上野新平シリーズ(第75話):地方訛りのお爺ちゃん(3)By源次郎


(5)

立花(仮称)老人は、上野新平に出会うひと月ほど前、ひたすら歩いていた。

何処から歩き始めたのか、また何処へ行こうとしているのか分らなかったが、ただただ黙々と歩いていた。

山を切り開いて作られたのだろうか、まだ舗装もされていない道路だ。

道路の左右は、深めの側溝が設けてある。そこからなだらかな坂がせり上がっていて雑木林になっていて見渡せるような場所が無い。

歩きつかれて道路端で座り込んだり、土手に寝転がって何をしようとしているのか考えてみていた。

しかし、その内、自分は誰なんだろうと思うようになっていた。

人間である自覚は有ったが、これまで生きてきた思い出が無い。

真っ白いシーツが風にゆっくり揺れているような、考えていること自体が不思議な気がして来る。

あたり一面が乳白色の入道雲の中でもがいているようでもある。

先程までズボンの膝下が濡れていて歩きづらかったが乾いてしまったようだ。

着ている上着は背広だが、泥だらけでそれも乾き、手で撫でるとボロボロ落ちていく。

腹が減ってきたが、それより何か飲みたい。道端の叢にギシギシ草が生えている。

食べられそうだったので口に入れてみたが酸っぱくて吐き出してしまった。

車も何台か通ったが、それを止めて乗せてもらおうと思うことも無かった。

ただ漠然と通過する車を見ていた。それに乗っても自分が何処に向かっているのか分らない状態だったからだ。

歩きつかれ腹も減っている。それは我慢できたが喉がヒリヒリと痛む。

口に唾液を溜めて飲み込んでいたが、その唾液も出なくなった。口がカラカラに渇き呼吸も困難になって来る。

道端の雑草を毟り(むしり)取って口に咥えてみるが青臭く苦い味だけで口の渇きを止められる物ではない。

身体が熱くなり喉を掻き毟る(むしる)。血が出ているのだろうか、首筋がひんやりとしてそれが胸のほうに流れているようだ。

意識が朦朧(もうろう)となり、側溝に座り込んでしまった。

しかし、周囲も段々と暗く成り出したようだが、このままここで眠り込む訳にも行かない。

喉の渇きは相変わらずだが空腹だったことは何時しか忘れていた。

ただただ水が飲みたい。

何度か遠くで水が流れる音が聞こえたようだが、それは雑木林の風の音だった。

目の前に湖が現れ瞬きすると消えていった。

完全に幻覚を見始めている。

「何だ、今どき熊だろうか、それとも猪だろうか。

この辺りは、つい最近まで熊や猪の生活圏だったんだから。

車にはねられたのだろう、大きな動物だな。」

糟屋志免治(かすやしめじ・45)は保冷車の運転席から前方左の側溝に黒い塊を見つけ呟いていた。

近付いて急に起き上がって横断されたら、あんな熊でもバンパーが損傷してしまう、そうなったら手取りの給料から修理代を引かれるのだ。

「係わったらバカを見るだけだ。」

クラクションで気が付いてくれたら逃げ出すだろう。

そう思って数回派手なクラクションを鳴らしてみたが気が付いた風でもない。

用心して徐行する。

近付いてみると道路側溝に座り込み両腕を道路に投げ出す格好でうつ伏せになっている老人が倒れていた。

「こんなところに人間が居る。」

何処から来て何処に行こうとしていたのだろうか、こんな山奥を軽装で歩いて通る人間なんて考えられない。

興味本位でもあったが、保冷車を停車させ助手席に身体を寄せ、ウインドウガラスを下げ身を乗り出し覗いてみる。

「あれ、動いてる。死んでるかと思ったが、道に迷って山奥に入り込んだのだろうか。」

側溝にうずくまっている人間を不思議に思いながらもタバコに火を点けて眺めていた。

白髪頭の老人だ、認知症で徘徊中にでも行き倒れたのだろうか。

それにしては人家から離れ過ぎている。

糟屋は、小便もしたかったので、運転席から降りて近付いてみる。

「おい、オヤジさん。こんなところで寝ていたんじゃ熊か猪にやられるぞ。陽も暮れて寒いだろうに。具合でも悪いのか。」

小便しようとズボンのチャックに指を掛けながら、少し離れた足元の老人に声を掛けてみた。

老人は、誰かに声を掛けられたのに気付き、顔を上げ、口を開け、何か飲ませてくれと手振りで頼んでいるようだ。

「様子が変だな、オヤジさん、どうしたんだ。」

糟屋は老人に近付いて身体に触り顔を見て驚いた。

「なんだ、この熱い体温は。それに顔色が青ざめている。どこか具合でも悪いのか。」

死人のような目つきの老人を抱き起こそうとしていた腕を思わず離してしまった。

老人は、そのまま道路に落とされ、うつ伏せになって動かなくなった。

えらいところで停車してしまったと反省する。

こんな爺さんに係わってる暇など無いんだ。

「これは確かではないが脱水症状とかの状態だ。」

何かの本だったか、テレビで知った知識だったか忘れたが、こうした状態の身体を応急処置として介抱しているのを思い出した。

取り敢えず水を飲ませたかったが、あいにく山道の側溝には水が流れていない。

近くに小川なども記憶に無い。

どうしたものかと老人を再び抱き起こしてみる。

呼吸も弱弱しく苦しそうだ。見なかったことにして立ち去った方が良いようだ。

ヘタに係わって警察で取り調べられたりしたら仕事に差し障る。

保冷車の荷物は決められた時間までに受取人に引き渡さなければ契約違反になり、タダ働きしたことになってしまうことがある。

糟屋は、こんなところで行き倒れていた老人を怨んだ。

しかし、腕の中で虫の息で抱かれ生死を彷徨(さまよ)っている老人の悲しそうな顔を見ていると、このまま放置して逃げ出すことも出来ない。

(このままだと何れ死んでしまうのだろうな)

