上野新平シリーズ(第56話):家庭菜園のお爺ちゃん(6)By源次郎


「上野さん、コンビニの弁当で申し訳ないけど晩飯にしよう。」

先に風呂から上がってバスタオルで身体を拭いていると、後から揚がって来た平助お爺ちゃんが、新平の尻を撫で「うふふ」と含み笑いをして出て行き、晩御飯の準備に取り掛った。

「あ、晩御飯は結構ですよ。出かけに準備して来ましたから帰宅してから食べます。」

「何、帰えるって…、そんなこと駄目だよ。」

「でも・・・。」

「でもじゃないよ、泊まって良いんだろ。」

「え、泊まるんですか。」

「そうだよ、このまま上野さんに帰られたらワシ淋しくって、うん、グレてやるから。」

「そんな…、脅迫じゃないですか。お爺ちゃんがグレて不良になっても誰も迷惑じゃないでしょうけど。あっはははっ。」

「そんなこと言わないで、頼むから泊まってくれ、な、な、良いだろ。先程の続きをやらせてくれ。」

「それじゃ、コンビニで弁当買った時から、こうした筋書き考えていたんでしょう。悪いお爺ちゃんだ。」

「はははっ、バレたんじゃしょうがない。一目惚れしたっていっただろ。そんで戸畑組長に上野さんのこと色々聞きだしていたんだ。」

「え、色々って、どんなことですか。場合によっては個人情報保護法で訴えますよ。はははっ。」

平助お爺ちゃんに近付き抱きついてキスをする。

「う、うう、あ、ああ、上野さんが独身で、優しい人だってことくらいだ。」

「何だ、そんなことですか。ほかに戸畑さんは、良い男だとかは言っていなかったですか。」

「ああ、残念だが言ってなかったな。はははっ。でもな、あの披露宴で良い男だとはしっかり確認済みだったよ。私のタイプだなってな。」

「タイプでしたか、光栄です。私も今朝、お会いして可愛いお爺ちゃんだと気になっていました。」

「そうか、嬉しいな。」

缶ビールで乾杯して、コンビニの幕の内弁当を温めて食べる。

先程の風呂の中では、裸で抱き合ってキスをし、その後、平助お爺ちゃんが新平の足元にしゃがみ込んで尺八をしてくれていた。

しかし飯塚お爺ちゃんに明日の朝、電話することを約束していたのを思い出し、ここでは射精できないと思い、やんわりと諦めさせていたのだが『泊まって行け』と言われるとは思いもしなかったことだ。

