上野新平シリーズ(第72話):海釣り公園のお爺ちゃん(8・完) By源次郎


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上野新平(53)は、眠れない夜が続いた。体調とか仕事上の悩みでなく、最近知り合った田川お爺ちゃんと、臼杵お爺ちゃんのことだ。

どちらも、相前後して知り合った可愛いお爺ちゃんだが、その二人が40年も前の友達ではなかったかと言う疑問が段々と真実味を帯びてきていることだった。

そんな出来過ぎた話は無いはずだけど、二人の思い出話を聞いていると共通することが見え隠れしてくることだった。

しかし、臼杵お爺ちゃんは、海難事故で、その漁船に乗っていた友達が亡くなり、合同葬儀に臨席し、祭られた遺影の写真まで確認したと言っている。

臼杵お爺ちゃんは、男色の性癖を40年も封印して家業の惣菜屋を営んで来ていた。

その為もあって、過去の思いでも、男色の友達が居たと告白しただけで、それ以上は話してくれなかった。

また、そうした過去のことを色々聞き出すことは、今の新平と臼杵お爺ちゃんとの間では、関係無いこともあったし、詮索しているようで気分を悪くされたくもなかった。

もし万が一にでも田川お爺ちゃんと臼杵お爺ちゃんが昔の友達であったのならば、再会させてあげたい。

臼杵お爺ちゃんが言っている友達だった人が田川お爺ちゃんだったら、新平が逢ったお爺ちゃんは亡霊だったのだろうか。

岬の田川お爺ちゃんの自宅でのこと、ボートのキャビンで絡んだこと、また深夜に長い電話で話したことなど、これら全てが亡霊を相手にやっていたとは思えない。

幾らなんでも、リアル過ぎる亡霊だ。

やはり人違いであって欲しい。

それでも、何らかの行き違いで、またどちらかの記憶が曖昧なところがあって勘違いしているのかもしれない。

そうしたことで、二人の話がかみ合わないのかもしれない。

もし、そうであったのなら、二人を逢わせてやりたいとの、新平のお節介な虫が騒ぐ。

とにかく、田川お爺ちゃんの言葉を、もう少し聞いてみたかった。

しかし田川お爺ちゃんはボートでのデートをキャンセルして以来、電話が掛かって来ない。

やはり入院でもしたのだろうか。あの時の電話には確かに病院の待合室の案内が流れていたように思う。

岬のホテル現場での工程会議に来ていたので帰りに田川お爺ちゃんの自宅に寄ってみることにした。

一月余りしか経っていないのに、あの綺麗に手入れされた庭も花畑も、吃驚するほどの様変わりであった。

庭には雑草が伸び放題で、花畑は背高泡立草(セイタカアワダチソウ)が我が物顔に密生して伸びてしまっている。

バケツや竹ザルが風に飛ばされ庭に散乱している。まるで『お化け屋敷』のようだ。

どうしたことだろう、ここに来たのは亡霊と会っていたのだろうか。

背筋が震える思いで立ちすくんでしまった。玄関まで行ってチャイムのボタンを押してみたが、居間の方で電池切れだろうか弱弱しくチャイムがなっている。

期待していたが田川お爺ちゃんの家は無人だった。

諦めて車に戻りかけたところに、坂道を登ってくる人影が見える。

しばらく待って、田川お爺ちゃんの消息を聞いてみることにする。

「田川さんに御用だろうか。」

坂道を登って来た新平と同じ歳格好の男が、足先から頭の上まで舐めるようにジロジロ見ながら聞いてくる。

「こんにちは、一月ほど前に給湯ボイラーの修理に来ていましたので、その後の調子を聞いてみようかと立ち寄りましたがお留守のようですね。」

「ああ、あの時の・・・。」

「え、以前、私が来たのをご存知でしたか。」

「ああ、あのぉ、田川のおっちゃんから聞いていた。」

男は、新平の言葉に慌てたようであった。

この男が、聞いていた前原さんの息子だろう、ホテルのオーナーに告げ口した男だと思った。

しかし、新平が、この男を知っている事は、田川お爺ちゃんとの関係を知られそうだったので黙っていた。

「そうでしたか、それで田川さんは、今はお住まいじゃ無いようですがご存知でしょうか。」

「ああ、オバちゃんが倒れ、おっちゃんは付き添いしているから帰って来ていないよ。」

「そうでしたか、それは大変でしょう。名刺だけ入れて帰りますが、お会いになったら宜しくお伝え下さい。」

「ああ、言っとく。」

会話中も顔を合わせて来ないし、愛想の無い男の言葉で、奥さんが入院している病院の名前くらいを聞きたかったが、立ち入り過ぎにも思われそうだったので車に乗り込んで帰って来た。

