上野新平シリーズ(第80話):地方訛りのお爺ちゃん((8)/最終章)By源次郎


(15)

立花老人は、臼杵惣菜屋の休憩用の畳で放心状態になって天井をぼんやり眺めている。

思いも掛けなかった福島さんと肌を合わせた余韻を溜息交じりで思い返している。

(神様みたいに思っていた福島さんに、あんな事をしてしまって良かったのだろうか)

二日も続けて惣菜屋の留守番をさせられ、久し振りの一人ぼっちの淋しさを味わっているときだった。

昨夜も、遅く帰宅した臼杵親方は、準備していた夕食には、目もくれずに布団に入ってしまった。

「せめて風呂だけでも」と勧めたが、怒ったように“疲れているんだ”と寝てしまわれ、何となく淋しかった。

それでも世話になっている親方だからと、背中から足先までを小一時間マッサージしてやり、親方の身体の温もりも味わった。

今日も、朝早くに出掛ける準備をしながら“本日休業”の張り紙を立花に貼らせた。

しかし立花としては、簡単な惣菜だったら自分でも少しは出来るつもりでいたのだが、まだまだ親方としては不安だったのだろう。

そうした悲しそうな立花の気持ちを察したのか、親方は出掛ける前に、立花を引き寄せ唇を吸いながら『今日はゆっくりしなさい』と優しく声を掛けてくれた。

それでも、現実社会から置いて行かれている様で、何となく悲しかった。

揚げ物鍋や調理台周りを掃除し、バックヤードの休憩用畳に寝転び、数日、親方とも絡んでいなかったので“せんずり”を掻き始めたところに福島善吉お爺ちゃんが入って来て見られてしまった。