夕食後、パソコンの前に座って、画像処理の操作を再度教えようとしたが平助お爺ちゃんは、新平の顔ばかりを見つめていて学習しようとする態度が見え無かった。

「お爺ちゃん。」

「うん?」

「聞いているんですか。」

「あ、うん。いや…。」

「どうしたんですか、自分で一度操作して見て下さい。自分でやってみないと覚えられませんよ。」

「うん、わかった。それより…。」

「それよりって、なんですか。」

「な、それは、また何時か暇なときに教えてくれ。上野さんのチンポのことが頭から離れなくって今は何も覚えられないんだ。」

泣き出しそうな顔で、新平を見つめてくる。

「しょうがないお爺ちゃんだ。」

新平がパソコンの電源はそのままで、先程再生しかけて停めていた『野獣と少年』を再生させる。

「これが良かったんでしょう。」

「うん、そんなもん見無くってもいいんだ、早く同じコトをしたいんだ。な、な、良いだろう。」

平助お爺ちゃんは、湯上りに着ていたクレープの半袖シャツを脱ぎ捨て、ステテコを下げてトランクス一枚になった。

「お爺ちゃん、ビデオの再生は止め…、う、う、あ、ああ。」

平助お爺ちゃんが、椅子に座っている新平の肩に手を回し、顔を近付け耳朶(みみたぶ)を舐めてくる。

「あ、ああ、お爺ちゃん。ちょっと待ってよ、ね、ねね、私もシャツを脱ぎますから。うわ、そ、そこは・・・。」

新平が感じる耳から首と、まるで生き物のように、ぬめぬめと舌先を器用に動かしながら攻めてくる。

平助お爺ちゃんは、抱きついてキスしたまま新平を引き摺るように壁側のベットに連れて行く。

ベットまで辿り着くと身体を入れ替え、新平をベットに押し倒してしまった。

「ね、ねね、洋服脱ぎますから、ちょっと待って下さい。」

「洋服はワシが脱がせてやっから・・・。」

ベットに腰掛けた格好で上半身は上向きで寝せられた状態だった。

シャツを脱がすと、ズボンのベルトを引き抜きざまにチャックを開いて、そのまま足元にズボンを下げていく。

「あ、そんな乱暴にしないで・・・。」

新平が言うのも聞かずに、ふんどしの紐を緩め、取り去ってしまった。

無防備に上向きに寝かされ、既に半勃起させたチンポを上向けにしている新平を、抱き起こしズルズルと枕まで引き上げていく。凄い腕力だ。

新平の上にまたがるようにして被さって、キスをしてくる。

シングルのベットだから二人並んで寝るのは狭すぎる。重なるより仕方ないんだけどチョット重苦しい。

なんとか身体を横向きにして抱き合うが、お爺ちゃんが新平の足元に逃げて行って股間に顔を埋めてくる。

気持ちよく尺八されていたが、お爺ちゃんを引き寄せてシックスナインに持って行こうと身体を起こす。

しかし、お爺ちゃんはチンポに吸い付いたままで離してくれない。

その内、何時の間に準備していたのかギンギンに勃起させた新平のチンポにコンドームを手際よく被せ、ゼリーを塗っている。

「あ、ああ、お爺ちゃん。」

「うん、そのままで寝ててくれ。」

言い終らない内に、お爺ちゃんは新平に跨って自分のアナルに新平のチンポの先をグリグリさせている。

そうやって、お爺ちゃんの菊座にも程好くゼリーが塗りつけられた模様だ。

「うっ、あ、ああ…。」

ズルズルと、お爺ちゃんの肛門括約筋を押し広げ、新平のチンポが飲み込まれるように、生暖かい直腸に入って行ってしまった。

「あ、ああ、お爺ちゃん。最高だよ。痛く無かったですか。」

「あ、ああ、ちょっとな、でも、もう大丈夫だ。あ、ああ、いいなぁ。」

お爺ちゃんが身体を上下させ、暫らく休んだときに新平が腰を上下させてやるといった具合に交互に助け合い、気持ちよくなっていく。

「あ、ああ、いいなぁ…。上野さんの最高だよ。あ、ああ。」

「あれ、お爺ちゃん。どうしたんですか。」

平助お爺ちゃんが、身体を反転させて新平に背中を見せている。