海釣り公園の近くまで走って来た所で携帯電話の呼び出し音が鳴ったが、この辺りは電波状態が悪いところなので、数回呼び出し音の後切れてしまった。

峠まで来た所で、再び携帯電話が鳴り出した。車を左側に寄せ、サイドブレーキを引いて、作業服のポケットから携帯電話を取り出して受信ボタンを押す。

電話は、待ちわびていた田川お爺ちゃんからだった。

前原さんの息子から連絡があったと言って掛けて来ていた。

奥さんが倒れて入院したこと、リハビリを兼ねてO市の病院に転院したこと、奥さんのご両親も、近くの老人保健施設に入院させたことなどを聞いていた。

「それは大変でしたね。それでお爺ちゃんは、ずっと付き添いですか。」

「いや、毎日は出来ないが、病院の近くに昔の漁労長が経営している安アパートに一人で仮住まいして、ここから一日おきに付き添いに行っている。」

「奥さんの快復はどうなのですか。」

「ああ、目に見えて快復しているようでは無いが、顔色は良くなったようだ。それで最近オレもやっと落ち着いた。それより新平、ちょっと逢えないかな。」

「私の方は何時だって逢えますよ。お爺ちゃん、どうして連絡してくれなかったのですか。」

「ああ、ドタキャンした弱みがあってな、それに、一ヶ月くらいは、転院させたり、島から両親を説得して連れ出したりで大変だった。」

「はっはっはっ、弱みだ何て、仕方ないことだったでしょう。でも奥さんのご両親は説得が大変だったでしょう。」

「そうなんだ、まだらボケでな、正気になったら島から出て行かないって頑張るんでな。クタクタになった。でも新平に怨まれていなかったと知って安心した、有難う。」

「お爺ちゃん、怨むだなんて、そんなコトは無いでしょう。怒りますよ。様子が判らないまま毎日連絡待っていたんですから。」

平謝りの田川お爺ちゃんに、近じか逢う約束して電話を切った。

土曜日の朝、ゆっくり朝寝坊して朝食と昼食を兼ねた食事をした後、ショッピングセンターのチラシを食卓横の床に広げて眺めていた。

どうして、こんなにでかいチラシなんだろう。読みにくくってしょうがない。

おまけに商品の写真と値段ばかりが大写しで、内容説明の文字が小さ過ぎる。

そろそろ老眼鏡が要るようになったのだろうか、ついつい文字から顔を遠ざけながら読んでいるのに気付き苦笑する。

そんな時、裏の垣根の扉が開いたようだ。期待していた善吉お爺ちゃんがやってくるのだろう。

『ぶっ、ぶっ、ぶっぶぅ』

相変わらず行儀が悪いお爺ちゃんだ。歩きながらオナラしている。

台所横の勝手口まで、そんなに時間は掛からないはずなんだが、お爺ちゃんがドアーを開ける気配がない。

何しているんだろう。勝手口のガラス窓から、新平が起きているかと、つま足立って覗いているのだろうか。

『カチャ』

微かだが電子錠が外れた音がした。それと同時に冷たい風が吹き込んでくる。ドアーが開けられたのだろう

お爺ちゃんが、こっそり忍び込んで入って来たのは見え見えだが、気付かない振りをしてみよう。

『ポトッ』

あれ、今度は何の音だろう。多分、サンダルが足から離れずに、足を少し上げてから落ちたのだろうか。ちょっと焦っているようだ。

数歩歩いて立ち止まった。

新平は、顔はチラシにむけたままで、上目使いで居間の壁に置いているサイドボードを見てみた。

お爺ちゃんは気付かないだろうが、しっかりサイドボードのガラス窓に写っている。

『くっ、くっ、くっく…』

横向きで腰を曲げ、口を両手で押さえて笑いを噛み殺している。

気付かれずに入って来られたと、一人で喜んでいるようだ。

又数歩近ずいて立ち止まった。新平を驚かせる心算だろうが、お爺ちゃんが喜ぶのだったら、それなら合わせてオーバーに驚いてみせよう。

『コトン』

ん? 予期しない音だ。

テーブルの上からだったようだ、転んでいた食卓塩の小瓶を立てたのかもしれない。

そんなコトは、後でやれば良いのに。そう思って神経を背後の気配に集中していた。

しかし新平の我慢もそこまでだった。

「あっはっはっ、コラッ、泥棒。」

我慢出来ずに、振り向いてお爺ちゃんを見る。

「なんだ、気付いていたのか。面白く無い。」

新平を驚かせようと企んでいたのが気付かれてしまい、仏頂面のお爺ちゃんが、食卓の椅子にどっかり座り込んだ。

「だって、食卓塩を触ったでしょう。あの音で判りましたよ。」

「そうか、倒れていたので、つい手を出してしまった。あれが失敗だったか。残念だったな、新平が心臓麻痺で、ぶっ倒れるくらい驚かしてやろうとおもっていたんだが。」

