上野新平シリーズ(第81話):S市のお爺ちゃん達(1)By源次郎


(1)

上野新平(53)は、S市の出張所長代理で赴任させられ、建築関係の電気、空調、給排水、防災設備、衛生設備全般の施工管理で遅くまでの勤務が続いていた。

善吉お爺ちゃんに言っていた“週末には帰省する”との約束も、如何んせん、ままならない。

「チーちゃん、お疲れ様。所長の自宅に寄って“CDデーター”預かって来てくれた?」

フルフェイスのヘルメットを抜き取り、頭を振って長い髪をパラッと肩まで落とし、手櫛で解かしながら女子社員が事務所に入って来た。

『ペロッ』

新平の顔を見て、悪戯っぽく舌を出し、首を竦めている。

「何だ、忘れたのか。」

ちょっと、ムッとしたが笑顔で女子社員に近付き、軽く肩を小突いた。

こんな調子だから、結婚までの腰掛け女子社員は扱い難いのだ。

仕事を指示しても、責任感が軽いのか、何度も言わなければならないことが多い。

また仕事でミスしても可愛っ子ぶって、悪ぶれた風でもなく、注意してもその場だけ“ごめんなさい”で済ませてしまう。

「済みません、急ぐんでしょ。今から行ってきます。」

「急ぐって言えば急ぐんだけど・・・、どっちみち遅れてしまったので、月末までに提出すれば済みそうだが、あれが無いと役所に提出する書類が作られないんだよ。」

「僕が取って来ましょうか。」

二人の会話を聞いていた若い男子社員が、新平の机の前で打ち合わせていた設計図から顔を上げ、女子社員のミスをフォローしようとしている。

「ああ、いいよ。午後からSKビルの現場に顔を出すから、私が帰りにでも寄って来るよ。」

こうした仕事の細かい指示が、時々上手く捌け無いもどかしさがある。

出張所長代理として赴任し、ひと月余りになるが、何となくスムースに進まない。

所詮は、新米の所長代理でしかない。女子社員にそうした態度で接してくるのが多い。

「上野所長代理、二番に外線電話です。」

「ああ、ヨっちゃん有難う。それと私の事は、前にお願いしていたけど、主任って呼んでね。上野でも良いから。所長代理って長過ぎるでしょう。」

「あ、そうでした。ごめんなさい。」

「いやいや、謝らなくっても良いんだけどね。」

新平を呼ぶのにも本来の出張所長と区別している。それは仕方無いとしても、わざわざ代理って、ことわられるのも何となく面白く無い。

SKビルの現場事務所に顔を出し、工事の進捗状況を見て現場代理人に簡単な施工指示を済ませる。

現場事務所を出て、帰りに入院中の出張所長宅に立ち寄る。

KKTビルの消防設備定期点検データーを、入れていたCDを所長が自宅に持ち帰り、作業していた時に吐血して入院していた。

所長宅のマンションに立ち寄り、「島瀬」の表札を確認し玄関のチャイムを押したが返事が無い。

「ごめんください。」

ドアノブを回すとドアーが開いていた。

カギも掛けないで外出している訳でもないだろうし、在宅していても玄関のカギは掛けるのが普通だと思う。

テレビの“午後のワイドショウ”を視ているのだろうか大きなボリュームで司会者の声や解説者の声がガンガンと玄関まで聞こえてくる。

何度声を掛けても返事が無いので、身体を入れてみる。

“4LDK”に所長夫婦と所長のお父さんの三人暮らしだと聞いていた。

玄関から廊下があり、そこがリビングになっている。

廊下の先のリビングにはドアーがあるが開けっ放していて部屋の中が見通せる。

そこには長めの応接ソファーがあり、その前のテレビの音が聞こえていた。

玄関から奥のほうを眺め回したが、人が居る気配が無いようだ。

仕方なく帰ろうと諦めたとき、リビングのソファーに寝そべっているのか、背凭れに男の人の手が見えた。

(何だ、テレビを見ながら居眠りでもしていたのか・・・、それとも死んでる?)