「わ、良いです。凄い、凄い。あ、ああ。」

平助お爺ちゃんの違った感じの直腸の粘膜が、新平のチンポを刺激する。

「うん、こうした体位も良いもんだろ。」

「ちょっと良過ぎます。射ってしまいそうです。」

「そ、それは困る。もっと我慢してくれ。」

「だ、だって、あ、ああ。限界が近い…。」

お爺ちゃんが抽送を休んだのをタイミング良く起き上がり、背中を捕まえて新平の腹に乗せる格好に持っていく。

ベットに腰を掛けるようにして、チンポを挿入したままお爺ちゃんの身体を抱えあげ、お爺ちゃんをベットに腹這いの格好にしてバックから攻める。

「あ、ああ、いいなぁ、上野さん最高だよ。はあ、はあ、はあ、はあ…。」

平助お爺ちゃんをベットの奥に摺り上げ、片足を曲げさせて身体を上向きに回転させて行く。

「あ、ああ、上野さん、そんなことしたら抜けっちゃう、あ、ああ。」

「大丈夫だから、はふはふ、はふ、はふ…。」

「あ、ほんとだ、抜けなかった。す、すっごいなぁ、あ、ああ。」

上手く正上位になって、抽送しながら、お爺ちゃんの萎んだチンポを撫でなでして勃起を促す。

「あ、ああ、気持ち良い、あ、ああ、はあ、はあ、はあ…。」

「お、凄い、お爺ちゃん。復活したね。」

平助お爺ちゃんのチンポが半勃起したところで、新平の手に唾を取り、ぬるぬる状態にして扱(しご)いてやる。

「あ、ああ、いいなぁ、射きそうだ。あ、ああ、きた、きた、な、射くよ、あ、ああ、上野さんは、ああ、まだ射かないの、あ、ああ。」

お爺ちゃんの直腸の中が、激しくなにかが蠢き、括約筋が新平のチンポを絞め付けてくる。

『ミミズ千匹』って聞いたことがあるが、まさにこのことだろう。粘膜が、ぬめぬめと不規則にチンポに纏わり付いてくる。

「うん、来たよ、来た、来た。」

新平の菊座がヒクヒクと呼吸している感覚の後、金玉がキューンと引き締まり、波が寄せてくるように、足元から痺れが這い登ってくる。

「わ、わわ、お、おお、い、射く、射くっ…。」

新平が絶頂に達するのと殆ど同時に、平助お爺ちゃんが身体を捩りながら腰を持ち上げ、赤黒い竿の先にポッカリとアナがあき、花火が打ち上げられた。

胸から腹へと吹き上げられた精液を掌に取り、平助お爺ちゃんの顔に塗りつける。

いやいやをしながら振って逃げるお爺ちゃんの顔を捕まえ、新平の腹に垂れている精液を薬指で掬い、口の中に押し込んでいく。

「あ、ああ、上野さんの意地悪。」

そう言いながらも『チュウチュウ』と自分の精液が付いた新平の指を吸っている。

「どうですか、美味しいですか。」

「初めてだよ、美味くないけど…。あっはははっ。」

新平は、平助お爺ちゃんのアナルにチンポを挿入したまま、汗ばんだ身体を付けて唇を押し付けていく。

それを受けながら腕を新平の背中に巻きつけ身体を密着させてくる。

「上野さん、有難う。気持ち良かったよ。思ってた通りの優しい人だ。」

嬉しそうに、何度も何度も、新平の顔にキスの雨を降らせてくる。

シャワーを掛け合って、再びお爺ちゃんのベットで抱き合ってキスをする。

「ね、ちょっと狭いから、私は床で寝ます。毛布を貸してください。」

「駄目だよ、抱き合って寝てくれ。」

「これでは、お爺ちゃんが夜中に転んで落ちても知らないよ。」

「ああ、大丈夫だ。反射的に柔道の受身が働くから。」

「あら、柔道していたんですか。道理で筋肉が逞しいんだ。」

「若い頃だけどな、そででも10年位前まで勤務の合間に道場で子供たちを指導していたからな。」

「その傍らで、女垂らしだったんですね。あはははっ。」

「それは違うんだ。戸畑の爺が作ってくれた台本なんだ。」

「え、作ってくれた台本って、ウソだったんですか。バツ2で、三番目の奥さんだと聞きましたが。」

「ああ、今の婆さんは、確かに三番目だが、さっきもチョット言っただろ、色々有ったんだ。」

新平の左腕を枕にして横向きで時々キスしながら平助お爺ちゃんの話を聞くことになった。