漠然と死を前にした老人の顔を眺めていた。

次の瞬間、糟屋は自分が何をしているのか一瞬分らなくなっていた。

それは、老人の顔を自分の膝に抱き抱え、唇を付けに行き口中に唾液を溜めて舌で押し出すようにして飲ませていたのだ。

老人は、暫らくは気付かなかったようだが湿り気を感じてきたのだろうか、舌を巻き込むようにしてゴクゴクと糟屋の唾液を飲み込み始めた。

それも長くは出来なかった。

糟屋の口からは唾液が出なくなってしまったからだ。

それでも老人は、糟屋の舌を舐めに来る。喉の渇きを和らげることが出来なかったようだ、吸い付いてくる力は最初の頃より力強く思えた。

糟屋は、その時又しても不可解な行動を起こそうとしていた。

近くに自生していたツワブキの葉をむしり輪に丸め、立ち上がってズボンのチャックを下げチンポを引っ張り出し小便を注ぎ入れた。

それを老人に飲ませようとしたが巧く行かない。

糟屋はツワブキの葉に注いだ自分の小便を口に含んで老人に口移しで飲ませた。

二回ほど、そうして飲ませていたが、堪えていた小便がチロチロ出始め、トランクスを濡らしている。

糟屋は腹を決めて老人の口に直接チンポを差し出した。

老人も、それを知って両手で拝むようにしてチンポを掴み勢い良く排泄される糟屋の小便を飲みだした。

時々我慢し小便を止め、老人が飲み易いように調節してやろうとしたが、逆効果だった。

一旦止めた小便を次に出そうとすると勢いが付いてコントロール出来ない。

老人の口から溢れた小便がダラダラ出てしまう。

おまけに勢いついた小便が飛び散って、老人の顔が小便だらけになってしまった。

それでも糟屋のチンポを口から離そうとしない。

暫らくチンポを舐めさせていたが、小便は既に出てしまっている。

「あ、ああ、オヤジさん。もう出ないから離してくれ。な、なな。」

老人は、糟屋の顔をチラッと見上げたが、口からチンポを離してくれない。

「な、なな、オヤジさん。もう出ないから離してくれ。あ、ああ、それ以上舐められたら・・・、あ、ああ、ミルクまで飲もうってんのか・・・。」

老人は、鈴口に舌を尖らせて舐め回すのを止めようとしない。

「わ、わかったから取り敢えず車に乗ってくれ。ここからだと20キロ先にコンビニがある街に入るから、そこで飲料水を買ってやる。それまで我慢してくれ。」

糟屋は、老人の尻を押し上げ、なんとか助手席に乗り込ませてやる。

グッタリした身体を座席に座らせてみたがシートベルトが胸を締め付けて苦しそうだ。

運転席後部の仮眠ベットに移し横に寝せ、ベルトで締めて出発する。

「着いたら起こしてやるから寝ていて良いからな。」

「すみません、有難う御座います。助かります。」

「お、喋られるようになったか、それは良かった。これも何かの縁だ、しばらく面倒見てやるから安心していていいからな。」

糟屋は、人間一人を助けてやったとの思いで、なんとなく嬉しかった。

いつしか、自分に出来る範囲でこの老人の面倒を見てやりたくなっていた。

糟屋は、高校を卒業した後、就職先が無くアルバイトしながら小遣い銭稼ぎをしていた。

九人兄弟の末っ子と言う事もあって子供の頃から両親の愛情を感じたことは無かった。

大勢の家族の中でもそうであったように、学校でも目立たない大人しい性格だった。

半年ほどそうしていたが、家出同然に県外に出てみた。

しかし、相変わらず定職に着くことは出来なかった。

成人式の日に、故郷に戻り同級生の家を泊まり歩いていたが、蓄えていた僅かな貯金も無くなり、勧められるままに長距離トラックの運転手として就職する。

そこでは思ったより収入があったが、遊びまわる時間がなくなってしまった。

何度と無く止めようと思ったが、次の仕事のアテも無いし、惨めな無一文状態で友達も良い顔してくれないだろう。

遊び癖が付いていた糟屋としては辛い勤務だったが、幸いにも何時しか遊びまわることより収入が増えていくことに興味を持ち出していた。

五年余りで、配送センター近くの一軒家を購入し、センターに勤めていた女子社員と結婚も出来た。

しかし、勤務は相変わらずの忙しさで、一旦出勤すると半月や一ヶ月も家に帰られない状態での勤務が続いていた。

久し振りに帰宅出来ても、共働きの妻とはゆっくり夫婦生活をすることも少なかった。

二年ほど、そうした夫婦生活をしていたが、あまりにも突然崩れてしまった。

気が合って、時々家に呼んで酒を酌み交わしていた運転手仲間がいたが、その仲間の一人と一緒に駆け落ちされてしまった。

半年ほどは働く気も無く酒に溺れていたが、見かねた社長に一括されて目が覚めた。

それ以来、オンナ不信が今も引きずっているのか、適当な相手が居れば結婚したい気持ちはあるのだが、ずるずると二十年近くもヤモメ暮らしをしている。