顔から火が出る思いだったが、理解ある福島さんに抱かれ唇を付けて来られたときは、夢では無いかと舞い上がってしまっていた。

その後、優しく誘導され、求められるまま“アナルセックス”させてくれ満足だったのと同時に、自分の性癖に後悔もしていた。

しかし、その福島さんも帰宅され、また一人ぼっちになってしまい、夕方親方が帰宅するまで何もすることが無い。

昼食を済ませ、上野新平や福島善吉、それに臼杵惣菜屋の親方に世話になる前、糟屋と別れた時のことを思い出していた。

糟屋の勘違いで、東北の小さな街に置いてけぼりされ、その日は、昼寝するために入った映画館で、隣に座った男性に声を掛けられた。

それが一週間もの間、世話になった親切な釜石との出逢いだった。

翌日から優しい釜石の家に世話になったが、その懐かしい思い出にふける。

そこでの一週間、夜は釜石との絡みが日課のようになり、楽しい時間だったが、昼間は、自分の過去を探す為に近隣の町を汗だくで歩き回った。

「オヤジ元気だったか。」

一週間後に、糟屋が別れた配送センターに到着すると聞き、三時間も前から保冷倉庫の横に座り込んでトラックの出入りを凝視しながら待っていた。

釜石との最後の夜と言うことで、遅くまで相手をしていて少々疲れても居たが、それよりも糟屋との再会が出来ることで興奮もし眠れなかった。

座り込んでいた配送センターのコンコース横で居眠りしてしまっていたようだ。

待ち焦がれていた懐かしい糟屋から不意に声を掛けられ、小便をチビルくらい驚き、また嬉しかった。

幸い小便をチビル事は無かったが、糟屋に涙を見せてしまう。

人目も憚らず(はばからず)、立花は糟屋のトラックに走りより、運転席に飛び乗り抱きついてしまう。

「カッちゃん、淋しかった・・・。」

「そうか済まなかったな。もう離さないから安心して良いぞ。それに俺のことカッちゃんって呼んでくれるのか、嬉しいな。」

糟屋も立花の気持ちが痛いほど判っている。糟屋自信も、どうにもならないくらい淋しい一週間だったのだ。

糟屋もまた、立花老人の身体をしっかり受け止め抱きついてくれた。

貨物を積み終え、直ぐに出発して高速道路に乗る。

「配送センターの吉井課長が怒っていたが何かあったのか。」

「ああ、別れたあの日、夕飯に誘われていたのですが、待ち合わせの喫茶店が見つからなかったのです。『あひる』だったか・・・。」

「あっはっはっ、フランス語だったかな『のあーる』だろ。そりゃぁ見つからなくって良かったな、あいつに遊ばれたかもしれないぞ。」

「え、遊ばれるって・・・。」

「うん、運転手仲間も何人か遊ばれているらしいんだ。俺も何度か誘われたけど、オヤジと出会う前だったから幸いこの世界を知らなかったんだ。知っていても吉井課長はタイプじゃないけどな。」

「そうだったんですか・・・。」

「ま、そんな話は良いじゃないか。今日は時間の余裕があるから、この先のインターで一旦降りて、山の中の温泉に泊まろう。」

「・・・・・。」

二人は顔を見合わせてニッコリ笑い合う。

立花は、糟屋の左膝に手を乗せたり、股間を弄って、一週間ぶりの糟屋の肌の温もりに胸がときめく。

「あう、あう、あ、ああ、カッちゃん、あ、ああ、一段と優しくなってどうしたのですか。あ、ああ。」

鄙びた(ひなびた)温泉に浸かり、夕食もそこそこに部屋に戻り、ドアーの鍵を掛けるのももどかしく、敷かれた布団の上で抱き合い唇を貪りあう。

立花老人は、人が変わったような糟屋の優しい愛撫に身を任せ、コノ幸せな関係が何時までも続くことを神に祈った。

それでも、糟屋以外との絡みで、今までの快楽とは一味違った体験もしていたことを思い出してしまう。

糟屋との絡みで、アナルの快感を覚え、また釜石とは、冒険にも似た“デカちん”を何度かウケ、快楽に泣いてしまったこともあった。

釜石との絡みでは、立花も最初は痛みしかなかったが、巧くアナルをほぐされ、優しくねじ込まれると、身体全体が性感帯になったようにさえ震え出していたものだった。

前立腺を“デカちん”の竿で刺激されると、全身に電気が走り、“ちんぽ”も扱いていないのに、目の前が真っ暗になり、先走りが溢れ、トコロテンで精液を流れ出してもいた。

ねちねちと抽送されていると、勝手に菊門が収縮を始め釜石の竿にも、違った刺激を与えていたのだろう。

また、宮司や釜石と経験したタチの気持ちも判り“ここで締めてやると”と言ったタイミングもわかるようになっていた。

一週間ぶりの糟屋は、立花の飴色の菊座に舌を這わせ、執拗に舐めまわし、ビクンビクンと身体を震わせる立花を愛おしく攻め始めてくる。

身体を仰向けにされ、両足は大きく広げられ、赤ん坊の“おむつ”を替える姿勢にされる。

「カッちゃん、あ、ああ、気持ち良い、でもちょっと恥ずかしい・・・。」

「オヤジ、何言ってるんだ。恥ずかしがるような間では無いだろう。一週間、悶々とオヤジを抱くことだけを思い続けていたんだ。」

「うん、判ってる。私もそうだったから・・・。」

立花は、後ろめたさは有ったが、糟屋を愛おしく心待ちしていたのは本当の気持ちだ。

糟屋は、菊座の中央を指でなぞりながら、グッと中指を一本、そしてまた人差し指を一本と増やしていき、薬指を増やし、3本の指で菊門を優しくほぐしていく。

ローションでヌルヌルになったアナルに指を差し込むと、グチュグチュと中を掻きまわしてくる。

「あ、ああ、カッちゃん、い、いい・・・。」

恍惚に浸りながら涙を流し、糟屋の愛撫に翻弄されていく。

糟屋に四つん這いになるように言われ、顔を横向きにし枕を抱え込んで、尻を高く上げる。

立ち上がった糟屋に腰をガッチリ捉まれると、菊座にコリコリした硬いものが押し当てられる。

(いよいよ、糟屋の“ちんぽ”が挿入して来るのだ・・・)