「お爺ちゃん、睫毛が長いんですね。そんなに長いと、鳩や烏が留まるんじゃないですか。」

「ああ、油断していると、何時の間にか留まっているんだ。重くってな眉が折れるんじゃないかと心配になってな・・・バカ、そんな訳無いだろう。眠いんだ。」

「すみません、ゆっくり寝て下さい。でも、鳥の糞が落ちて来ることもあるでしょうね。」

「ああ、それは、しょっちゅうだ。ネバネバした白い糞が付いて目がメチャメチャしてな・・・、こらあー、そんなこと無いって言っただろ、眠いんだ。」

「そうでしたね、でも、すぐ話を合わせて来るからですよ。」

「目が醒めてしまった。ビールでも飲むか。」

「はい、付き合います。」

冷蔵庫から冷えた缶ビールを持って来て乾杯する。
その後、ベットに横になるが二人とも目が冴えて眠れない。

向かい合って抱き合って寝ているから目が合う。どちらからとも無く唇を合わせにいく。

「お爺ちゃん、戸畑お爺ちゃんが作った台本っての聞かせてよ。」

「そんなモン聞いたって、しょうもないだろ。」

「でも、誤解された噂話しか知らないですから。どうしてもオンナたらしって目でしか見れないんです。」

「大したこと無いんだがな。」

平助お爺ちゃんが大きく溜息突いて語り始めてくれた。

ーー§ーー

平助お爺ちゃんコト箱崎良一は、建設会社に就職して、すぐに営業マンとして成績を伸ばして行った。

45年ほど前の、怖いもの知らずの若造だった。

子供の頃から柔道で鍛えた身体で、何も知らない建設業の営業だったが、がむしゃらに駆けずり回って成績を上げていた。

毎晩のように、目を付けた客を招待して、今は少なくなったが、ホステスを100人以上もいるキャバレーを梯子して飲みまわっていた。

そんな時、歯科衛生士を目指して勉強していると言ってたホステスと知り合い結婚することになる。

田舎娘ではあったが顔立ちも、育ちも良く、素直な娘だった。

しかし、間違いに気が付いたのは結婚してハワイ旅行に行った初夜だった。

今までにも、何人かのオンナとの関係が有ったが、このオンナは、それらのオンナとは違っていた。

それと言うのも、異常とも思えるくらいにセックスが好きだった。
好きと言うより病気に近かったのだ。

まず、初夜は、翌朝まで一睡も出来なかった。
若さに任せて、求められるまま応じていたが、夜が明けるまでに、6回だったか7回だったか、頭が可笑しくなるくらいの要求だった。

二日目も、三日目も同じであった。
昼間の観光計画も全てキャンセルして、ベットから起きだしきれない体力になっていた。

帰国後も当然同じで、10日目の朝、出勤出来ない状態だったが、なんとか妻から逃げられると家を這い出して出社した。

退社時間まで、何とか溜まっていた書類の整理や披露宴に出席してくれた親戚知人に出す、お礼状の宛名書きを済ませたが、会社を出ても足が自宅に向かない。

深夜まで、思いつくまま、スナックで飲んだが、酔えなかった。
それでも重い足を引き摺るように帰宅したが、妻の異常さはセックスだけではなかった。

帰宅した良一を裸にして、体中の匂いを嗅いぎながら「どこで誰と浮気してきたの」と鬼のような顔で嫉妬の炎で攻め捲くる。

座布団や本を投げつけるまでは我慢できたが、それが手元から無くなると食器を取り出して投げつけてくる。

『ああ、オレは、ここでこいつに殺されるんだ』

投げ付けて来るそれらを避けながら、そう思った。
妻が疲れて静まるのを、ただただ祈る思い出待った。

一時間近く暴れていただろうか、箱崎良一のチンポが勃起しないと泣きじゃくって寝てしまった隙に家を飛び出していた。

公園やサウナを止まり歩き出勤だけはしていたが、三日目に直属の課長に呼ばれて『三日も同じネクタイでは駄目じゃないか』と言われ、シワシワのシャツも『それでは営業マンは出来ない』と呆れられてしまった。