つま足立ちで、ソファーに寝ているのを確認しようとしていたら身体がよろけてフローリングの床に土足のまま上がってしまった。

(これは不味い・・・)

靴を脱いで揚がり、近くに有った化学雑巾で靴跡を拭き取る。

廊下を歩いてソファーに寝ている人を起こそうとして近付いて行った。

そこには、80歳くらいのお爺ちゃんが、左腕は、ソファーの背凭れに乗せ、右足は床に落として転寝(うたたね)している。

だらしなく半開きさせた口から涎を流し、ステテコとクレープシャツ姿で軽い鼾をかいている。

所長のお父さんだろうが、短髪の白髪頭、それにステテコ付けたお爺ちゃんの姿を見せられ新平はほくそ笑む。

真っ白いステテコの前袷が僅かに開き、そこからこのお爺ちゃんの股間の香しい匂いが漂っているようだ。

目を覚まさせるのは勿体無いくらいだ。出来る事なら、このまま暫らく眺めさせてもらいたい。

美味しそうな唇が軽い鼾に合わせ、ピクッ、ピクッと動いている。

そっと、この可愛い唇を吸いに行っても気付かないのではと思われる。

新平の助平心にムラムラと火が点いてしまった。

お爺ちゃんの寝息をうかがうように、顔を近付け唇を付け、お爺ちゃんの唇をペロッと舐めて見る。

蝿でもとまったとでも思ったのか、多分無意識だろうが、手で唇を軽く拭いている。

(ふぅー、気付かなくって良かった・・・)

次にお爺ちゃんの股間に顔を持っていき、鼾に合わせて腹が膨れたり萎んだりするのを眺めさせてもらう。

真っ白いステテコのモッコリした前袷を指で広げてみた。

出来れば“ちんぽ”を拝ませてもらえるかもしれない。

しかし、その中にはサラシの“ふんどし”が在って、それ以上指を忍ばせるのは、気付かれそうだ。

諦めて、前袷に鼻を近づけ股間の臭いを嗅がせてもらう。

大きく息を吸い込んで、お爺ちゃんの股間の汗と微かな小便の臭いを嗅ぐ。

熟年の“汗”と“ちんぽ”の独特な股間の臭いが堪らなく愛おしく、新平の思考回路を狂わせて仕舞った。

その様子と匂いを嗅いだだけで新平の“ちんぽ”がムクムクと勃起し出す。

(ああ、“ちんぽ”を引っ張り出してしゃぶってみたい・・・)

お爺ちゃんが、気が付かないと思うと、新平の行動も大胆になっていく。

ステテコの中に手を忍ばせ、掌で股間のモッコリを包むようにして被せ、大きさと、“ちんぽ”の向きを褌越しに確かめる。

ぐんにゃりと萎んではいるが、左向きになって金玉の上に胡坐をかいている。

特別大きくは無いが、こんな物だろう。
それにしてもお爺ちゃんの金玉が気になってくる。

(ちょっと期待したのよりデカイようだ)

心持開いている股下に掌をずらせていき、金玉を包むようにして持ち上げてみた。

どっしりして重い。
胡桃のような大きいコロンとした玉が二個掌に乗った感触が伝わる。

そこで、お爺ちゃんの鼾が一旦止まったが、また以前のような鼾を掻きはじめた。

(ふぅー、危なかったなぁ・・・)

大胆な悪戯にも似た行動に新平自信、お爺ちゃんが気が付いたら言い訳出来なかっただろうと反省する。

このまま帰るのも残念だが、気持ちよく寝ているのを起こすのも忍びない。

ソファーの足元に、寝転ぶ前に身体に掛けていたと思われるタオルケットが落ちていた。

それを拾って、お爺ちゃんの身体に、足元から胸へと、そっと掛けてやる。

その時も鼾が止まったようだったが、再び“スゥースゥー”と寝息を掻き出した。

玄関に向かって戻ろうとしていて、ふっと振り返りテレビを消しておいてやろうとソファーの前に行きテーブルに乗っていたリモコンを手にする。

並んだボタンの位置を確認して“OFF”を押す。

「余計なことするんじゃない、聞いているんですよ。」

熟睡しているとばかり思っていたお爺ちゃんが、突然大声でテレビを切ったことに怒って来る。

「あら、済みません。眠っていらっしゃると思ってたものですから・・・。」

新平が驚いて謝り、テレビのスイッチを入れお爺ちゃんを見たが相変わらず目を瞑っている。

(寝言にしては、はっきり喋ってきたなぁ・・・)

「なんだ、今日は実家に泊まるんじゃなかったのですかな。私ならコンビニで弁当買いますから大丈夫だって言ったでしょう。」

(うぅーん、誰かと間違っているようだ・・・)