そう考えただけで身体がワナワナ震え出す。

「力を抜いて・・・。」と糟屋の興奮した声に、菊門の力を抜くと、ヌメッとあの懐かしい糟屋の上反り“ちんぽ”が入ってきた。

(あ、ああ、これだこれだ。私を虜にしてしまった糟屋の“ちんぽ”の感触だ)

菊門が裂けるような痛みが走るが、これも快感に変わっていく。

ゆっくりゆっくり優しく入れてくれている。

初めの内は声も出ない程の痛みが肛門から脳天まで走ったが、ゆっくり優しく糟屋が入れてくるので、だんだん落ち着きを取り戻し、落ち着きは快楽へと変わっていった。

「カッちゃん、凄い、凄い。凄い刺激だ。あ、ああ、気持ち良い。」

それでも上反りの“ちんぽ”が奥まで入って来ると、内臓全体が押し上げられている感じになる。

枕をかかえて、その刺激を受け止めるだけだ。まだまだ、これ以上の快感を味わえるまで、この上反り“ちんぽ”に馴染ませていこう。

しばらく抽送していた糟屋が、荒い息で立花老人を抱えるようにして上向きに寝転び腹の上に乗せてしまった。

「おい、オヤジ。上に乗ってくれ。」

「もう乗せているじゃないですか、あ、ああ。」

立花老人は、糟屋が曲げている両膝を掴んで身体を上下させていた。

「そうじゃ無くって、オヤジの顔を見ながら射きたいだろ。身体をこちらに回せるか。」

「ああ、そうだね。これじゃ、カッちゃんの顔が見えないからね。よいしょっと・・・。」

身体を反転させようとしていたら、糟屋の“ちんぽ”が抜けてしまった。

「あ、ああ、抜けてしまった。オヤジ、ちょっと以前の要領を忘れたな。」

「お互い様でしょう。」

「うん、そうだな。あっはははっ。」

明るく笑いながら、上向きで寝転び、両腕を差し出している糟屋の身体に跨り、上反りの“ちんぽ”を掴み菊座に押し当て腰を落としていく。

「あ、ああ、オヤジ。巧いもんだな。お、おお、全部入ったようだぞ。」

はしゃいだように喜ぶ糟屋の顔を見下ろしながら、立花老人は、ゆっくり腰を上下させていく。

立花老人はアナルから前立腺への刺激に酔いしれながら、“もうこのカッちゃんに全てを委ねて射ける”と淫猥なクチャクチャという音を楽しんでいる。

今度は、糟屋の身体に抱きつき、糟屋も背中に腕を回して立花老人の身体を右側に転がし上に乗ってきた。

これで体制は正常位になった。この体制は一番気持ち良い。前立腺の位置をしっかりと、あの上反り“ちんぽ”で擦られるのだ。

立花老人の腰は、段々ガクガクしてくる。

糟屋の亀頭は立花老人の前立腺を探し当てたように捕らえている。

その刺激に立花老人の“ちんぽ”の先からは、一段と先走りが腹の上に溢れ出ている。

(あ、これはトコロテンで射く前兆だ)