折り込み広告を片付けて、お爺ちゃんの背後に近付いて背中を抱き込む。

何か変だと思ったらアンダーシャツを前後ろ逆に着ている。

「お爺ちゃん、おはよう。」

「ああ、おはよう。」

相変わらず仏頂面の善吉お爺ちゃんだ。

「何だ、子供みたいに膨れていないで、機嫌直してよ。奥さんはお出掛けですか。」

「うん、近所のババゴン仲間六人で、デパートのバーゲンに行った。それもタクシー2台に分乗してだ。」

「あっはっはっ、バーゲンで安売り買っても車代で高く付くでしょうに。」

「あいつらには、そんな計算は出来ないようだぞ。安く買えれば満足するようだ。何て言ってたかな…、そうそう、ストレス解消とか言ってた。」

「それは、大事なことでしょう。」

「あいつらにストレスなんて有る訳無いんだがな。」

新平がお爺ちゃんの耳たぶを咬みに行く。

「う、こそばゆい・・・、く、くく…。」

立ち上がって逃げようとする善吉お爺ちゃんを捕まえて正面から抱きつきに行く。

唇を近づけていくと、観念したように腕をまわして抱きつき迎えてくれた。

「朝っぱらからこんなことして恥ずかしいな。」

お爺ちゃんが少しテレながらも、新平の舌の裏まで舌を巻き込んで吸い付いてくる。

「あ、ああ、朝でも夜でも愛には関係無いですからね。」

善吉お爺ちゃんの股間に手を持って行き、モッコリしたものを掴んでやる。

「うん、久し振りだったな。お、おお。」

「ご免なさい、淋しい思いさせてしまって。」

「そんなコトは無いけど、新平の帰宅が毎晩遅いから身体壊さないかと心配していたんだ。」

「そう、有難う。仕事も少し暇になったから、又ゆっくり出来そうです。」

「そうか、でも仕事が暇になるのも心配だな。久し振りにアレ見せてくれ。」

「あれって…。ああ、私も久し振りですから一緒に見ましょう。先週新しいのも買っていましたから。」

二人で寝室に入り、阿吽(あうん)の呼吸で、服を脱ぎ捨て準備万端になってDVDを再生させる。

「お、おお、凄いな、こいつのデカイぞ。でもウケみたいだぞ。」

「ああ、おねぇのデカマラとか聞きますから。皆がそうでは無いでしょうが、吃驚するようなのが居ますね。」

「こんなの入れられたら、壊れそうだ。死にそうだぞ。」

「あはははっ、お爺ちゃんも正直な感想を言って来ますね。」

寝室では、新平達とDVDの絡みが平行して進められて行った。

「新平。どうしたんだ。今日は、やけにしつっこい様だったが。」

「ご無沙汰していたから、溜まっていたんです。」

脱衣場で、お爺ちゃんがアンダーシャツを着る時、それとなく前後ろに着ていないか見ていたが、やはり逆に着ようとしていた。

それとなく手を貸してシャツを着せなおしてやったのだが、それには気付かなかったようで安心する。

シャワー浴びた後、午後は善吉お爺ちゃんを連れて郊外の大型ショッピングセンターに出賭ける。

買い物途中で、田川お爺ちゃんから電話が入った。

善吉お爺ちゃんには会社からだと言って、一人で表の駐車場に出て掛けなおす。

「お待たせしました。今ショッピングセンターに買い物に来ていました。」

「そうか、俺も食料の買出しに行かないと冷蔵庫が空になっていたな、自宅だと小まめに料理もするんだが落ち着かなくってな。」

「そうですよね。ところで、前から聞きたかったのですが、色々あって半年振りにだったか、『ひだまつ』に行ったって聞きましたが、あれは何だったのですか。」

「どうして今頃そんな話なんだ。」

「その言葉が、どうしてだか気になっていました。」

「ふぅーん、あれは大したことじゃないんだが…。」

「海難事故でなんて言うんじゃないでしょうね。」

「こら、新平。どうしてそんな40年も前のこと知っているんだ。」

「え、それじゃ、お爺ちゃんは海難事故で一時行方不明だったのですか。」

「うん、帰国した時は葬儀も済んでた。戸籍の抹消はしてなかったがな。あっはっはっ。」

新平の心臓が高鳴りして足が立っておれないくらい震えだした。

「あ、お爺ちゃん。また電話します。買い物途中なんです。」

「何を慌てているんだ。誰かと一緒なのか。」

「はい、帰宅してから・・・、すみません。」

それだけ言って電話を切ってしまった。

『40年前の海難事故、帰国したら葬儀が済まされていた』

新平の顔が紅潮し、胸が高鳴りしている。

危惧していたことが、つながってしまった。どういう訳だ。

喜んで良いものか、悲しむ事なのか。しかし、新平には田川お爺ちゃんと、臼杵お爺ちゃんが自然な形で再会出来ないかと頭を抱え数日悩んでしまった。

(16)