「お爺ちゃん、出張所の上野ですが、起きているんですか。」

新平がお爺ちゃんの身体を揺すって声を掛けると、タオルケットを剥ぎ、半身を起こし不思議そうに新平の顔を見てくる。

「え、あんたはどなたですか。」

お爺ちゃんは、眠そうな目を手の甲で擦りながら新平の足元から顔を見上げてくる。

まだ完全に目が醒めていないようだ。

「済みません、出張所の上野です。良く眠っていらっしゃったので・・・。」

「え、上野さんって息子の代理の方ですよね。失礼しました、てっきり息子の嫁が帰って来たのだと思って・・・。先程タオルケット掛けてくれたのは上野さんだったのですか。」

「はははっ、玄関からお爺ちゃんがタオルケット落としたまま眠って居らっしゃるのが見えたものですから、失礼だと思いましたが勝手に揚がらせてもらいました。」

「それはご迷惑掛けました。それで何か御用だったのでしょう。」

「はい、お聞きになっていらっしゃると思いますが、所長が持ち帰られていたCDを貰いに来たのですが。」

「え、シーディーって何でしょう、嫁が聞いていたのでしょうね。お急ぎなんでしょうから、良かったら探してくれませんか。」

「でも、勝手に扱っても悪いですから。」

「構いませんよ、さぁ此方です。」

恐縮しながらも、新平はお爺ちゃんの後ろを付いて行き、恐らく所長夫婦の寝室だと思われる部屋に入る。

奥さんの趣味だろうか、黒の絨毯が敷かれた部屋だ。部屋の広さに不似合いな大きい三面鏡がある。

そこにはダブルベットのカバーも窓側のカーテンもピンク色で統一されている。

それに、コロンだか香水だか、ラッパ水仙のような、甘ったるい香りが鼻に付いて具合が悪くなりそうだ。

(うっわぁ、助平な趣味だ。こんな部屋で所長は奥さんに毎夜セックスを強請られているのではないだろうか・・・、そんな無理するから胃癌になるんだ・・・)

新平は、所長夫婦の夜の性生活を覗いて見たようで嫉妬のような気持ちになる。

(毎夜要求していたのは所長だったかも・・・、うふふ)

部屋の入り口で、金縛りにあったように突っ立っている新平に近付いて、お爺ちゃんが手を引っ張ってくる。

「遠慮要りませんから、その辺りの机の中を探して見て下さい。それにしても、この部屋は趣味が悪いなぁ。」

お爺ちゃんも初めて足を踏み入れたのか、眉を寄せ部屋の中を見回し批判している。

「あのぉ、また出直して来ますから、お嫁さんが帰られた時にでも探してもらえませんか。あまりにもプライベートな部屋を探すのも悪いですし。所長も部屋を覗かれたと思うと嫌じゃないでしょうか。」