立花老人は、自分と糟屋の腹を濡らしながらジワジワと精液を噴出していた。

「お、おお、オヤジ。射ったのか。」

糟屋が股間のべと付く生温いものを感じたようだ。

「う、うん、でも・・・、あ、ああ、恥ずかしい。」

糟屋が、立花老人から身体を起こし、立膝になって抽送しながら、立花の“ちんぽ”に手を持って来た。

「や、やや、オヤジ。トコロテンで射ったのか。どうだ気持ち良かったか。」

立花老人は、目を瞑ったまま顔を振った。

「何だ、気持ち良くないのか。」

「いいえ、ずっと気持ち良かったので、射精したのが何時だったのか・・・、あ、ああ。」

「はははっ、そうか、オヤジ。まだドロドロ出ているぞ、面白いな、話には聞いたがな、俺、初めて見せてもらった、これってトコロテンって言うらしいぞ。」

糟屋は、立花の精液を指で掬い、匂いを嗅いでペロッと舐めた。

「うんうん、間違いなく精液だ。」

嬉しそうに、抽送するのも忘れ、何度も指で掬い上げて舐めている。

「カッちゃん、恥ずかしいから・・・。」

糟屋の腕を掴んで止めさせようとしたが、思い止まって好きなようにさせていた。

「な、オヤジ。数日休暇取るから国内の温泉を回って見たいな。」

その夜の二回目の絡みの後で、糟屋が立花老人を腕枕にしてやりながら話しかけてきた。

その時は、二人っきりで思いっきり楽しい時間が過ごせるのだと軽く同調し、糟屋に抱きつき唇に吸い付いていった。

それから数日は、糟屋と離れ離れになっていた一週間の空白を埋めるかのように、夜は当然だが、昼間でも高速のパーキングエリアで絡み合うことさえあった。

立花老人は、そうした幸せな時間を漠然と過ごしていたが、気が付くと、糟屋が運行計画をキャンセルしたり、荷物の誤配を繰り返すのに疑問を持ち出した。

(これは大変なことかもしれない、糟屋が仕事を捨てて私との、こうした行為に溺れているようだ)

自分も過去の生活を思い出して自宅に戻らなければならない。

記憶にはないが、きっと心配して待っててくれている家族が居るかもしれない。

立花は、そうした狭間の中で悩んだ挙句、黙って別れる計画を始めた。

脱水症状で行き倒れていたところを助けてもらった糟屋には、一生でも連れ添って仕事の手伝いをしてやり、夜の絡みで身体を癒してやりたい。

しかし、今のままでは将来ある糟屋の為にはならないだろう。

別れるのは辛い。また黙って去るのも人道に外れるかもしれない。

しかし、今の糟屋の状態では話し合って判ってくれそうも無い。

「オヤジ。何か悩んでいるのか。」

高速道路沿いのレストランの味に飽き、インターを降りて街なかの洒落た小料理屋風のレストランで夕食をしている時、立花の顔をしみじみと見て糟屋が聞いてきた。

『ドキッ』としたが、立花老人はニッコリ笑って顔を横に振った。

「そうか、具合でも悪いんじゃないだろうな。体調が悪かったら遠慮しないで言うんだぞ。」

涙が出そうになるような優しい言葉に、立花老人は計画を“もう暫らく先に延ばしてもいいかな”とも思った。

「ありゃ、携帯の電池切れだ。オヤジ、先に戻って居てくれ、ここの公衆電話で会社に連絡取りたいから。」

食事を済ませて、コーヒーを飲んでいた時、糟屋が保冷車のキーをテーブルに置き、伝票を掴んでレジーに向かった。

(そろそろ別れる頃だ・・・、思いっ切らないとズルズルと別れられなくなりそうだ)

立花は“今しか無い”と、キーを握り締めて保冷車に、ゆっくりした足取りで戻った。

しかし高鳴る胸の鼓動が、電話をしながら立花の後姿を見ている糟屋に聞こえないかと心配になりそうだった。

一旦、保冷車に乗り込み、何日も掛けて書き続けていた糟屋宛の“感謝の言葉と別れる言葉”を書いた手紙を運転席に置き、着替えなどを詰め込んでいた紙袋も持たずに大通りから脇道に入り、急ぎ足でレストランの駐車場から離れた。

後ろを振り返ることも無く、JRの駅に入り、目の前に来た電車に飛び乗った。

電車が発車し糟屋との距離が離れていくのを感じた時、溢れ出る涙で車窓の景色も見え無くなった。

次から次に糟屋と過ごした日々が思い出され、乗り合わせている他の乗客の視線など気にもせず涙を流した。

(カッちゃん、有難う。またきっと逢えるだろうから元気で頑張るんだよ・・・。カッちゃんには、まだまだ大きな将来があるんだ)