社長が何度か見合い写真を見せてくれ、暫らく交際した女もいたが結婚までは踏み切れなかった。

社長に「男色」では無いかとの疑いも掛けられたが一笑した。

抜きたくなったら、行った先々でソープに行き延長してチップさえ払えば二回でも相手してくれたし、それでも満足しないときは別のソープに場所を変えて思う存分抜いていた。

「オヤジさん。ミネラルとスポーツドリンクを五本づつ買って来た。一度に飲んだら胃に負担掛けるだろうから時間を置いて飲んでくれ。」

仮眠ベットで寝ている老人を起こして、コンビニで買って来たボトルを差し出す。

老人は、ミネラルウォーターを一気に飲み干し、暫らく眠っていたためか血の気が注した顔でニッコリ笑ってくれた。

糟屋は、老人の顔を見て益々元気になるまで面倒見てやる気になっていた。

いつしか、愛情の欠片すら感じなかった親父の顔とダブらせて見ているようにも思えていた。

それは、憎しみとかではなく何故か愛おしさえ思えてくる不思議さだった。

「オヤジさん、名前聞いていなかったね。何処から来て何処へ行くつもりだったんだ。」

それに対して口篭る老人の悲しそうな顔を見て不思議に感じたが、記憶喪失者との考えは思いもつかなかった。

「何だ、言いたく無いのか。だったら良いが、どこかに連絡しておく必要は無いのか。」

それでも老人は黙り込んだままで聞こえていない風は無いようだが、次のボトルを開けさせてくれるのを心待ちしているようだ。

「しょうがないな、ゆっくり飲むんだぞ。」

糟屋が懇願するような老人の目に負けて、スポーツドリンクのキャップを開けてやる。

ゴクゴクと音を立てて、500ccボトルを一気に半分以上飲んでしまった。

一息ついたのか、ボトルのキャップを閉めて糟屋の方を向いてポツポツと喋り出した。

「兄さん、自分でも判らないのです。」

「分らないって・・・、何がだ。」

「名前です・・・。」

「え、名前って・・・、自分の名前が判らないってことか。そんな馬鹿な話があるか。冗談言ってる場合じゃないだろ。マジ怒るぞ。」

「すみません、本当に分らないんです。何処から来て、何処に行こうとしていたかも分らないんです。本当です。信じてください。」

「信じてって言われても、何処まで送ってやったらいいんだ。それも分らないって言うのか。」

「はい、すみません。分らないんです。」

「驚いたな、話には聞いたことがあるけど、記憶喪失ってことだろうか。」

「その喪失って何ですか。」

「俺は医者じゃないから判らないけど、事故で頭を強打したり、恐ろしい事件を目撃したり、自分でやったかで、それらから逃避したくなったりして一時的に記憶が失われるらしいがな。」

「そうですか、恐ろしい事件ですか・・・。」

「でもオヤジさんの洋服には返り血とかは付着していないようだし、殺人事件とかでは無さそうだな、あっはっはっ。」

「殺人・・・事件ですか。」

「そうは言っていないだろ。ましてそんな優しい目をしていて、人を殺せるような人には見えないから、そうした事は無いだろう安心しろ。」

「はい・・・。」


少し太めの輪っぱを抱いて
男度胸の転がし野郎
みやげは無事故でいいのよと
言ったあの娘(こ)の面影が・・・。

「これは山本譲二の唄だ。好きでな、いつも歌っているんだ。でも無事故でって言ってくれる相手は居ないんだがな、あっはっはっ。」

ご機嫌に鼻歌を歌っていた糟屋が思い出したように話し掛けて来た。

「良い歌ですね。声も良いし。」

「声か良いってか、有難う。そうだオヤジさん。これから30分位走った所に古い湯治場があるんだ、そこで湯に使って飯を食うんだが食欲はあるかな。」

「腹は減っていますが、何となく胃が重いので…。」

「そうか、それでは今夜はうどんくらいを食って、胃の機嫌が治ってからにした方が良いのかもしれないな。」

「はい、それにまだ水分が欲しいので。」

「何だそうだったのか、今度はミネラル飲んで見るか。一気に飲むんじゃないぞ。」

「はい、ボチボチ飲んでいます。」

「それに今夜は、湯治場の駐車場で仮眠する。おっと、スピード出さないと遅れるな。午後七時までに行かないと入れてくれないんだ。番台に煩い婆さんが居るんだ。あっはっはっ。」

(6)

「オヤジさん、死んでるんじゃ無いだろうな。朝湯に入って飯にするぞ。今日は飯が食えると良いがな。」

立花老人は、まだ暗い時間に起こされた。

昨夜は入浴後、うどんを食べさせてもらって、後部座席の仮眠ベットで毛布を掛けて寝せてもらった。

糟屋は、運転席のシートを倒して寝ていたようだが寒くなかったのだろうか。

(優しい人に出逢って助かった。)