田川萬蔵(たがわまんぞう・75)は、落ち着かない表情で、上野新平が予約していたビジネスホテルのツインの部屋にチェックインしていた。

『ウスさん』かもしれない人を向かわせたから逢ってくれと言っていたが、見つけてくれたのだろうか。

しかし、『かもしれない』って何だ、もし違っていたら、どうしろと言うんだろう。

それに、部屋に入ったら、六尺褌でガウンだけ着けて待っていてくれともいったが、人違いの爺さんに、こんな姿見られたくない。

でも、新平が、そこまで言うんだから確実なんだろう。

本当にウスが見つかったのか、もうすぐ、あの40年前のウスに逢えるのだろうか。

高鳴る気持ちを落ち着かせなければ、そう思いながらも不安いっぱいで、風呂の湯を張ったり、部屋の中をウロウロ歩き回るしかなかった。

一方、臼杵仙市(うすきせんいち・73)は、上野新平が惣菜屋の定休日前に来てくれるとばかり思っていたが、ビジネスホテルに呼び出されてしまった。

どう言う事だろうか、上野さんのことだ、私に気を使ってビジネスホテルでゆっくりさせたいのだろう。

気がかりなのは、電話で言ってたことだ。

「もし、名前も聞かなかった亡くなった友達に逢えるとしたら、何と声掛けますか。」

「ははっ、亡霊とですか。だったら般若心経(はんにゃしんぎょう)でもとなえてやらないと成仏しないでしょうね。」

「般若心経ですか。それも良いかも。」

何んとも不自然な会話だった。『もし逢えたら』だなんて、上野さんのジョークだろうが付いて行けない気もする。

指定された『303号室』と書かれたドアーの前に立って深呼吸してみたが、何となく胸騒ぎがする。

上野さんは、先にチェックインしていたのだろう。フロントを通らずに真っ直ぐ部屋に来てくれと言っていた。

田川は、今か今かと廊下の足音が部屋の前で停まるのを待っていたが、何人かが部屋の前を通り過ぎて行った。

『コツ、コツ』

何人目かの足音が止まり、遠慮深げにドアーをノックする音がした。

田川は、どうせ見せるのならガウン無しでも良いだろうと、ベットに放り投げ六尺褌だけの裸でドアーに近付き身体を隠すようにし、顔だけ出して、そっと開けて廊下を覗いて見た。