そこから行き先も決めず、降りた駅で次から次と何度か電車を乗り継いで、気の向くままふらっと、上野新平と出会った近くの駅で降りたのが一月前だった。

(16・最終章)

『ああ、新平か。大変だ、タっちゃんが消えた。』

「あ、お爺ちゃん。立花さんが消えたって、あはは、そんな特技を持っていたのですか。それで、甲賀流ですか、それとも伊賀流でしたか・・・。」

『何言っているんだ、立花のオヤジが消えたんだ。』

「だから、立花さんは忍者だったのでしょう。」

『バカ。もう良い・・・。』

『プツッ、ツー、ツー、ツー・・・』

(ありゃ、善吉お爺ちゃんを怒らせてしまった。どうしたんだろう、立花さんは、記憶が戻って自宅がある故郷を思い出せたのだろうか)

上野新平(53)は、出張所の事務所を出て、改めて善吉お爺ちゃんに電話を掛け、立花老人が消えた状況を聞いた。

4日前の午後、惣菜の配達に出た立花老人が、駅前の横断歩道でバイクにひき逃げされ、横断歩道に転倒して救急車で病院に搬送されていた。

目立った外傷は無かったが、転倒した際に後頭部を打ったらしく、以来昏睡状態が続いていた。

それでも、三日目には、臼杵惣菜屋のお爺ちゃんと善吉お爺ちゃんが見舞いに行き、名前を呼ぶと、善吉お爺ちゃんが握っていた手を弱弱しくだが握り返してくれたらしい。

その際、立花老人は、目を開ける事は無かったが、目から一滴の涙を流してくれた。

その涙が、耳に流れていったので、ティッシュで拭いてやると照れたように顔の表情が僅かに強張ったように変わった。

覚醒してくれるのも間もなくだろうと、臼杵お爺ちゃんが持って来た下着を善吉お爺ちゃんと二人で着替えさせて帰宅した。

翌朝早くに入院保証人になっていた臼杵惣菜屋に病院から電話があった。

午前六時の検温で回った時に、立花老人の姿がベットに居無かった。

点滴の針や排尿の管、それに血圧計、酸素供給管もはずされ緊急アラームのスイッチまでが切られていた。

こうしたことは、看護師か医師しか出来ないのだが、自分で外したようだ。

『覚醒してトイレにでも行ったのだろうか』と、病院内のトイレを探し回ったが見当たらなかったらしい。

臼杵惣菜屋のお爺ちゃんと、善吉お爺ちゃんが、それを聞いて病院に駆けつけたが、事故にあった時の作業服と僅かな小遣い銭を入れた財布も無くなっていた。

「お爺ちゃん、立花お爺ちゃんは、キッと記憶喪失した以前のことを思い出したのではないでしょうか。」

「そうだと思うが、だったら、どうしてワシ達に声を掛けてからにしなかったのだ。そんなに薄情な男だったのか。見損なったな。」

「お爺ちゃん、それはチョット違うかもしれませんよ。詳しくは分りませんが、覚醒したときの症状も色々有って、先に記憶を無くした以前のことが優先して、記憶が無くなっていた期間のことを思い出せないとか、時間を掛けて記憶喪失時のことが幻みたいに思い出す事例もあるらしいですよ。」

「ほう、新平は詳しいんだな。それで、タっちゃんは、どちらなんだ。」

「そんなこと私には分かりませんよ。バタバタしても、どうしようも無いでしょう。立花さんが、覚醒して自宅に戻られることを祈っていましょう。」

「ふーん、新平は冷静なんだな。」

「そうでも思わないと・・・。」

「うん、分った。臼杵の爺さんが落ち込んでいるから、今から行って来る。」

「私も週末には帰省しますから宜しく伝えててくださいね。お世話になったので、直ぐにでも帰りたいけど。」

「ああ、ワシから言っとく。週末には待っているから帰って来てくれな。」

(ふーっ、記憶が戻ったんだ。良かった、良かった・・・)