眠い眼を擦りながら糟屋の後ろを歩いて温泉に入る。

昨夜は気が付かなかったが、駐車場には長距離トラックが十台ほどがいた。

長距離トラックの運転手達が仮眠していたのだろう。

「お、カッちゃん。お連れさんか。」

洗い場で身体を洗っている糟屋に運転手仲間らしいのが声を掛けてきた。

「ああ、親戚のオジキだ。俺、最近腰を痛めたので手伝ってもらっているんだ。」

洗髪しながら糟屋が立花老人のことを親戚の者と紹介している。

立花も、声を掛けた男の顔を見て軽く会釈した。

「なんだ、てっきりコレに目覚めて相方さんを見付けたのかと思ったぞ。」

男は、右手の親指を立てて嫌らしく笑っている。

「そんなんじゃ無い。アホか、俺は、アンタみたいな趣味は無いって言ってただろ。」

立花には、糟屋が返す返事の意味が判らないでもなかったが、なんとなく男同士の体の関係のことを話題にしているらしい事が想像出来た。

「あっはっはっ、分ってるって。カッちゃんは真面目だからな。」

男は、大笑いして脱衣場に戻って行ったが、その際、立花老人の顔を見ながら嫌らしくニヤリと意味ありげに見ていた。

「オヤジさん、出発だ。今日は600キロ程度の走行だ。途中で一休みして抜いて行こうと思っていたんだが、今日は我慢するから時間がある。具合が悪くなったら教えるんだぞ。」

「はい、大丈夫です。飯も食えたし、胃の具合も悪くないです。」

「それは良かったな。顔色も良くなったし、昨日はどうなるかと心配だったんだ。夜中も時々息しているか確認していたんだ。」

「すみません。助かりました、有難う御座います。それで・・・。」

「うん? 何だ。」

「あのぉ・・・、抜くって何のコトですか。」

「え、あ、ああ、抜くってことか。気にしなくって良いんだ。」

「分らない言葉が時々耳にするので気になっていたんです。」

「そんなコトは説明することじゃ無いんだ。男だったら分るだろ。貨物の引渡し場に夜のうちに到着して朝一番に引き渡すんだ。その晩は暇だからソープに行ったり飲みに行くんだ。」