新平は、その部屋から逃げるようにお爺ちゃんの手をそっと引き離し、リビングに戻った。

部屋から逃げるように出た、新平の後ろを歩いてくるお爺ちゃんに声を掛ける。

「それで、所長の具合はどうなんでしょうか。“面会謝絶”だそうで見舞いにも行けずにいますが。」

「ああ、肺と肝臓、それに骨にも癌が転移していて、インターフェロン治療しているらしいんだが、恐らく駄目だろうな。」

新平が振り返ると、お爺ちゃんは悲しそうに俯きながら呟いている。

「そうですか、でも最近の医学の発達も素晴らしいですから力を落とさず期待していましょうよ。」

お爺ちゃんの両肩に優しく手を乗せ、励ますように言葉を掛ける。

“ピクン”と身体を硬直させたお爺ちゃんの瞳が潤んで新平を見てくる。

小説だと、ここで“身体を引き寄せて唇を合わせる”となるのだろうが現実には、そうは出来ない。

適当な励ます言葉も見当たらない。無責任のようだが、今はそう言うしかない。

「うん、有難う。上野さんは優しいのですね。」

お爺ちゃんの肩から手を離し、リビングの出入り口ドアーまで行って、思い出したように振り返りお爺ちゃんに声を掛ける。

折角のチャンスだ、もう少しこの美味しそうなお爺ちゃんと話をしてみたかった。

「お爺ちゃん、先程コンビニの弁当買うからって言われたようでしたが、お嫁さんは病院に付きっきりで帰宅されないのですか。」

「ああ、ずっと付き添っている。週に一日だけ有料のヘルパーさんを雇って、実家でゆっくりさせています。」

「それじゃ、お爺ちゃんの食事はどなたが・・・。」

所長の母親は、子供の頃亡くなられたと事務所で聞いていたから、この父親は独り者だと知っていた。

「え、私の食事? あははっ、朝食はパン、昼は近所の大衆食堂、夜はコンビニの弁当で食いつないで、間に合わせています。」

「そんな食生活を・・・、お年寄りには良くないですよ。」

「うん、味も濃いけど仕方無いんですよ。自分では何も出来ないし、こんな事情ですから。昔は飯くらいは炊いていたんですが。」

淋しそうに話すお爺ちゃんが可哀想になってくる。

「私も一人暮らしですが、“せめて夕食くらいは”と自分で作っています。」

「それは感心ですね。私は、最近は電気炊飯器も色んな機能があって難しくなっていますから飯も炊けないんですよ。ま、嫁に任せっきりで居候ですから。あははっ。」

「お爺ちゃん、今夜は私の食事を、ここで作らせて下さい。一人分作るのも二人分作るのも手間は同じですから、お爺ちゃんのも一緒に作りましょう。」

「それは有り難いが、上野さんにそんなご迷惑掛けられませんから。」

「迷惑だ何て、全然思っていません。偶には二人分作って、誰かと一緒に食事したかったのです。」

恐縮しながらも嬉しそうにニコニコしたお爺ちゃんに、午後六時過ぎに訪問するからと約束して事務所に戻った。

「上野主任、お疲れ様。」

事務所に戻るなり、気にしていたのか女子社員が声を掛けてくれる。

「ああ、有難う。CDは、チーちゃんが寄ってくれても無駄だったよ。留守番のお爺ちゃんは聞いていなかったみたい。」

「あら、そうでしたか。所長は確かに家人に言っておくからと言われていましたけど。」

「そうだったね、でも奥さんに言っていただけでしょうね。明日にでも病院に電話して聞いてみましょう。」

新平は、事務所に戻ってからは今夜の献立を考えメモを始めた。

新平が作るのは料理と言えるモノでは無いかもしれないが、あのお爺ちゃんの為に何かをしてやって喜んでもらいたかった。

(2)

「お爺ちゃん、お待たせしました。すぐに取り掛りますから、ビールでも飲んで待っていて下さい。」

約束の午後六時過ぎ、思いつくレシピの材料を市場で買って、お爺ちゃんが待つマンションに行く。

「上野さん、お疲れのところ済みませんなぁ。準備は後回しにして、先ずは一緒にビールでもいただきましょうよ。」

「はははっ、そうですか。それでは遠慮なく先にご馳走になってからにしましょう。」

お爺ちゃんが冷蔵庫から持って来た冷えた缶ビールで乾杯する。

「ぷっふぁー、うまい。これを飲みたくって働いているようなものですからね。あっはははっ。」

「そうですなぁ・・・、コレをいただけるから長生きしているようなものかもしれないですな。あはははっ。」

新平は、すぐにでもお爺ちゃんの横に座りたかったが、缶ビールを持って、ベランダ側のカーテンを開けて外を眺める。

「わぁ、凄い、港が一望出来るのですね。」

「ああ、夜の港は綺麗ですが、その綺麗な光も税金ですからね。」

「え、税金の光って何でしょう。」

「あははっ、あの綺麗な光を輝かせているデッカイ船は最近配備された自衛隊のイージス艦です。」

「ああ、そう言うことですか。それにしても綺麗ですね。」

港の美しい夜景に見とれてしまう。新平は一日の疲れを癒される思いだった。

(この景色を眺めながら、お爺ちゃんを抱き締めてキッス出来れば最高なんだが・・・)