上野新平は、大きく溜息を付いて事務所に戻った。

その頃、立花老人は、北へ向かう新幹線の車窓から外の景色を眺めながら、日本海沿いの国道を軽トラックで走っていた時の事を思い出していた。

先祖から引き継いだ僅かばかりの田畑にしがみ付く様に、農業をやっていたが、雪深い冬場は、自宅から400キロ南のT市の酒造会社で、半年間“杜氏(とうじ)”として酒造りをして出稼ぎで働いていた。

今年は、例年以上の旨い日本酒が出来上がり、帰省する数日前、作業を終え蔵主やて杜氏仲間と原酒で乾杯し、部屋に戻り、ぼちぼち買い集めていた息子夫婦や孫達への土産品を整理して居た時だった。

息子から「母ちゃんが、脳梗塞で病院に入った。」との連絡を受け、夜も遅かったが、そのまま酒造会社を抜け出し乗ってきていた軽トラックに乗り込んだ。

日本海沿いに車窓を少し開け、酔いを醒まそうと冷たい風を入れながら北上していた。

深夜に近い国道は、車も少なく、快適に走行していた。

そんな時、緩やかな右カーブで、中央線をはみ出して来た大型トラックと出会い、ハンドル操作が間に合わず、国道からはみ出し、左側の海岸線に続く崖を数回転しながら転げ落ちていた。

50メートルも転げ、海中に落ちたときは、壊れたドアーから身体は外に出ていたが、軽トラックと一緒に海中深く沈んでいった。

もがきながら水面に顔が出て、岸まで泳ぎ着いた時は“助かった”との安堵感で、その場に倒れこんだ。

思い出されるのは、そこまでで、今朝目が醒めた時、大袈裟な救命装置を身体に付けられているのに動転してしまった。

その病院を、どうやって抜け出したのか、ただただ夢中でタクシーに飛び乗って近くのJRまで来ていた。

出稼ぎで来ていたT市近郊では、名前も聞いたことが無い駅名だったが、取り敢えず北に向かう電車に乗った。

田植えの準備が終わって、水が張られた田んぼが目に入ってくる。自分も、早く帰宅して、息子に引き継いでもらった田んぼに出て、田植えの準備をしてやらないといけない。

その前に、脳梗塞で入院したと連絡貰っていた妻の病状も気になる。

新幹線が、トンネルに入ったとき、窓に映った自分の顔を見ていて、そこに別の老人の顔が見えたような気がした。

(何処かで見かけた老人だが、誰だったのだろう・・・)

思い出そうとはしたが、なかなか名前が浮かばない。確かに最近会った老人なんだが、その内ゆっくり思い出すことがあるだろう。

そう考えて居た時、通路を挟んだ隣の客が喋っている声が、変に気になって来た。

『・・・・・・・・・あんな親方だから、職人も逃げ出すんだ・・・』

(そんな言葉の一部が、ひどく心に響くのは何故なんだろう・・・)