「ソープって・・・。」

「ああ、オヤジさん達はトルコ風呂とか言っていたんだろ。」

「・・・・・。」

「おや、黙り込んでしまったな。若い頃でも思い出したんだろ。助平だな、あっはっはっ。」

「そんな・・・、話には聞いたようですが・・・。」

「序でに名前なんかも思い出したら良いんだがな。」

「そうなんですが、肝心なところを思いだせないもどかしさがあります。何かモヤモヤした感じで、思い出そうとすると頭痛がして来ます。」

「無理するんじゃ無いぞ。いずれ思い出す時が来るだろうから焦らずにな。」

「はい、有難う御座います。こうして走っていると思い出す景色でもあるのではないかと思っています。」

「そうだよな、俺は全国を走り回っているから暫らく付き合って手伝ってもらおうか。」

「はい、お願いします。体力はある筈ですから、兄さんは腰を痛めたとか言っていましたから、私が荷物の積み下ろしをさせてもらいます。その間に腰痛を治して下さい。」

「それは助かるな。腰の痛みは随分前からだったんだが、下手に告白するとスタッフから外されそうなので隠していたんだ。オヤジさん、頼むよ。」

「早速、明日の朝から手伝いします。」

「そんなに急がなくって良いんだ。先ずはオヤジさんの体力快復が先だからな。」

こうして、立花老人と糟屋の全国縦断の旅が始まった。

「兄さん・・・。」

「え、どうしたんだ。具合でも悪くなったか、もうちょっとでパーキングがあるから我慢できるか。」

「い、いいえ・・・。大丈夫です。」

「何か言いたかったんだろ。遠慮要らないから言ってみろよ。」

「兄さんは、せんずり掻かないんですか。」

「わ、何だ唐突に。さっきから黙り込んでいると思ったら、そんなこと考えていたのか。」

「ソープで抜くって言ってたから。」

「あっ、はっ、はっ、そうそう頻繁にソープなんかには行けないんだ。結構高いからな、何日も我慢してそれでも我慢出来ないとき行くくらいだ。」

「若いのに大変だなと思ったので。」

「そんなコトは理解出来るんだ。頼もしいと言うか、オヤジさん、やっぱり根が助平なんだ。」

「でも、あれって生理現象みたいなものですから、たまには抜かないと身体に悪いでしょう。」

「だからって、せんずり掻くなんて人に話したくないだろ。恥ずかしいよ。」

「良かったら、私が掻いてやりますよ。二人だけの秘密にしていたら良いことですから、恥ずかしいことでは無いでしょう。」

「そんな事頼めないよ。オヤジさんは男色だったのかな。俺は、その趣味は無いから頼みたくないよ。」

「男色って言うんですか。別に私は嫌では無いですから、抜きたくなったら手伝いますよ。」

「あはははっ、そう言えば昨日小便飲ませたとき、気持ちよく俺のチンポ舐めてくれてたよな。」

「そんな気持ちは無かったですが、あの時は神様に逢ったような気持ちでした。あのまま死ぬのかなって思っていましたから。」

「・・・・・。」

「兄さん、気分悪くしましたか。」

「そ、そうじゃ無いけど・・・、オヤジさんが変な事思い出させるから勃起してきちゃった。あっ、はっ、はっ、」

「元気があって良いことじゃないですか、恥ずかしいことでは無いですよ。」

「何となくオヤジさんに口説かれているみたいだな。変な気持ちになって来たよ。」

