上野新平シリーズ(第77話):地方訛りのお爺ちゃん(5)By源次郎


(9)

立花(仮称)老人は、電車を降りると駅の構内でタクシーを拾って乗り込んだ。

糟屋と待ち合わせていた配送センターには、約束の時間より三十分も早く到着出来た。

昨日の夕方、駐車させていた場所に行ったが糟屋のトラックが見当たらない。

(何だ、まだ荷物の積み込みが終わっていないのだろう、手伝ってやらないと一人で頑張っているんだろうな)

立花は事務所横の大きな保冷倉庫に行って、糟屋のトラックを探した。

数台が慌ただしく荷物の積み込みをしている。周囲を回ってみたがトラックも糟屋の姿も見当たらなかった。

約束して待ち合わせた場所が違うわけでは無いのだが、どうしたことだろう。

出発予定の午後一時が近付いて来たのだが糟屋の姿が見当たらない。

積み込み作業をしていた他のトラック数台が競争するように勢い良く出て行ってしまった。

まさかとは思ったが、事務所で聞いてみるしかないだろうと、重いドアーを押して事務所に入って行った。

『関係者以外の出入りはお断りします』

風除室(ふうじょしつ)の内側の扉の張り紙を見たが、恐る恐るドアーを押して中に入って行く。

「何かご用でしょうか、伝票でしたら裏の窓口からお願いしていますが。」

受付カウンターの女子社員に声を掛けられた、トラックの運転手と思っているようだ。

優しそうな声だが、何となく胡散(うさん)臭いオヤジが入って来たと感じているようで、表情が険しい。

「あ、そうじゃ無いんです。お訊ねしますが、午後一時に出発予定の糟屋さんのトラックが見当たらないのでご存知ありませんか。」

「ああ、糟屋さんのお連れの方ですね。ちょっとお待ち下さい。」

顔の表情が一気に変りニコニコ微笑んでくれた。

糟屋は、ここの女子社員に人気があるようだ。

時々、立ち寄って目をつけた女の子と冗談言ったりして口説いて遊んでいたのだろうか。

何故か、『糟屋』の名前を聞いた女子社員が急に優しい態度に変ったのを見て、糟屋に対して嫉妬のような気持ちが湧いてくる。

「吉井課長。カッちゃんのお連れが見えました。」

受付の女子社員は事務所奥の窓際の机に座っている男に大声で知らせている。

(何だ、運転手仲間が言っていたが、ここでもカッちゃんって呼ばれているんだ)

立花の嫉妬心が大きく膨らみ、女子社員を睨みつけてしまった。

「あら、お疲れのようですね。うふふ・・・。」

女子社員は、立花の顔を見て疲れていると解釈してくれたようだ。

まさか嫉妬心で見ていましたとは言えず後悔しながら苦笑する。

「おお、見えたか。こちらの応接室に案内してくれ。」

吉井課長と呼ばれた男は、鼻眼鏡で受付の女子社員に答え、立花を見ることも無く、封筒のような物を持ってさっさと奥の方に消えていった。

案内された応接室は、事務所の一角をパーテーションで仕切られただけの部屋になっている。

小さな応接セットと簡単な会議が出来るようになっている部屋に入っていくと鼻眼鏡の男は眼鏡の上から立花の姿を舐めるように足元から頭までを見てくる。

何となく感じの悪い男に見える。

「こちらにお座り下さい。えっと、お茶が良いですか、それともコーヒー。」

話しに入る前に、椅子を勧めながら好みの飲み物を聞いてくる。

(見た目より悪い人ではなさそうだ)