「あっ、親方って・・・。」

この“親方”と声を出した瞬間、臼杵惣菜屋の親方の顔が浮かんで来た。

初めて臼杵惣菜屋の親方の家に連れて行かれた時の事が思い出されてくる。

顔も名前も思い出せないが、二人の男性に連れられて行って紹介され、働かせてもらうようになったのだ。

あの時の二人の男性は誰だったのだろうか。今は思い出せないが、これもその内思い出すだろう。

臼杵惣菜屋の親方は、優しい人だった。

連れて行ってくれた二人が帰った後、手を握って“何も遠慮要らないから、軽い作業をしながら、慌てずにゆっくり思い出しなさい”と言ってくれた。

「立花さんと言ったかな、今店を閉めて来ますから椅子に座っていて下さい。」

親方は、そう言い残して店のシャッターを降ろし、立花が固まったように座っていた背後から、背中に手を置いて優しく擦ってくれた。

「ちょっとシャワー浴び、晩ご飯の準備をしますから、ビールでも飲んで待っていてください。」

親方は、冷蔵庫から缶ビールを持って来て、立花に握らせ、ニッコリ笑って、その場で上着を脱ぎ下着一枚になり、浴室に入って行った。

その後姿を見ていて、心が動揺した。熟年の男の色気を漂わせ、飛び付いて抱き締めたい衝動に駆られる。

優しい臼杵惣菜屋の主人の後姿を見て、心が和む。

引かれるように立花は、臼杵惣菜屋の親方の後を追い脱衣場に入った。

そこには、たった今まで、親方が着ていたシャツと越中ふんどしが無造作に脱ぎ捨てられている。

立花は、親方がシャワーを身体に掛けている音を聞きながら、まだ温もりが残っている、脱がれた越中ふんどしを手にし、顔を近付けていた。

(ああ、あの人の“ふんどし”だ・・・)

汗と“ちんぽ”の匂い、それに肛門の独特の匂いを鼻に擦りつけ大きく吸い込んでいた。

みるみる立花の“ちんぽ”が勃起していく。親方の“ふんどし”の匂いを嗅ぐだけでは物足りず、口に咥え、甘酸っぱいアンモニアの味を舌で感じていた。

手で自分の“ちんぽ”をズボンの上から擦り、気持ち良さにウットリしていた。

(あ、親方が出てくる気配だ・・・)