その足で、下着とシャツを取りに自宅に戻ることにした。まだ昼前だったが、妻は寝ているのか、窓のカーテンは閉ったままだった。

玄関の鍵を開けて靴箱の前に自分の靴では無い男物の靴が脱ぎ捨ててあった。

片方の靴が裏返しで、慌てて靴をぬいだのだろうか、それを揃えて居間にあがる。

『生命保険の話を聞きたいと言ってたから、部屋に上げてセールスの説明でも聞いているのだろう』

そう思って流し台に来て水を飲んでいて異様な声に耳を疑った。

それは、あの忌まわしい妻の喘ぎ声と、オトコの『いいか、いいか、もっと泣け、もっとよがれ、もっと泣け』と言う声だった。

水を入れたコップを手にしたまま身体を硬くさせて寝室の声を聞く。

家出して三日目で、すでにこうした関係が持てる男が居たのだと知る。

怖いもの見たさもあって寝室の方に近付いていった。
ドアーは半開きのままだ、二人の喘ぎ声が大きくなってくる。

そっと隠れるようにして中を覗いて見た。

そこには、素っ裸の二人が布団の上で重なり合っている。
妻がオトコの上にまたがり帆掛け舟の体位で髪を振り乱して身体を捩っている。

オトコは、妻の尻に両手の指を広げて抱えるようにして抽送する妻を手助けしている。

隆々と勃起した竿には赤黒い血管が浮き出て、妻の陰水でドロドロに濡れ、妻のまんこに突き刺さっている。

その竿が見え隠れするたびに『くっちゃ、くっちゃ』と厭らしい音が、二人の喘ぐ声との三重奏だ。

「おい、冴子、そんままじゃ射っちゃうぞ。」

「まだ、駄目。射っちゃ駄目よ。何時ものようにしてよ。」

妻が、オトコの腹から降りて、男の顔にマンコを押し当て「舐めてよ」そう言い、自分は、濡れた竿を口に咥えて尺八を始めた。

オトコも言われたように、『くちゃくちゃ』とまんこを舐め出した。
シックスナインのままで、時々妻の尻を『ペタペタ』叩いている。

「あ、ああ、いい、いいわぁー、あんた、もっとクリちゃんを噛んでちょうだい、あ、ああ、そうそう、いいわぁー。」

オトコが妻の身体の下から抜け出し、膝たてした格好で妻のバックから責め始める。

『あっ、この顔は…』

そこに居る男の顔が初めてみえて驚いた。妻がバイトで行っていたキャバレーのボーイで、顔見知りだったのだ。

時々、サービスと言い、ニッコリ笑ってオードブルを持って来てくれていた男だ。

何度も、こうした筋書きで勧めているのだろう『阿吽(あうん)』の呼吸で、淡々と進められている。

オトコが腰を打ちつけていく。『ぱん、ぱん』と乾いた音が部屋中に響き、妻の喘ぐ声が一段と大きくなった。

「あん、あん、あん、あんた、いいわ、いい、上に乗ってよ。そろそろ射ってもいいわよ。」

その妻の言葉を待っていたかのように、さっと正上位になって、男が激しく抽送を始める。

「ね、ね、乳首を揉みながら射ってよ。」

「うん、そろそろ射くからな。あ、ああ、はあ、はあ、はあ…。」

「あんた、もう駄目。あ、ああ、ひい、ひい、いっちゃう。あ、ああ、いいわ、いい、ううーん。はやく、はやく来てよ、あ、ああ、ああ。」

妻の断末魔の声に合わせて、男も激しく前後させていた腰を止め、尻の筋肉を痙攣させた後、静かになった。

妻の手が、オトコの背中に爪を立て抱きしめ、上下に重なってキスし始める。

二人は、まだ箱崎が見ているコトに気が付いていない。

どうしたものかと考えたが、ここは、しっかり目撃したことを伝えて離婚手続きを有利に持っていかなければならないだろう。

部屋に入って、ドアーの音を大きく立てて閉めた。

うごめいていた二つの裸体が一瞬硬直して止まった。

次の瞬間、入り口を振返った二人が箱崎の姿を見て、オトコは飛び起き、妻の身体から離れ、脱ぎ散らかした下着やズボンを掻き集め、まだ萎んでいないチンポを隠すように股間に被せて部屋を飛び出して行った。

『バターン』

玄関のドアーが閉る音がして、男が靴を手にしたまま出て行ったようだ。

妻は、不貞腐れた目で箱崎を上目遣いで見ながら、シーツを引き寄せて股間と胸を隠している。

無言のまま、妻に近付き取り敢えず、往復びんたをして部屋を出て、食卓に置いていた飲みかけのコップの水を飲む。

暫らくして寝室に入り、箪笥から下着やカッターシャツ数枚を大き目のバックに詰め始める。

妻は、毛布を頭から被ったまま、一言も喋らない。

「何をしたか判ってるんだろうな、三日の間に、ココを出て行け。お前が持って来たのは化粧道具と洋服だけだから荷物も無いだろ。」

「出て行けって言われても…。」

「さっきのオトコのトコでもどこでもいいだろ。」

「あの人は、奥さんが居るから。」

「そんな事は関係無いだろ。取り敢えず出て行け。」

「それって、離婚ですか。」

「当たり前だろ、この上誰の子かも判らない子供が出来たって言われても関わらないから勝手にしろ。」

「そんな、急に離婚って言われても、慰謝料とか…。」

妻が言い終わらない内に、再び往復ビンタをくらわし、髪を引き摺って布団から出す。

「何をほざいている、慰謝料はオレがもらえるんだ。披露宴の経費など全部出したんだから。これ以上、判らないこと言い出すなら、今すぐにでも裸で表に引きずり出してやる。三日間だ、それまでに出て行け。」

それだけ言って家を出て、会社に行く。

その途中電車の中で、自分が好きになって選んだ結婚相手を知らなさ過ぎたことに腹が立ち自然と涙が溢れてきた。

それから三ヶ月過ぎたが、オンナからは何も言って来なかったし、キャバレーのオトコの消息も判らなかった。

「箱崎君、Kホテルに行って、営業部長の応援に行ってくれ。」

営業課長に言われ、タクシーで出かけた。Kホテルでは、○○省発注の大型工事の談合が行われていた。

全国展開している大手建設会社10社と地元建設会社10社の20社が、10組のJV(ジョイントベンチャー)をくみ、指名入札参加されていて「天の声」が出て落札業者は決まっていたが、分割して下請け受注するための話し合いがあっていた。