「あ、構わないで下さい。それより糟屋のトラックは出発したのでしょうか。」

椅子の背凭れのクッションを横に移して、座りながら尋ねてみた。

椅子に座る際、立花は、股間に手を持っていき、もっこりを持ち上げ、股の中央に納まるように無意識でやっていたが鼻眼鏡の男の視線が、凝視しているのに気付く。

(この男ヘンだな・・・)一瞬そう思った。

「それがね、残念なことに・・・、あ、ヨッちゃん、有難う。こちらに貰おうか。」

話しの途中で、先程の受付に座っていた女子社員がお茶を入れて来てくれた。

それを吉井課長と呼ばれていた鼻眼鏡の男が、お盆ごと受け取って礼を言っている。

わざわざ受け取ることも無いだろうに、見た感じでは早く出て行ってくれと言っているように思える。

女子社員は「お願いします。」と言いながら立花に軽く微笑み掛け会釈して出て行った。

「気が利き過ぎて・・・、お茶で良かったでしょうか。どうぞお飲み下さい。」

お盆から湯呑みを取って、わざわざ自分で差し出してくれる。

湯呑みを乗せた茶托の端を親指と人差し指の二本で抓み、不自然に小指を立てている仕草が気になる。

「は、お気を使わせて済みません、有難う御座います。それより糟屋の件ですが・・・。」

「あ、そうそう、そうでした肝心なことを伝えなきゃいけませんよね。その前にお茶をどうぞ。」

何となく、この吉井課長の言動が、勿体ぶって焦らされているように思え、イライラしてくる。

よっぽど暇な部署で、滅多に訪ねてくる客が少ないので時間つぶしに、コレ幸いと話したがっているように思える。

糟屋が、言っていたことを思い出した。

「役所とか、配送センターでもそうなんだが、結構暇な窓際族が居て荷物の積み下ろしに話しかけて来るのがいてイラつくことがあるんだ。」

この鼻眼鏡のことを言っていたのかもしれない、そう思うと糟屋の気持ちが理解出来る。

「お茶は、戴きますが糟屋の件は・・・。」

「それがね、残念なことに二時間も前にバタバタと出発したんです。随分と気を揉んでいたようでしたが連絡が取れないって泣き出しそうにしていましたよ。」

「二時間も前にですか・・・。」

立花は、待ち合わせた時間を聞き間違ったのだろうかと朝の会話を思い出していた。

「オヤジ、一時だからな。ちょっと遅くなるが昼飯はお預けだ、暫らくはしって昨日食ったレストランで一緒にアナゴ丼食おう。」

糟屋は、確かにそう言って「ふるさとの宿」の玄関で別れた筈だ。

吉井課長と立花の間に暫らくの沈黙が続いた。

今の立花には、この世で、たった一人の知り合いなのだ。むしろ、たった一人の味方でもあり親子みたいな存在なのだ。

それが、右も左も判らない、こんな北の地方で別れてしまっては、これからの生活が不安でならない。

そんな事を考えていると涙が滲んでさえくる。

「そうだ、オヤジさん。あ、カッちゃんがそう呼んでいたのですみません。これを預かっています。」

二人の間の沈黙を破るように吉井課長が封筒を渡してくれた。

「何でしょうか・・・、え、こんな大金を私にですか。」

立花は、渡された分厚い封筒を覗いて驚いてしまった。

「ええ、カッちゃんが持ち合わせていた全財産だったようですよ。普段からこんな大金を持っていたのでしょうね。」

「こんな大金貰っても・・・。」

「それと、出発して一時間位した後、携帯電話で私に伝えてくれって伝言がありました。メモして置きましたから・・・、えっと、読んで見ますね。」

吉井課長は、立ち上がってズボンのポケットに入れていたメモ紙を取り出している。

それに、わざわざ立花の横にメモ紙を持って来て、クッションを今まで座っていた椅子に投げやった。

狭いソファーではないが、吉井課長は膝がくっ付く位置で鼻眼鏡をズリ上げ、今度は、この男が自分の股間をむんずと掴んで見せ付けるようにして座り、読み始めた。

『オヤジごめんな、出発時間の十一時を午後一時と間違っていた。神社の方向が逆方向だし寄れなかった。会社にスケジュール聞いたら、そこの配送センターに行くのは一週間か遅くても十日後になる。それまで、その周辺を旅していてくれ。思い出す景色があったらいいがな。きっと戻るから待っていてくれ、元気でな。それから時々連絡入れるから吉井課長と連絡しててくれ。』