立花は、“ふんどし”を元の場所に戻し、ドアーの外からシャワーのカランが閉められ静かになった浴室の親方に声を掛けた。

「あのぉ、良かったら背中流しましょうか。」

「いやぁ有難う、そんな気遣いはしなくって良いのですよ。それより立花さんもシャワー浴びたら・・・。」

惣菜屋の主人が言い終わらない内に、立花は浴室のドアーを開けて入って行った。

浴室には、足を広げ腰を曲げ、洗い場の隅にシャンプーの容器を片付けている親方のピンク色になって、むっちりした尻が見えていた。

その尻の下には、広げた足の間から金玉の裏がダランとぶら下がっているのが見えている。

「流させて下さい。」

立花は懇願するような声で親方に近付いていった。

「あらら、そうですか。だったら風呂に入りましょう。遅くなりますが、お腹空いていませんか。」

「はい、大丈夫です。ここに座って下さい。」

隅にあった小さい椅子を手に取って親方を座るように勧めた。

「それは構いませんが、立花さんも服を脱がないと濡れますよ。はっはははっ。」

親方が振り返って立ち上がり、パックリ割れた鈴口をした“ちんぽ”を目の前でブラブラさせ、大笑いされた。

「あ、そうですね。すぐ脱いできます。」

立花は、慌てて脱衣場で服を脱ぎ捨てて再び浴室に入った。

「いま浴槽に湯を張っていますから、その間に背中を流してもらいましょう。」

親方は、嬉しそうに後ろ向きで椅子に座り、シャンプーとタオルを立花に渡した。

「立派な背中ですね。」

立花は、泡立てたタオルで臼杵親方の背中を擦っていたが、惚れ惚れするような筋肉質の身体に強い興味を抱き荒い息遣いになっていた。

「そんな、褒められるような身体では有りませんよ。立ち仕事ばかりですから足は丈夫ですがね。」

「いいえ、凄い身体です。」

「そんなことより、立花さんの方が、素晴らしい身体をしていますよ。こんな爺の身体と比べないで下さい。」

お互いが誉め合っても仕方ないのだが、立花は本気で親方の身体に惚れてしまった。

「立花さん、交代して今度は私が背中を流しましょう。ここに腰掛けてください。」

臼杵親方が立ち上がって、立花に今まで座っていた椅子を勧めた。

「そんな滅相も無い・・・。」

遠慮して逃げようとする立花の身体が、臼杵親方に腕をつかまれ身体に絡むように倒れ込んだ。

「はははっ、こんな狭いところで、おっと、床が滑りますよ。」

臼杵親方に身体を支えられた時、立花が脱衣室で勃起させていた“ちんぽ”を隠していたが、しっかりバレていた。

身体を支えた際に、腰を引き付けられ腹に硬くなった“ちんぽ”を押し付けてしまっていた。

向き合い、抱き合ってしまい、立花の目の前に臼杵親方のパッチリした黒い瞳と、可愛い唇がピクピク動いて誘惑しているように感じた。

それからは、お互いが大人の納得で唇を合わせ、何時しか舌を割り込ませて吸い合って居た。

臼杵親方の手が立花の勃起した“ちんぽ”を掴んで来た時、立花もまた親方の股間に手を伸ばし、“ちんぽと金玉”を握り締めていた。

その後、臼杵親方は腰を屈め立花老人の股間に顔を近づけ、ずる剥けの“ちんぽ”に舌を伸ばしてきた。

ずる剥けの亀頭部の割れ目を舌先でひと舐めしてから、汗臭い立花老人の匂いも嗅いだ。

ギンギンに勃起してしまった立花老人の“ちんぽ”の先の見事な雁を眺めまわし、ぬめっとした舌を亀頭部に絡めそのまま咥え込むと、口の中へズルンと飲み込んでしまった。

「あ~あっ、親方・・・、そんなぁ・・・。あ、あう、あう。」

そうだ、あれが臼杵親方との始まりだったのだ。

その夜から爺同士の楽しい絡みが始まったことを思い出していた。

立花老人は新幹線の車窓を眺めながら、股間の疼きにそっと手を添え“ふんどし”の中の“ちんぽ”の納まりを直していた。

「あっ!」

立花老人は、頭痛と軽い眩暈を覚えながらも、次々に思い浮かぶ顔に心臓の鼓動が高鳴り出した。

「上野さん、福島さん・・・、二人のカッちゃん・・・。ああ、それに温泉場近くの神社で会った宮司さん・・・。」

こうして自分が生きていることは、親切な人達のお陰なのだ。

故郷に戻り、家族の安否を確認し、田植えの手伝いを済ませたら、何が何でも会いに行ってお礼を言わなければならない。

鼻水を啜りながら溢れる涙を拭こうともせず、上野新平達に対し、感謝の気持ちで胸が破裂しそうだった。

「上野さん、福島さん、臼杵お爺ちゃん、二人のカッちゃん。有難う。きっと会いに行きます。感謝しても、感謝しきれないでしょうが・・・。」

新幹線の車内がざわめき出した。

『ほらほら、富士山が見えて来たよ、綺麗ですねぇ、まだ頂上は雪が残っているわ。』

何人かが席を立って、窓側に寄り富士山を眺めたり、カメラのシャッターを切っている。

立花老人は、腕を組んだまま目を瞑って身動きもしなかった。

(俺は、富士山よりもっと大きい心を持った人達と友達なんだ。)

故郷の事も気になるが、それは、もうすぐ確認出来る。

それより、上野新平さん達との熱い思い出に浸って居たかった。

男と女、男と男、女と女、これらは人間と人間のつながりだ。

人と人との心のつながりなのだ。

それが友情であったり愛情であったり、また憎しみあいであったりもするだろう。

セックスを伴うか、伴わないかは関係の無いことではないだろうか。

世間は、こうした男性同士の関係を“禁断の果実”とか“変態行為”とあざ笑うことだろう。

しかし、男同士でしか味合えない、深い心の“絆”が出来るのだ。

これを知った俺は、世界一の幸せ者かもしれない。

立花老人は、このふた月余りの間に出会って、助けてもらい愛し合えたことに感謝しながら新幹線の車窓に目を向け、大きく嬉しい溜息をついた。

                                                   (完)

ーーーーー
お断り:小説の中に登場する人名、地名、企業名はすべてフィクションであり、故意的なものではありません。(源次郎)
*****************************************************************************
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