「すっかり見とれてしまいました。夕飯の準備に掛かります。お腹が空いたでしょう、大丈夫ですか。」

「いやいや、コンビニ弁当のオカズを肴にして晩飯は食べないこともあるんですよ。」

「私も偶に似たようなことをしますが、やはり三食しっかり食べていないと身体の調子が悪いです。」

「まあなぁ、でも年寄りは、そんなに食べなくても大丈夫ですよ。」

「あはははっ、“年寄り”を言い訳にして、晩酌はたっぷりとですか。お爺ちゃん駄目ですよ。お嫁さんに怒られるでしょう。」

「うぅーん、息子の嫁は手間が省けて助かっているでしょう。はははっ。」

お爺ちゃんは明るく、そう言いながらも言葉の端に淋しそうな感じが伝わる。

「あらら、お爺ちゃん。いつの間に焼酎のお湯割り飲んでいたのですか。」

「ああ、済みません。習慣で何時の間にか・・・。」

照れ笑いしているお爺ちゃんが可愛くって抱きつきたくなる。

「先に風呂にでも入っててもらおうと思っていたのに。これ秋刀魚の塩焼きです。晩ご飯のオカズですが焼けましたので先に焼酎のアテにしていて下さい。」

「いやぁ、済みません。風呂は、とっくに湯を張っていますから何時でも入られます。良かったら、こんな爺ですが一緒に入ってもらえませんか。」

新平の思惑を見透かされたようだ。一緒に入浴しようと誘われて嬉しくなる。

もう少し時間に余裕があったら前日から下拵えし、三十年間の一人暮らしで培った腕を披露したかったが、唐突に思いついたことだったので簡単に仕上げてしまった。

それでも、柔らかい物を選び、味も薄味仕立てでテーブルに並べていく。

目を輝かせて見ているお爺ちゃんの笑顔で満足した。

「ご馳走様、上野さん。美味しかったです、生き返ったようでしたよ。」

「あらあら大袈裟な、今度また機会がありましたら、今日以上の料理を召し上がってもらいます。」

「とんでもないです、これ以上だなんて。でも機会は毎日ありますから、上野さんが気が向いたら、何時でも良いですから、こんな爺で良かったら相手をして下さい。」

「私も一人で食べるのより楽しかったです。是非お邪魔しますから楽しみに待っていて下さい。」

「はい、有難う御座います。あれ、何しているのですか、そんな事は明日にでも嫁にさせますから、ゆっくり座っていてくださいよ。」

残った食材や残飯をビニール袋に詰めていると、不思議そうにお爺ちゃんが聞いてくる。

「ああ、これですか。私がココに来て食事の準備したのを、お嫁さんに気付かれないように痕跡を消しておきます。」

「そんな気は遣わなくっても良いですよ。それに嫁は鈍感ですから気付くことはありません。」

「いいえ、女性は特殊な感覚を持っていますから、自分のエリアを犯されたりしたら、すぐ気が付きますし、嫌がるんですよ。」

「あはははっ、上野さんは面白い方だ。そんなことまで気を遣ってもらって、でも良いじゃないですか。上野さんが来て食事を作ってくれたと言いますよ。」

「あ、お爺ちゃん。今日のことは内緒にして下さい。一度お嫁さんに会ってからでしたら構いませんが、それまでは知られたくありません。」

「そうですか、私は嬉しかったので早速嫁に自慢しようと思っていたのですが、不味いですか。」

「はい、内緒にして下さい。顔は笑っていても心の中は穏やかではないと思いますよ。」

「ふぅーん、そんなものですか・・・。」

納得いかない顔をしたお爺ちゃんだったが、新平の説明で分ってくれたようだった。

食器類の洗い物を済ませ、流し台、食卓を拭き上げ、湯が入ったポット、グラス、焼酎が入った一升瓶、それに片付けしながら作った“揚げ出汁豆腐”を準備して応接セットのテーブルに持っていく。