いわゆる官製談合だが、受注希望社が素直に引き下がらない。

この工事については、箱崎の会社は既に降りていたが、全てが決定するまでは昼夜問わず付き合いで話し合いの場に居なければならなかった。

ホテルは7室くらいが借りられ、そこに、2,3社ずつが寝泊りする。

実際に重要な話し合いが続けられている部屋以外では、マージャンしているグループや、サイコロや、花札のグループが火花を散らしあっている。

そこでの飲み食いは、工事落札社が支払うことになっているので、手っ取りばやく、寿司桶や、丼物の店屋物が多い。

箱崎良一は、営業部長と交代して、談合成立まで付き合うことになった。

博打で盛り上がった部屋を避け、静かな部屋のベットで横になっていると、同じように上司と交代させられて来た若い男が入って来た。

「お邪魔します、マージャンで負けが込んだので逃げて来ました。あの人たちって、まるでプロですよ。あっはははっ。」

爽やかな顔をした、こうした談合では初めて見る顔だった。箱崎と同じくらいの年齢だろう。

その青年は、建設現場経験の後営業に配属されて間もないと言い、戸畑と名のった。

お互いが自己紹介した後、建設業界の話や、政治の話で意気投合して、軽くビールで乾杯し、部屋で夕食を摂ることにした。

こうした場所では、酒類は控えめに済ませる箱崎なのだが、体調もいまいちで、ついつい酔いがまわるほどになってしまい、初対面の戸畑青年に愚痴ってしまった。

「えっと、箱崎さん。奥さんの浮気で離婚だなんて、かっこ悪過ぎです。ここは、箱崎さんが浮気して逃げられたって方が面子も立つでしょう。」

「え? 私が浮気したことにですか。」

「そうです。まだ誰も知らないんでしょう、だったら、その方が聞こえも良いですよ。私に任せて下さい。いいですね。」

箱崎には、その時、戸畑青年の言葉が理解できなかったが、任せてみようとも思った。

『浮気して新婚間も無い箱崎が、新妻に逃げられた』と言う噂は、すぐに会社内をはじめ、得意先の客の耳にも入った。

「箱崎さん、お元気ですね。もて過ぎじゃないですか。」

内情を知らない同僚や客が、羨ましそうに言ってくる。

戸畑青年の策略は幸いして、箱崎も恥を斯かずに住んだ。

その半年後に、追い出した妻から一通の封書が届く。

封筒の中には、期待した『詫び』の言葉は無かったが、慰謝料のことも請求されて無く、無機質な印鑑を押された『離婚届』だけが送られてきた。

ーー§ーー

そこまで一気に喋った平助お爺ちゃんは、大きく溜息をついて、新平に唇を押し付けてきた。

「ね、お爺ちゃん。その後の話も聞かせてよ。」

「その後って、こんな話思い出したって、しょうがないだろ。」

「でも、気になるよ。戸畑青年とのことなど。」

「組長のこと? あっはははっ、あいつとは、何も無い。ただ仕事で時々顔を合わせるだけだ。談合の席でだけどな、それにしても、しょっちゅう喧嘩していたな。」

「え、それだけですか。この世界での付き合いだとかは。」

「あっはははっ、組長は完全にノンケだ。浮いた噂なんかも全く無いからな。真面目を絵に画いたような真っ直ぐな人間だ。頼りになるしな。」

「なんだ、面白く無い。」

「上野さんは、組長が好きだったのか。」

「そんな訳ないけど、気になっていたし。ううーん、ちょっと期待もしていたかもしれません。」

「それは残念だったな。ワシみたいなのに好かれてしまって迷惑だったな。」

「そんなことありません。菜園で逢った時から気になってたって言ってたでしょう。聞いていなかったんですか。」

「う、うん、さっき聞いたんだったな。有難う。」

「それより、お爺ちゃん。」

「何だ、あらたまって。」

「その握ってるの、チェンジレバーじゃ無いんだから動かさないでよ。」

「お、そうか、チェンジレバーだとばかり思っていたよ。ココがロー、セコ、ドライブだろ。あれバックが無いようだが。」

「あ、ああ、駄目だよ。バックは付いていないんだから。」

「007でボンドが乗っていた車みたいな、ミサイルの発射ボタンは付いていないのか。」

「あ、それは、そこのくびれたトコをシゴクとミルク爆弾が発射されるよ。あ、ああ、今は駄目だよ。整備中だから誤発射するから。」

「いいな、誤発射するトコ見てみたい。」