「えっと・・・、以上です。」

吉井課長は、再び眼鏡を鼻の上に落とし、顔を立花に向け、上目使いに細い眼でニヤッと笑ったような顔で見てくる。

「ああ、そうだったのですか。有難う御座います。私が時間を間違ったのか、糟屋に捨てられたのかと心配でしたが、安心しました。」

不安ながらも、ほっとした立花は、そう言うと椅子から立ち上がり、出口に向かおうとした。

「ちょっと待って下さい。これからどうされるのですか。カッちゃんから頼まれていますので・・・。」

吉井課長に腕を掴まれ、引き留められて椅子に座りなおした。

「どこって、行くあては有りませんが、取り敢えず夕方まで、この辺りを回って今夜の宿を決めます。」

先程出されていたお茶に気付き、口に持っていく。とっくに冷めていたので一気に飲んだ。

「そうですか、だったら夕方まで時間を潰していて下さい。午後五時半頃、駅前の『のあーる』って喫茶店に来て戴きませんか。」

「はあ、構いませんが、何か私にご用でも。」

ちょっと冷たい返事だったかと思ったが、何故逢わなければいけないのかとの思いが強かった。

「オヤジさん、今夜は私と夕食を一緒に如何ですか。」

「は? 夕食をですか。」

断わる理由も無いことだし、まして誰も知らない土地で一人で夕食摂るのも淋しかったので夕方会うことを約束した。

応接室を出る前に、小便したかったので便所の場所を吉井課長に聞き、事務所出口の反対側に行って『男性』と書かれたドアーを確認して便所に入る。

小便器に向かって、用を足しているとき、誰かが隣の小便器に並んでジョボジョボと小便して来た。

「オヤジさんのチンポはデカイですね。羨ましい。」

隣に立って小便していた男に、まだ済ませていない立花のチンポを覗かれた。

「そんな・・・、覗かないで・・・、あ、課長さん。」

立花の小便器を覗いてチンポがデカイと言ってきたのは、先程糟屋からのメッセージを伝えてくれた吉井課長だった。

「羨ましいくらいです。」

立花が洗面所で手を洗っている背後から、背中をポンと叩いて言ってくる。

「お褒めに預かって、恥ずかしいです。」

立花が、洗面台横のエアータオルで手を乾かして外に出ようとした時、吉井課長に再び声を掛けられた。

「五時半に待っていますからね。迷子にならないように来て下さいね。『のあーる』って喫茶店ですよ。」

立花は、ちょっと振り返って吉井課長に黙って頭を下げて別れ、配送センターから出て来た。

タクシーで昨日、糟屋と来て電車に乗った駅の様子が分っている駅前広場で降りる。

「お客さん、忘れ物ですよ。」

タクシーの運転手に呼び止められ、先程吉井課長から預かった糟屋からの生活費が入れてある封筒を座席に置いたまま降りようとしていた。

「わ、有難う。コレが無いと・・・。」

途中まで言って、大金が入っているからと言う必要が無いからと思い、礼を言って封筒を座席から取りあげた。

(こんな大切な物を忘れようとしていただなんて、やはり自分の精神状態も正常ではないのかもしれない)