「あっ…。失礼しました、部屋を間違いました。」

田川が見た廊下の男は、紛れも無く逢いたかったウスの年取った顔だった。

二、三歩後すざりしてドアーを閉め様としている手を掴み部屋の中に引っ張り込んだ。

「あ、何をするんですか・・・、手を離してください。」

振り払おうとするウスの腕を掴みなおして顔を見つめる。

臼杵は、六尺褌一枚の裸の男の部屋を開けてしまい、その上、腕を掴まれて引きずりこまれてしまって、すっかり動転し俯いていた。

それでも、臼杵の目は田川の六尺褌のモッコリを見つめていた。

「ウス、俺だ。逢いたかったんだ。元気だったのか。」

自分の40年も前のニックネームを知っているコノ男は誰なんだろう。しみじみと腕を掴んでいる男の顔を見直して見た。

「あっ、タ…ケ?」

自動ロックの分厚い鉄のドアーが、音を立てて閉った時、忘れていた田川の名前が唐突に思い出して口に出て来た。

しかし、あの男は死んだはずだ、でもココに居るのは紛れも無く、昔、愛したあの時のタケに似ている。

「そうだ憶えてくれていたのか、俺は紛れも無く、あの時のタケだ。」

「ウソだろ? でも…、あ、タケだ。」

臼杵が田川を確認出来たのは、右眉の中にある米粒ほどの黒子(ほくろ)だった。

田川は、臼杵を引き寄せ、壁に押し付け、見詰め合った。

二人は、顔をくっ付きそうに近付け、ボロボロと流れ出る涙を拭きもせず霞んで見えなくなる相手を見つめていた。

「ウス。」「タケ。」

それ以上の言葉は要らなかった。抱き合った二人は、どちらからとも無く唇を近付け貪欲なまで顔や舌を舐めまわし、再会出来た喜びを伝え合った。

田川は、臼杵の腰を自分の腰に密着させ、互いの股間の物は、既にはち切れんばかりに脹らんでいた。

どの位の時間が過ぎただろう。二人の抱擁は、逢えなかった40年の歳月を縮めるために溢れ出る涙で、一つ、二つ、と流していくようだった。

落ち着きを取り戻した二人は、田川が脱ぎ捨てていたガウンをソファーに投げ、ベットの掛け毛布を剥いで抱き合ったまま倒れこんだ。

「ウス、落ち着け。先ずは服を脱いでからだ。」

「そうだったな、タケ。あの時のように脱がせてくれ。」

「ウス。相変わらず甘えた性格が直っていないんだな。」

田川は、そう言いながらも嬉しそうに愛しい臼杵の服を一枚づつ脱がせ裸にしていき、自分も六尺褌を脱ぎ捨てた。

「あ、ああ、タケ。」

先に、田川が臼杵の股間に顔を埋めチンポを咥え込んだ。

黙々と、尺八している田川の薄くなった後頭部を上から眺めながら、臼杵は40年前の若かった身体に戻って行くのを感じていた。

田川の顔を両手で挟んで起き上がらせ、唇を付けに行く。

「タケ。生きていてくれたのか。」

「うん、ウスだって元気で良かったな。」

「ああ、元気で居れたのもタケとの熱い思い出があったからだ。」

「そうか、俺も生きて帰られたのは、潜在的にウスとの思い出があったからだろうな。」

「タケ。泣いているのか。」

「お前だって泣いているじゃないか。」

「ああ、二人を引き合わせてくれた上野さんに感謝しながらだ。」

