たところで、戸畑お爺ちゃんが駆け足で近付くのが見えた。
カーキ色の作業ズボンを着ていて、股間がモッコリ膨らみモコモコさせて走ってくる。

近付いて行って、チンポを掴んでみたい。驚くだろうな。

「おはようございます。見学させてもらいに来ました。」

「ああ、上野さん、おはよう御座います、いらっしゃい。車が来るのが見えたので戻って来ました。」

「何か御手伝い出来ることがありましたら、仰ってください。」

「有難う御座います。草取りをやってもらいましょうか。腰が痛くなりますが大丈夫ですか。」

「はい、身体は少々自信があるつもりですが、足手まといになるかもしれませんけど。頑張ります。」

「そうですか、助かります。ここは無農薬でやっていますので、虫やみみずが多いですよ。」

「はははっ、みみずは苦手ですが。何とかなるでしょう。」

「苦手でしたか、あっはははっ。そろそろ10時ですから、お茶飲みに仲間が戻って来ます、その時、紹介しますね。」

「わ、もうそんな時間でしたか。」

「結構掛かったでしょう。」

「一時間くらいでした。土曜日で渋滞も無かったので、ただ起きるのが遅くなりました。」

「そうですか、渋滞は嫌ですからね。」

小屋の前で、そんな話をして居る所に、一人目のお爺ちゃんが戻って来た。

「こいつは、学者って呼ばれています。談合の時はデーター分析で頼りになったのです。計算に強いんです。」

「いらっしゃい、学者です。わっはははっ。」

なるほど学者っぽく、長髪で背が高く痩せてはいるが、ガッシリした体型だった。

上品で、インテリ風だ。
優しそうな目で新平を見てくる。
こんなお爺ちゃんと絡んでみたい気持ちになった。

股間に目をやると、それを察知したように、ニコニコ笑いながら自分の股間に手をやってモゾモゾと掻いている。

新平は、都合良く自分に信号を送ってくれているようで嬉しかった。

二番目が、平助と言う可愛い顔をした小柄なお爺ちゃんだった。

本当は、根が助平で談合の会議中も抜け出してソープに行ってたらしい。
それも何度もあったので、最初は「助平」と呼んでいたが、そのまんまでは困るというので逆さまにしたとのコトだった。

戸畑のお爺ちゃんは「組長」だそうだが、菜園の代表者と言うことらしい。

「おい、鉄砲はどうしたんだ。何時もあいつが先に戻って来るんだがな。畑で倒れているんじゃ無いだろうな。」

「鉄砲って、射撃が趣味なんですか。」

「あっはははっ、そう趣味みたいな物だ。数年に一度、会社の要望で、談合して決めてた落札金額の7割り位で、かっさらって落とすんだ。建設談合の仲間に入れたくなかったが、業界が割れていく可能性もあって付き合ってたんだが、個人的には良いやつなんだ。」

「ああ、その鉄砲ですか。私達の業界でも時々やられています。」

「だろ、いるんだよな、迷惑なのが。あ、来た来た、おーい、どうした遅いじゃないか。具合でも悪いんじゃねぇだろうな。」

見ると、麦藁帽子みたいなのを被り、タオルでホッ被りした体格の良いお爺ちゃんが近付いて来ていた。

『あれっ?』

新平は近付いて来るお爺ちゃんの姿を見て、戸畑お爺ちゃんの孫の披露宴を思い出していた。

嫌がる女子社員の一人を舞台に引き上げて、あの野良着姿で『麦畑』を歌ったお爺ちゃんだ。

ここの仲間だったので、戸畑お爺ちゃんが招待していたのだろう。

あの時は、戸畑お爺ちゃんが席を立ったので後を追って新平も会場を出たので、この鉄砲お爺ちゃんは気付いていないだろう。

「いや、しつっこい根が張った草が生えててな悪戦苦闘していたんだ。ああ、この人か、お客さんってのは…。こんにちは。」

帽子とタオルを取って、バタバタとズボンの泥を払いながら新平の前に来て握手を求めてきた。

「あっ、こ、こんにちは…。」

こんな出逢いってあるんだろうか、鉄砲お爺ちゃんというのは、サウナで知り合ったムキムキマンの飯塚お爺ちゃんだ。

「お、また、お会いしましたね。」

飯塚お爺ちゃんは、握手をしながら、ウインクしている。

「おや、あんた達、知り合いだったのか。」

戸畑お爺ちゃんが驚いて聞いてきた。

「あ、はい、披露宴のとき『麦畑』歌われたのでしたよね。」

慌てて、披露宴で会ったことを、思い出したように言った。

「そうそう、あの時、ワシが歌い出したら、組長も、この方も席を立って出て行ったんだ。怨んでやろうかと思ったんだ。あっはははっ。」

そんなとこ見られてたんだ。
それで、サウナで会った時、お互いが思い出せなかったが、それぞれ顔を合わせていたことが判った。

「初めまして、上野新平です。」

「ああ、宜しく。鉄砲って呼ばれている飯塚です。」

飯塚お爺ちゃんは、握手している手を一層強く握って来た。

その後、新平が持参した、お礼の菓子を拡げて一緒にお茶を飲んだ。

仲の良い4人組らしく、和気藹々と喋りながらのひと時だったが、新平は、何となく落ち着かなかった。

(つづく)

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(本作品は源次郎さんのブログ「お爺ちゃん達のときめき物語」(http://sinpei53.at.webry.info/)に掲載されたものを、源次郎さんのご了解を得て、転載させて頂いたものです。)

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