立花は、そんな行動をしている自分のことを考えると、背筋が寒くなるようなショックだった。

駅前の賑やかな場所を南に行くと、在来線と新幹線の線路が平行して敷設した鉄道下の長いガードを通って駅裏に回ってみる。

綺麗なタイル舗装されたアーケード街がある。しかし通りは閑散として人通りが少ない。

それにシャッターを降ろした店が目立つ。アーケードの入り口から数軒目に大衆食堂があったので暖簾を潜って入ってみた。

昼時を過ぎているからだろうか、客も店員の姿も見当たらない。

奥の方に声を掛けると、不思議そうな顔をした和服姿で年増の女性が出て来た。

「食事したいのですが、何か出来ますか。」

年増の女性は、ここの女将さんだろうか、立花が客だと気付いたのか、すぐに笑顔になってお茶を持って来た。

どんな食事が出来るのか分らなかったが、昨日、糟屋と食べ美味かった土地の名産だと聞いたアナゴ丼を、味噌汁セットで頼んでみた。

「はい、直ぐに出来ます。しばらくお待ち下さい。」

そう言い残して奥に消えたが三十分近くも待たされ、やっと運んで来てくれた。

「ぽろっ、ぽろぽろっ、・・・。」

テーブルに置かれたアナゴ丼を見ただけで、配送センターを出てから我慢していた孤独感が、爆発した感じで涙を流してしまった。

「あら、お客さん、どうしましたか。」

「え、ああ、なんでも無いんです・・・。」

そう答えた立花だったが、糟屋の笑顔や一緒に食べた時の楽しかったことが走馬灯のように思い出され、溢れ出る涙が止まらなかった。

この店の女将さんが、気を使って、そっとティッシュペーパーをテーブルに持って来て奥に戻って行った。

思い直して割り箸を取り出し、鼻水を啜りながら遅い昼食を済ませた。

流石に土地の名産だ。脂が乗った分厚いアナゴに、濃い目のタレがたっぷり飯に染み込んでいて美味かった。

食堂を出たが行く当ても無く、アーケード街を暫らく歩いき途中で南側の通りを歩いてみた。

相変わらず、人影が少ない通りだ。

吉井課長と待ち合わせた時間までには、まだ三時間余りあるようだ。

あまり気が進まなかったが、一人で食べるよりは淋しさも和らぐだろうと考えていた。

ちょっと昼寝したかった。糟屋の明け方までの激しい絡みで睡眠不足だったからだ。

居酒屋のカウンターだろうか、そこに寝そべって大股開きのオンナがくすんだ色の外陰部を赤いマニュキュア塗った爪の指先をした手で弄くっている。

「あ、ああ、あんたぁ、早く舐めて・・・、あ、ああ。」

目の前の大きなスクリーンに映し出される映像と艶かしい女の喘ぎ声が、立花の睡眠を妨げる。

通り掛かりの映画館で上映されている題名も見らずに、ここでなら時間つぶしに眠られると思って入ったが、嫌悪感を覚えながらも興奮してしまった。

厨房からビキニパンツだけを履いた裸のマッチョな男が出て来て、女のワギナの入り口を舐め出した。

猫が茶碗の水を飲むような卑猥な音を立てて舐めまわし、それと同時に女の喘ぎ声が一層大きくなって来た。

オトコのビキニパンツは、左膝まで降ろされ、その左足を椅子に膝立ちさせ、右足を女の顔を跨いでカウンターに載せていく。

オンナは、口に入りきれないほどの竿を、アイスキャンディを舐めるように涎を流しながら根元から竿の先へと往復させしゃぶっていく。

(なんだ、こんな映画だったのか・・・)

立花は目を瞑って眠りたかったが、ついつい大画面で展開される状況に吸い込まれていく。

それでも、瞼が重い。時々ふっと眠っていたようだ。

女の股間に突き刺さった竿が、卑猥な音を立てて抽送されている。

もっともモザイクが入れてあるが、何の効果にもなっていない。そのものズバリがしっかり見えている。

オトコの引き締まった尻が上下に動いているのを見て、逞しささえ感じ、むしろオトコの尻と突き刺している竿に見とれてしまう。

それが、糟屋に愛されていた光景とダブって見え、自然に先走りが出て来る。

何時の間にか再び寝てしまっていたようだ。立花は、自分の股間を弄られる感じがして目を覚ました。

大画面は、相変わらずの光景と、喘ぎ声がが延々と続いている。

気のせいだったのか、自分の股間に手を持って行ってみたが、他人の手は無かった。

(寝とぼけていたのだろう・・・)