「お爺ちゃん、お待ちどおさま。焼酎持って来ましたよ。お湯割りでしたね。5・5で良かったですか。」

新平がテキパキと食事後の片づけを済ませ、洗い物している後姿を“うっとり”と感心して眺めていたお爺ちゃんがニコニコしながらソファーから起き上がった。

「うん? 上野さんは飲まないのですか。あ、私が好きなように作ります。」

一つしか準備していないグラスを見て、お爺ちゃんが怪訝そうに顔をあげる。

「はい、私は会社の軽トラックで来ましたから今夜は飲みません。次に来るときは飲ませてもらいます。」

「そんなこと言わないで、お願いだから少しだけ付き合って下さいよ。」

「有難うございます。戴きたいのはヤマヤマですが、こればかりは遠慮させて下さい。飲酒運転したら、会社は即クビになります。」

「それは判りますが、少しくらいだったら・・・。」

「ごめんなさい、少しでも駄目なものは駄目なんです。」

「残念ですね。風呂にも一緒に入ってもらいたかったのに・・・。」

お爺ちゃんは、グラスに入れたお湯の量を目の高さに持って来て確認している。

「お風呂は忘れていません。一緒に入って背中を流させてもらいます。」

「え、それは嬉しい。それじゃ、焼酎は後にして、先に風呂に入りましょう。」

「はははっ、お爺ちゃん。風呂は後でも良いですよ。ゆっくり出来ますから。」

「だったら、酔いを醒ませて帰れば良いでしょう。」

お爺ちゃんは、諦めきれないのか、どうしても一緒に飲みたいらしい。

「それでは、冷蔵庫に烏龍茶が入っていましたので、それを戴きます。」

何とか、お爺ちゃんを説き伏せ、今夜は“禁酒”で通す事にした。

焼酎と烏龍茶のグラスで乾杯する。

一旦飲みだすと、相手が酒を飲んでいないのも気にならないらしく、饒舌に、退屈な日々を送っている事を面白、可笑しく話してくれる。

お爺ちゃんは、焼酎を4、5杯飲んだあと“ちょっと横になります”と言ってソファーに寝転んでしまった。

「お爺ちゃん。結構飲んだようですが、大丈夫ですか。」

「ああ、楽しかった。何時もより少し大目だったかな、あはははっ。」

一旦起き上がって、目を瞑ったまま豪快な笑い声のあと先程のソファーで横になった。

「少し酔いを醒ましてから風呂にしましょう。それまで足でもマッサージしますからね。」

新平は、思惑通りだと苦笑しながら、タオルケットを掛けてやり、足の裏からマッサージを始める。

「ああ、上野さん。すみませんね、あ、ああ、気持ち良い。上手いですね・・・。あ、ああ、有難う・・・。」

お爺ちゃんは、どこまで意識があるのか判らないが、気持ちが良いのは確かなようだ。

足首から、脹脛(ふくらはぎ)、膝上と揉んでいると軽い寝息をかきだした。

こうなれば、新平の餌食になったようなもので、悪魔に変身した新平が、優しく、それでいて嫌らしく“ニヤリ”と笑みを浮かべる。

邪魔なタオルケットをお爺ちゃんの腹の上まで撒くりあげステテコの上からだったが太腿の内側を揉んで行く。

“急ぐことは無い、落ち着け、落ち着け・・・”と、自分に言い聞かせながらも騒ぐ心が、ついつい足の付け根まで手が延びていく。

鼠頚部(そけいぶ)に指が勝手に届いて柔らかく揉んでいる。

ちょっとだけだったが、手の甲が、柔らかい“ふにゃ”っとした金玉に触った。

その時、お爺ちゃんの寝息が停まったような気がしたが、構わず両方の鼠頚部を撫でるように擦る。

ステテコがモッコリした部分から目が離せない。見ないようにしようとしても、いつしか凝視している。

モッコリ膨らんだ所に顔を近づけ、大きく息をして臭いを嗅いで見る。

先程、立ち寄ったときに嗅いだ時より汗の臭いも独特の“ちんぽ”の臭いも強いようだ。

あれから時間も経つし、しっかり汗をかき、小便にも行って汚したのだろう。

新平の“ちんぽ”にスイッチが入ったように、その臭いで一気に勃起してしまった。

(見たい、触りたい、しゃぶりたい・・・)

思いは、段々と増して行き“脱がせっちゃえ”と言う悪魔の声に後押しされ、ステテコの腰のゴムに手が入っていく。

ゴムを大きく広げ、お爺ちゃんの腰を持ち上げるようにして膝まで下げてしまう。

ここまで下げたのなら足首まで下げても同じことだ。

何か言われたら“素肌”を直接マッサージした方が効くからとでも言い訳しよう。

ステテコが下げられ、露わになった股間部の“ふんどし”は、用を達しない状態で“ゆるゆる”になっている。

そこには見たかった金玉と、それに付属したような“グニャちんぽ”が一体になってはみ出している。

からし明太子状の“ちんぽ”を摘まんで持ち上げ、汗でベットリと、くっ付いていた金玉から離され一人前の独立した“ずる剥けのちんぽ”の姿になった。

(これを大きく芯が入った状態にするのが、新平に課された仕事だ)