「減る訳ではないんですから、抜きましょうよ。誰でも掻いているんでしょうから、元気が出ますよ。」

「オヤジさん、ひょっとしたら昨晩のこと気付いていたのかな。」

「昨晩ですか、気付きませんでしたが、何かしたんですか。教えてくださいよ。」

「いや、気付いていないのなら良いんだ。何もしていないよ。」

立花は、昨晩の糟屋の行動に付いては全て気付いていたが、口に出したりはしなかった。

温泉に軽く浸かり、その後食堂でうどんを食べたが胃が重くなり全部を食べる事が出来なかった。

しかし、昼間の脱水症状も大分快復し、糟屋が勧める後部座席の仮眠ベットで休ませて貰った。

それでも寝付かれずに居たが、親切な糟屋の気持ちに感謝しながら眠った振りしていた。

何度かカーテンを、音を立てないようにして、立花の様子を気遣って覗いてくれていた。

零時を回った頃だったか、『可愛い顔して良く眠っているな』そう言って立花の唇にヌルッとしたのを付けて来た。

それは糟屋の唇であることは分ったが眠った振りを続けた。

糟屋は気付かれていないことに安心したのか、昼間にされたように唾液を注いできた。

甘いトロトロとした糟屋の唾液だった。

昼間は、そうした思いは無かったが、すこし体力が快復してきていた立花には堪らなく幸せなことだった。

そのうち、唇を舐めまわしてくれた後、そっと離れていった。

もっと長く続けて欲しかったが、これ以上だと気付かないのも不自然にも思えたから諦めた。

暫らくして又覗いてくれた。

又しても口付けしてくれるのを期待して待ったが、次に唇に触れたのは糟屋の柔らかい唇ではなかった。

一瞬、何だろうと舌先を出してペロペロ舐めていて驚いた。それは隆々と勃起させた糟屋の竿の先だった。

先走りがダラダラと立花の鼻先に垂れ、懐かしい男の臭いを思い出させてくれた。

立花の脳の中に僅かに残っていた懐かしい臭いだった。

しかし、それも長い時間は期待出来なかった。

糟屋は気付かれる前にと思ったのか、すぐにチンポをズボンに仕舞って運転席に戻ってしまった。

立花の体力がもう少し快復していたら、糟屋を抱き込んでキスしたかったが、残念なことに、されるままで身体が動かなかった。

運転席に戻った糟屋が息を殺してせんずり掻いているようだったが、立花は微かに聞こえる荒い息遣いを聞いていた。

その後、糟屋が「うっ、うっ・・・。」と呻き声を上げ静かになり、車内が懐かしいような青臭い栗の花の臭いがただよった。

立花は何となく安堵し、大きく溜息を付いて眠りについた。

「オヤジさん、パーキングが見えてきた。小便でもして一休みしよう。」

「ああ、広い駐車場ですね。レストランも有るようですが、昼食には早いようですね。」

「うん、オヤジさんの腹が減ったのなら付き合って良いんだが、どうする。」

「ああ、飯はまだ先で良いです。取り敢えず小便したいです。」

「俺も、さっきの話で勃起させられたから小便したくなった。」

「それって、私の責任ですか。」

「多分そうだと思うけどな、あっ、はっ、はっ。責任とってもらおうか。」

「良いんですか、喜んで責任取らせてもらいますが。」

「じょ、冗談だよ…。さあ着いたからゆっくり小便しよう。」