ちょっと気持ち良く成っていたようだったが、糟屋との夢を見ていたので、現実の画面と夢が混同したのだろう。

右隣に誰か座っている。入館したときは真っ暗な中でも、ガラ空き状態でパラパラと数人の人影しか見なかったが観客が増えて来たのだろうか。

それにしては、立花の前の方の椅子には、左右を見渡しても数人しかいない。

右隣に座っている客を見てみたいが、何故か直接横を見るのが、何となく気が引ける。

右前方に照度を落とした青いパネルの誘導灯に目をやり、その視線の隅に隣に座っている客の姿を確認できた。

50代だろうか、ボサボサの髪をした小柄で、引き締まった身体をしている。

どうして、そう思ったかは分らないが、臭いでも無く、ただそう感じただけだ。

その姿を見て安心したのもヘンだが、ほっとして横を向いて顔を見た。

横に座っている男も立花が見てきたことが分り、ニッコリ笑って顔を合わせて来た。

挨拶するでも無く、大画面に目を移した。

(なんだろう・・・)

立花の右膝に、隣の男が自分の膝を付けて来た。それは偶然ではなく意識して付けて来たようだ。

立花も、それを避ける事もせず、そのままでいた。男の体温が、膝から伝わってくる。

(あ、これは信号だ・・・)

何となく、そう感じると、立花のチンポがむずむずしてくる。

男は、くっつけられている膝に手を乗せてきた。

太腿の上側をサワサワと撫でてきた。そうしたことが嫌では無かった。

しかし、止めさせようと男の手に右手を乗せたが、勘違いされたようだ。

男は、手を引き抜き、立花の手を掴むように乗せてきて力強く握ってきた。

しばらく、そのままにしていると男は、その手を立花の股間に移してきた。

『スッ、ススゥー』

男は、立花のズボンに手を入れてくる。

気が付かなかったが、寝ている間にチャックを開けられていたのだろうか、それとも配送センターを出る前に小便したから、その時締めるのを忘れていたのだろうか。

男は、慣れた手つきで立花のチンポを掴んで来た。

神社で着けて貰った越中褌だったが、慣れない褌だったこともあって緩んでいたのだろう。

難なく、男に掴まれたチンポが起き出して来る。男は、立花の亀頭を撫で回し、鈴口から滲み出す先走りを竿全体に塗り拡げシコシコと扱き始める。

しかし、立花のチンポは半勃起までで、それ以上は硬くならなかった。

「う、うう、気持ち良い・・・、でも疲れているから勃起出来ないんです。」

立花は、しなくても良い言い訳を、男の耳元で囁いていた。

「大きいチンポです、美味しそうです。舐めて良いですか。」

「え、こんな所では嫌です。そろそろ待ち合わせの時間ですから出たいんです。」

「それは残念だな、明日も今の時間に来れませんか。」

「ああ、出来たらそうしたいのですが、約束できません。ごめんなさい。」

椅子から立ち上がって出口に向かう立花を振り返って、残念そうに、見ている隣にいた男が可哀想に思えた。

(10)