どこからとも無く“悪魔の声”が新平の耳元に囁いてくる。

鼠頚部をマッサージしながら、新平は、からし明太子状態の“ちんぽ”をズルッと口に吸い込んだ。

それを舌の上で転がしながら、お爺ちゃんの小便の味をしっかり味合う。

“ぺろっ”“ぽろっ”と口から出し入れしていると、心なしか重さが変化したように思えてくる。

お爺ちゃんの金玉の裏側を舐めて見る。汗とアンモニアの臭いが舌先に辛味を感じる。

膝を曲げて股を開き、金玉の下の奥を覗く。そこには飴色の花びらをした小菊が咲いていた。

顔を股の中に突っ込んで、菊座の香しい匂いに満足させられる。

ウォシュレットで綺麗に洗われているだろうからと期待できなかったが、好きな独特の匂いと苦いようで甘い味がした。

唾をたっぷり付け、人差し指で菊座の周りを撫で回し、時々中心部に指を押し当てて侵入を試みるが、括約筋の防御が硬い。

新平は、身体を起こし自分のズボンのファスナーを開け、先程からヌメヌメと滴り落ちていた先走りを指で掬い、それをお爺ちゃんの菊座に塗り込んでいく。

滑りが良くなった指が“ズルズル”っと菊門に侵入していく。

その時、お爺ちゃんの身体がビクンと跳ねた。

“危ない、危ない・・・”

差し込んだ中指で、直腸を弄繰り回していたのを止めて様子を伺う。

止まっていた寝息が再び聞こえ出し胸を撫で下ろす。

いま、気付かれたら言い訳出来ない。これは誰が考えても完全な犯罪だ。

あえて、その犯罪に立ち向かう新平は、いまや悪魔に唆(そそのか)された変質者そのものだ。

そんな時、島瀬老人は心地よい深い眠りの中、えも言われえぬ快感に身もだえしていた。

それは、若い娘とのセックスのようだが、男の喜びと、女の喜びを同時に味わっている不思議な快感であった。

(どうして女の快感が自分の身体に感じるのだろうか、その上男としての股間から金玉の痺れるような快感だ)

眠っているのだが、夢では無いようだし、だからと言って何十年もの間女性との交わりも無く“せんずり”掻くだけで過ごして来た。

その“せんずり”も十年以上も掻いていない。またこの歳で男の喜びを体験できるはずも無い。

やはり、これは夢なんだ。今夜は何時に無く楽しく旨い酒を飲み過ぎてしまった。

(夢でも構わない、それでも覚めないでくれ・・・)

島瀬老人は、夢と現実との狭間で、自分の場所が判らないまま、ただただ不思議な世界に足を踏み入れた思いだった。

新平は、悪魔に後押しされたままの状態で、自分がしていることが羞恥心とか常識とかの分別が判らない夢遊病状態で呼吸も乱れ、懸命に、お爺ちゃんの“ちんぽ”をしゃぶり金玉を揉み、指はお爺ちゃんの菊門を忙しく抽送させていた。

そっと、菊門から指を抜くと、立ち上がってズボンの中からギンギンに勃起した竿を引きずり出した。

お爺ちゃんの顔の前に近付いて、唇に先走りの糸を引いたまま押し付けに行く。

(あれ? 何だろう、唇に当たる物は・・・、温かくて硬く、そのくせ柔らかいような・・・、でも・・・、しゃぶって見たい)

新平の雁先からはスゥーと蜘蛛の糸のように先走りが垂れ下がり、お爺ちゃんの唇をべっとり濡らしている。

お爺ちゃんの唇が軽く開けられ、その隙間から口の中に“ちゅる”っと吸い込まれていく。

ジュルジュルッと吸い込み、ペロペロと唇を舌舐めずりしながら鈴口をも舐めてくる。

(あ、ああ、このままでは射ってしまう・・・)

お爺ちゃんの動きを見ていて、流石の新平も怖くなってくる。

ズボンの中に、なんとか“ちんぽ”を仕舞い込み、ファスナーを閉めた。

(ふぅー、危なかったなぁ・・・)

新平は、我に戻り、今までの行為がバレ無かったことが不思議でもあり、有り難い思いだった。

(あそこで目を覚まされていたら、今日は飲んでいないことだし、酔っていたからとの言い訳も出来なかったのだ・・・)