「だから駄目だって…。あ、ああ、こらこら、布団から追い出しちゃうぞ。」

「わ、本気で怒ってる。面白いな、誤発射させちゃお。」

「あ、ああ、もう…、だ、駄目だって言ってる…、あ、ああ、こらぁー。あ、ああ、助けて。」

平助お爺ちゃんは、発射ボタンを操作後、安心して鼾を斯いて寝てしまった。

夜明け前に、ミサイルを平助お爺ちゃんの直腸に発射して一緒にシャワーを浴びた。

その後、朝食前に平助お爺ちゃんの家を出るつもりだったが、画像取り込みの操作が手間取って、結局昼近くになってから昼食を断わり、帰宅する。

「上野さん、また教えに来て下さいね。」

「はい、私も教えてもらいたいことが沢山有りますから。」

「はっはははっ、ワシが教えることがあったかな。」

玄関の土間に下りてから、しっかり抱き合って長い長いキスをして別れた。

ちょっと遠回りだったが帰宅する前に飯塚お爺ちゃんのマンションの場所を確認しようと行って見た。

部屋を訪問する心算は無かったが、お爺ちゃんの軽トラックが駐車場にあったので驚かしてみようと6階に昇ってみる。

何故か廊下を歩くのに靴の音を立てないように歩いているのに意味が無いと苦笑する。

飯塚お爺ちゃんの玄関ドアーの前まで来て、チャイムのボタンを押そうとして足元の寿司桶に気付いた。

それには、吸い物椀が2個乗せてあった。

『あれ、客が来ていたんだ。誰も呼んだこと無いって言ってたが…』

新平は裏切られた気持ちで、そこから逃げるように、後すざりしてエレベーターに戻った。

これって嫉妬だろうか、新平自信も勝手なことをしていながら、飯塚お爺ちゃんを責められないのだが、気分としてはすっきりしなかった。

帰宅して洗濯機を回しながら簡単な掃除の後、約束してもいたので、午後になって飯塚お爺ちゃんに電話をかける。

『お、新平か。電話待ってたんだ。今、自宅だ。』

「ああ、遅くなりました。お元気でしたか。」

寿司桶のことを言おうとしている自分が恥ずかしくなって、平凡な挨拶をしてしまう。

『なに言ってんだ、昨日逢ったばかりだろ。』

「あ、そうでした。あっはははっ。ちょっと驚きましたね、戸畑さんの菜園で逢うなんて思いもしていなかったので。」

『そうだよな、ワシも驚いたよ。それで、昨晩は平助の家に泊まったのか。』

「え、ええ、どうしてですか。」

「いやな、そんな気がしていたんだ。」

「お爺ちゃんが考えているようなコトはありませんよ。」

『あっはははっ、自分で白状しているんじゃないかな。』

「いいえ、そんなこと有りません。画像取り込みソフトが上手く行かなかったんです。」

『ムキになるなよ、なんかあったように思ってしまうだろ。』

「そうですね、はははっ。」

言われて新平自信、何をムキになっているのかと笑うしかなかった。

『それで、今日はどうしている。』

「お爺ちゃん、ご免なさい。また今度ってことで、今日は失礼します。」

『そうか、残念だな。ワシも自宅で片付け物もあるので、それじゃ都合が良い日にまた電話してくれ。』

「ご免なさい。それでは、又電話します。」

『うん、待っているからな。きっとだぞ。新平、愛してる。』

「お、お爺ちゃん。なんてコトを、私も愛しています。」

何となく言った言葉に虚しさを感じてしまった。それでも無理に飯塚お爺ちゃんが、すぐに逢いたいと言わなかったことに安堵した。

鉄砲こと飯塚は、新平と別れた家庭菜園の帰りにマンションに寄って過ごした昨夜の学者とのことを思い出して胸を熱くしていた。

長年、胸につかえていたことが解決したように思う。

これも上野新平という男の存在が大きかった。

飯塚にしては、これからの人生が楽しく変っていくだろうと上野新平に感謝をしていた。

(つづく)

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(本作品は源次郎さんのブログ「お爺ちゃん達のときめき物語」(http://sinpei53.at.webry.info/)に掲載されたものを、源次郎さんのご了解を得て、転載させて頂いたものです。)

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