「そうだな、新平には感謝してもしきれないよな。」

「うん、こんな偶然な出逢いもあるんだな。上野さんには、申し訳無かったが私から誘惑したんだ。」

「そうだったか。俺も気になっていて、あいつの優しさに負けて誘惑したんだったな。」

二人の絡みは、泣きじゃくりながら始まった。

「どうしたんだウス、元気有り過ぎじゃないか。」

ギンギンに硬く反り上がる臼杵のチンポに驚いてしまう。

「ああ、タケ。こうしていると過ぎた歳月を忘れてしまう。」

臼杵は、田川の身体を起こし、シックスナインになり、硬さは以前ほどでは無かったが、勃起して先走りが溢れる竿に齧り(かぶり)付いた

ふてぶてしく垂れ下がった金玉を舐めまわし咥えていく。

「お、おお、ウス。」

田川を上向きに寝せ股間に身体を入れ、両足を持ち上げ、膝を抱きこむように持たせる。

双丘に顔を入れ、菊座を舐めに行く。舌先で菊門に入れていくと、田川は泣き声を上げだした。

「あ、ああ、確かにウスだ、これって夢ではないだろうな、あ、ああ、ウス。逢いたかった。」

泣きじゃくりながら、田川はウスの名前を何度も何度も声に出して臼杵のテクニックに酔いしれていた。

「あ、ウス。これを使ってくれ。」

田川は、枕元に準備していたラブオイルのチューブを菊座に指を入れようとしている臼杵に渡した。

「何だこれは、軟膏の代わりか。ヌルヌルして滑りが良さそうだな。」

「うん、あの頃は軟膏しか無かったからな。唾だけで済ませたことも有ったが、ちょっと痛かったな。」

臼杵は、丁寧に菊座周囲から菊門へと塗っていき、ジワジワと中指を挿入していった。

「あ、ああ、ウス。最高だ、相変わらず優しいんだな。」

指を、二本、三本と増やして肛門括約筋を馴染ませていく。

「タケのケツは、若い時と同じだな。プヨプヨとしてて赤ん坊のケツみたいに柔らかい。」

「そうか、忘れていなかったか。そろそろ入れてくれ。」

臼杵は、田川の腰を引き寄せ、自分のチンポを数回擦って勃起を強め、田川の菊門に亀頭を押し当てる。

「あ、ああ、ウスの竿が…、あ、ああ、そのままの方向で、あ、ああ。」

「大丈夫か、痛かったら教えるんだぞ。」

「あ、ああ、大丈夫だ。あ、ああ、ウス、ウス。」

竿の根元までを、ゆっくり挿入し、何度か出し入れして田川の前立腺を捜す。

「う、うう、そこだ、そこを、あ、ああ。」

『水を得た魚』と言うのだろうか、臼杵は上野新平との絡みでは味わえなかった、田川の直腸の感触を40年前を思い出しながら抽送していった。

それでも若い頃の体位の全ては出来なかったが、お互いが満足出来る絡みを進めていった。

「あ、ああ、ウス。疲れただろう。風呂に入ろうか。」

「そうだな、夜は長いからな。」

「あ、ウス。抜くんじゃない。そのままだ。」

「抜くなって・・・。」

「うん、駅弁売りで行こう。」

「何だ、タケも昔と同じで甘えん坊だな。」

ベットから降り、田川に両手で肩に抱きつかれ、合体したまま尻を抱えてやって歩き出す。