「お爺ちゃん、そろそろ風呂に入りましょうか。少しは酔いは醒めましたか。」

お爺ちゃんの顔を覗き込むようにし、起こしてやろうと首の下に腕を回していく。

その時、新平には信じられない事が起こった。

眠っていたはずのお爺ちゃんが、新平の後頭部を片手で掴み、もう片方の手で巻き込むように首を引き付けてきた。

新平とお爺ちゃんの目が合ったのは瞬間で、新平の唇がお爺ちゃんの唇に重なってしまった。

「うっ!」

驚いた新平は、お爺ちゃんに唇を付けたまま、この先どうした物かと悩んでしまう。

(先程までの自分の悪戯が気付かれていたのだ。どうしよう、このままでは“変質者”と言われ、ここを叩き出され、会社にも喋られてしまうだろう。でも・・・、何故唇を付けてきたのだろう・・・)

数秒間、新平は早送り状態で、今後の自分の状況や、現在の不可解なお爺ちゃんの動作に理解できず、じっとしたまま唇を重ねていた。

ぺろっと、お爺ちゃんが新平の唇を舐めに来た。

(あ、ひょっとしたら・・・、お爺ちゃんもそのきになっていたのかもしれない)

恐る恐る、新平はお爺ちゃんの唇を舌先で抉じ開け、吸い付いてみた。

お爺ちゃんも、新平の舌を吸い込み絡ませて来る。

(あ、ああ、やっぱり・・・、その気になっていたのだ・・・)

こうなれば、新平の舌技が上まわっている。お爺ちゃんの身体を抱き締め、口中を舐めまわしていく。

お爺ちゃんの酒臭い唾液を吸い込み、自分の唾液を送り込んでやる。

「ふがふが・・・、あんあん・・・。」

お爺ちゃんは新平の巧みなリードで、身体を震わせながら荒い息遣いで舌を絡ませ“チュゥチュゥ”と音をさせて飲み込んでいる。

やおら、お爺ちゃんから唇を離し、上半身をを起こしてやる。

お爺ちゃんは、俯いたまま新平の顔を見てくれない。

「お爺ちゃん、ごめんね。」

新平が先に謝ってみる。お爺ちゃんは、その声で、やっと顔を上げて新平を見てきた。

「いやいや、上野さん。謝るのは私の方です。変わった夢を見ていたようで、どうかしていたのでしょう。ごめんなさい・・・。うっうぅ~・・・。」

泣き声になっているお爺ちゃんを抱き締め、改めて新平から唇を吸いに行く。

「お爺ちゃん、謝らないで下さい。私も眠っている可愛いお爺ちゃんの顔を見ていてキスしたかったのです。悪戯にでもキスしようかと思っていました。」

驚いたように新平の顔をマジマジと見詰めてくるお爺ちゃんの目が潤んでいる。

「そんな、80にもなる汚い爺を可愛いだなんて、上野さんは優しいですね。爺に恥を掻かせないように気遣ってくれているんでしょう。」

「汚いだなんて、年齢には関係有りません。昼間来た時からお爺ちゃんが好きになっていたのです。だから、こうして晩ご飯の準備して近付いたのです。もっとお爺ちゃんと話がしたかったのです。」

「上野さん、有難う。でもウソはいけません。私は男ですよ。それを好きだなんて、うっうぅ~。」

「お爺ちゃん、ウソでは有りません。好きになってしまったのは本当です。」

半信半疑で新平の話を聞きながら、お爺ちゃんは、またしても俯いてしまった。

それを見て、新平はお爺ちゃんの顔を下から覗き込むようにして唇を付けに行った。

それに対し、お爺ちゃんは硬く唇を閉じていたが、申し訳無さそうに新平の舌を吸い込んできた。

「あ、ああ、上野さん。あ、ああ・・・。これも夢なんでしょうか。」

「お爺ちゃん、夢ではありません。いや、夢かもしれないですね。でも私がお爺ちゃんが好きだと言う事は本当です。」

「あ、ああ、嬉しい・・・。夢でも良いです。だったら醒めない様に・・・、あ、ああ。」

お爺ちゃんの両腕が、新平の背中に回され、抱きついてくる。

それが、長い長いディープキッスの始まりであり、また、その後の二人だけの秘密の行為に繋がっていった。

(つづく)

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