並んで小便を済ませた後、トイレ入り口の自動販売機で熱いお茶を買ってもらってトラックに戻った。

「兄さん、どうしたんですか。」

運転席に座った糟屋がエンジン掛けたまま発進させようとしない。

「うん、何でも無い。出発しようか。」

「急ぐことが無いんだったら一休みしたらどうですか。腰にも悪いですよ。」

「そうだな、今日は時間が有るからチョット一休みしてから出ようか。先の食事場所ででも良いんだが。」

「私も正直なトコ、座りつかれたのでチョット横になりたいんです。」

「あ、は、は、はっ、そうだったか。早く言ったら良かったのに、でも今朝より大分顔色も良くなっているよ。」

「はい、気分も良くなりました。お昼はカツ丼食べたいです。」

「それは、もう暫らく我慢した方が良いんじゃないかな、食べきれそうだったら構わないけどな。」

「そうですね、もうすこし胃の具合が良くなってからにします。」

「オヤジさん、遠慮しないで後ろで横になって良いんだぞ。俺はここで一眠りするから。」

「そんな事言わないで一緒に横になりましょう。」

「バカだな、こんな狭いベットで一緒になんか寝られないだろ。」

「だから重なったら寝られるでしょう。さっきの責任取らせてもらいたいし。」

「・・・・・。」

糟屋は少し興味があるのか、もじもじしながら顔を赤くして俯いてしまった。

糟屋の股間に目をやると既にもっこりさせている。

それを見た立花老人は、サワサワとズボンの上から撫でてやった。

『ビクッ』と身体を硬くした糟屋だったが、立花がチャックを下げて手を入れてくるのを黙ってさせていた。

糟屋はトランクスを履いているので、なかなか勃起させているチンポを摘まみ出せない。

それでも引きずり出そうとしていると、腰を上げてズボンのベルトを緩め、トランクスと一緒に膝まで下げて股間丸出しで眼を瞑っている。

飛び出して来た糟屋の竿は真っ赤に熟れたプルーンのようで、先走りさえ流れ始めていた。

それを、立花は躊躇する事無く『パクッ』と咥えこんでいく。

「あ、ああ、オヤジさん、待ってくれ。あ、ああ。」

「どうしましたか、嫌ですか。」

「そ、そうじゃ無いけど…、あ、ああ、本当に内緒にしてくれるか。」

「当然でしょう、こんな事、人様に言える事ではありませんよ。」

「そ、そうだよな。あ、ああ、気持ち良い・・・。」

「兄さん、ハンドルが邪魔で頭を打ってしまいます。後ろの座席に移りましょう。」

二人は、後部座席の仮眠ベットに並んで腰を掛けた。

立花老人は糟屋を横から抱きこみ唇を近づけていく。

ちょっと抵抗する素振りを見せた糟屋だったが、腕を立花の身体に巻きつけるように抱き返してきた。

ブルブル震わせている糟屋の身体を抱き締めていると、少女の身体を抱いているようで、立花は何かにスイッチが入ったように体中が熱く燃えるのを感じた。

熟年男の動物的本能にも思える。

嫌がっていた糟屋も立花の巧みな誘導で激しく燃えていった。

「あ、ああ、オヤジ・・・、俺…どうにかなりそうだ。あ、ああ、オヤジ・・・。」

涙さえ流しそうな喘ぎ声で、糟屋は立花に重なり、一つになっていった。

(つづく)

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