「タケ。上下させるな、射ってしまうだろ。持続は出来るが、射ったら終わりなんだぞ。」

「うん、判った。」

「おい、唇を離せ。前が見えないだろ。」

何とか風呂場に行き、合体したままで浴槽に浸かる。

「ウス。」

「何だタケ。」

「うん、呼んで見ただけだ。」

二人の絡みは深夜まで、いや明け方まで続いたのかもしれなかった。

しかし、新平は、こうした二人のホテルでの出遭いを聞いても見たかったが、聞く機会も無かった。

翌日、二人で新平に感謝の電話が有ったが、新平としては、一度に二人のお爺ちゃんがいなくなったようで淋しく複雑な気持ちだった。

数日後の出勤時に、駅前の路地を覗いた時、惣菜屋の前を箒で掃いている田川お爺ちゃんの姿を見かけたが声は掛けなかった。

仮住まいのアパートを引き払って居候しているのではないかと思われる。

臼杵お爺ちゃんの所からだと田川お爺ちゃんの奥さんが入院している病院も近いから、そこから付き添いに行っているのだろう。

奥さんが退院するまでの楽しい同棲生活だろうが、でも別れが辛いだろうと思う。

それもまた、たまに逢えるという楽しい時間が出来ることだろう。

二人の新しい生活に嫉妬もするが、ここは温かく見守ってあげなければならない。あのお爺ちゃん達の赤い糸が何時までも繋がっていて欲しい。

「新平。何をぼぉーっとしているんだ。」

日曜日の午後、障子の張替えをしてくれている善吉お爺ちゃんに頭をハケで小突かれた。

「あ、吃驚した。痛いじゃないですか。」

「さっきから、ハケの糊がダラダラ垂れ下がっているだろう。」

「あ、本当だ。あれあれ、廊下がベトベトになっちゃってる。」

「どうしたんだ。」

「あ、いや・・・、ちょっと仕事の事を思い出していました。」

「うまく行っていないのか。」

心配そうにお爺ちゃんが顔を覗きこんでくる。

「そうじゃ無いんですが・・・。」

「だったら良いが、新平。歩きながらとか、現場などで、そんな考え事するんじゃないぞ。」

「うん、有難う。早く済ませて風呂に入りましょう。」

「また、そんなこと考えているのか。助平だな。」

「そんな事って、お爺ちゃん。そんな事嫌いでしたか。」

「あっはっはっ、嫌いではないがな。」

なんとか、客間二室の障子8枚が張り終えた。

善吉お爺ちゃんと浴槽に入っているが、田川お爺ちゃんと臼杵お爺ちゃんの幸せそうな顔が思い浮かんでくる。

「新平。」

「あ、はいはい。いま背中流してあげます。」

「それは後で良いんだが、変だな。さっきから、ぼぉーっとしたり、ニヤニヤしているぞ。何考えているんだ。」

「うん、別に・・・。こうしてお爺ちゃんと風呂に入れて幸せだなぁって思っていました。」

「ウソだ。」

怒ったようなお爺ちゃんの声だが、顔はニコニコ笑っている。

善吉お爺ちゃんには、やっぱり隠せない。でも、この事は言えない。

田川お爺ちゃん、臼杵お爺ちゃん達が、いつまでも健康で幸せであって欲しいと心から願った。

(完)

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