「立花さん、お爺ちゃん。こんな所で転寝していたら風邪引きますよ。」

「え、あ、ああ・・・。あれっ、上野さん、どうして此処に居るんですか。」

臼杵惣菜屋の調理場裏に机と、一休みできる畳一枚敷かれた場所が作ってある。

そこに寝転んでいた立花お爺ちゃんが、起き上がって不思議そうに上野新平の顔を見てくる。

「あははっ、お爺ちゃん。寝とぼけていませんか。」

上野新平(53)は、一時出向させられていたS出張所から書類を届けに支社に来て、立花お爺ちゃんの様子を見ようと、臼杵惣菜屋に立ち寄っていた。

「はぁ? 夢だったんですか。上野さんと出会う前までの、ひと月くらい前の事をを思い出しているうちに寝てしまったようですね。」

立花はベットに起き上がって足を床に付けて座り、隣に新平が腰を降ろせる場所を空けた。

「臼杵さんは、お出掛けですか。」

新平が、立花の横に座りながら肩に、そっと手を乗せ引き寄せる。

立花も、それを待っていたようで、横を向き両腕を延ばし新平の身体に抱き付いてくる。

新平は、立花の額にそっと唇を付け、頭髪に付いた食用油の臭いを嗅いで立ち上がった。

「体調は大丈夫ですか。」

立花は、既に涙ぐんだ瞳で新平を見詰め軽く頷く。

「あ、ああ、ここで大丈夫ですか。」

立花も立ち上がり、片手を新平の腋の下から回し項(うなじ)を押さえ、もう片方の手は後頭部に押し付け顔を引き寄せ唇を付けてくる。

立花のそうした行動は、唐突にも思えたが、新平は嬉しかった。

互いの舌を絡ませ、新平の舌が立花の口の中に吸い込まれていく。

満足したのか立花が、唇を離した時に付近を見回し、臼杵お爺ちゃんの姿を探した。

「親方は、親戚のご不幸があったので出かけています。夜には帰ると言っていました。」

「そう、それは大変でしたね。店は臨時休業ですか。」

「いいえ、昨夜のうちに下拵え(したごしらえ)した物で長く置いておけないものだけは、私が揚げて売ってしまいました。お陰で焼き物や揚げ物も、大分憶えましたので。」

「そうですか、腕を上げたのですね。」

「はい、こんなに上がります。」

立花は、新平の前で両手を挙げて見せてくる。

「あっはっはっ、そんな関西お笑いのギャグまで憶えましたか。頼もしいですね。」

立花は、自分が人前で始めてやったギャグだったのだろう、ちょっと顔を赤くして、新平が入って来たドアーに内鍵を掛けに行った。

「上野さん、時間は有りますか。」

「ああ、明日の朝、打ち合わせがありますので、今日中にS市に戻らないといけないので、今度の週末に帰省しますから・・・、あ、ああ、お爺ちゃん。」

新平の話が終わらないうちに、立花お爺ちゃんが新平のズボンのチャックを下げ、すでに半勃起しているチンポを引っ張り出して咥えてしまった。

「わ、あ、ああ、お爺ちゃん。待って・・・、時間が・・・、あ、ああ、その気にさせてしまって困ったな。」

新平の声が聞こえない筈は無いのだが、立花お爺ちゃんは黙々としゃぶってくる。

「あ、ああ、ね、ねね、せめて下だけでも脱ぎますから、あ、ああ。」

その言葉には即反応してチンポを解放してくれた。

『ガチャガチャ』

新平がベルトに手をやったが、その手を払い除けて、立花お爺ちゃんが、ベルトをスルスルっと抜き去り、一気にズボンを下げてしまった。

慌てて靴を脱いでズボンを足先から引き抜く。

「片手落ちですよ、お爺ちゃんも脱がなきゃ。私だけ下半身裸にされているって恥ずかしいです。」

ニッコリ笑って、立花お爺ちゃんも自分でベルトを緩めズボンを脱ぎ捨てた。

「これで良いでしょう。そこに寝てください。」

立花お爺ちゃんは、準備完了とばかりに、半勃起させたチンポを揺らしながら新平に近付いて畳に押し倒してくる。

「あ、ああ、そんな強引な・・・、ね、ねね、私にもお爺ちゃんのをください。」

尺八されながら、立花お爺ちゃんを腹の上に引き上げ、シックスナインの体位に持っていけた。

巧みな立花お爺ちゃんのテクニックに、ちょっとだけ勘ぐってしまう。

臼杵お爺ちゃんに預けて二週間余りしか経っていないのに、毎夜、こんな事を教えているのだろうか。

この焦らすようで、そのくせ次の攻め方を待って燃え上がらせてくれる。

それとも、記憶をなくす前から、この道を知っていたのだろうか。

臼杵お爺ちゃんと立花お爺ちゃんが、一日の仕事が終わってから、二人で楽しく絡んでいる姿を思い浮かべ、羨ましくもあり嫉妬さえ湧いて苦笑する。

新平は、ここで立花お爺ちゃんの口の中で果ててみようかとも思ったが、善吉お爺ちゃんにも一目合って行きたかったので我慢することにした。

「上野さん、抜かなくて良かったのですか。」

身体を離した新平に、立花は怪訝そうな顔で向きを変え唇を求めてきた。

「ああ、気持ち良かった。お爺ちゃん有難う、今から家に寄って持って行きたい物を探さないといけないので、今度の週末にでもゆっくりしましょう。」

「そうでしたね、上野さんは、まだ勤務中だったですね。久し振りだったので、ついつい爺の我がままで済みません。」

「そんなコトはありませんよ。気にしないで下さい。それでは週末に帰省しますから宜しく。」

「その時は、親方に言って、お宅の方で福島さんと夕御飯の準備しますから連絡下さいね。」

別れ際に立花お爺ちゃんを引き寄せ、口づけをして臼杵惣菜屋を後にする。

自宅に戻り、暫らく見ていなかった昔の映画をダビングしたDVDを数枚探し出しカバンに入れる。

「なんだ、新平戻っていたのか。お邪魔するよ。」

善吉お爺ちゃんが、玄関横に停めていた車を見て、勝手口から入ってくる。

「ああ、お爺ちゃん、ちょっと支社に用事があったので、序でに寄って見ました。後で家に声掛けようと思っていたのですが。」

「後で声掛けてって、今日は婆さんが居るんだ。何も出来ないだろ。冷たいな。」

「そんな心算では無かったのですが、バタバタしていたものですから・・・。あ、ああ、お爺ちゃん。」

寝室兼書斎の部屋に入って来た善吉お爺ちゃんに捕まって抱き付かれてしまった。

「新平。たまには電話くらいしてくれ、退屈で淋しいんだ。こんな年寄りだし、誰も相手してくれない。」

「ああ、お爺ちゃん、ご免なさい。今度の週末には帰省出来そうですから。」

「駄目だ。待てない。」

福島善吉お爺ちゃんは、そう言うと、服を脱ぎ出している。

「え、お爺ちゃん。」

唖然としている新平の顔を見詰めたまま、さっさと素っ裸になり、歩み寄って来て新平の服に手を掛けて来た。

「あ、自分で脱ぎますから。奥さんは大丈夫ですか。」

「ばばぁは、買い物に行く筈だ。三時間は帰らない。」

「そんな事言って、さっきは家に居るって・・・、でも、ひょっこり帰ってこられたら困りますでしょう。」

そうした会話をしながらも、新平も服とズボンを脱ぎ捨てていた。

つい先程、立花お爺ちゃんにしゃぶらせていたチンポだったが、善吉お爺ちゃんの積極的な行動に興奮してしまった。

(でも良かったな、立花の爺さんにタオルで拭いてもらっていたから唾液の臭いも無いだろう)

「シャワーでも先に浴びましょうか。」

「そんな時間は無いんだろ。」

善吉お爺ちゃんは、新平が裸になるのを待ちかねたように股間に顔を埋めて半勃起のチンポを音を立てながら、しゃぶり付いてきた。

「あ、ああ、そんなにせっかちに・・・、あ、ああ、せめて布団を敷かせてよ。」

「うん、畳を汚すとやっかいだからな。」

やっと善吉お爺ちゃんがチンポから口を離してくれた。

「お、布団がふかふかに膨れている。」

「うん、新平が、何時帰ってきても良いように時々外に干している。」

「お爺ちゃん、有難う。」

布団の中央に立ったままで、両手を広げて善吉お爺ちゃんが飛び掛って来るのを待った。

(つづく)
ーーーーーーーーーー
お断り:小説の中に登場する人名、地名、企業名はすべてフィクションであり、故意的なものではありません。(源次郎)

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