上野新平シリーズ(第97話):愛するお爺ちゃん再び(5)By源次郎


(9)

川端通利(かわばたみちとし・70)は、午前九時に経営する喫茶店“ロンドン”に出勤し、十時開店まで軽食の下こしらえや、食器などの点検をしている。

この喫茶店も開業してから30年近くにもなる。あの頃は若かったので、この仕事で妻子を食わせていけるのか自信が無かった。

しかし、タイミングがよかったのか周りがビジネス街になり、ビルが建ち人通りも増え売り上げも伸びていった。

今夜は、約束した上野新平が一週間ぶりに来てくれることになっている。

居酒屋で待ち合わせることにしていたが、はやいところ二人っきりで逢いたいと言い出してくれたので喫茶店を早めに閉め、軽食とワインを準備して待っている。

照明を落とした薄暗い店内をぼんやり眺めながら、今まで思い出すことも少なくなった昔のことが懐かしく思い出されてくる。

生まれ育った田舎の農業高校を卒業したが、それも園芸科だったため就職先も無く、自宅近くの運送会社に運転助手として就職した。

五年ほど勤め、普通車運転二種免許を取得したのを機会に自宅を出てタクシー会社に勤めを換え、運転手を始めた。

五十年前のことだが、その運転手として働き出した初日の夜に出会った藤崎との出逢いが人生をかえてしまったのかもしれない。

運転手としての一週間の研修を受けた後、独り立ちとして街を流し始めた初日だった。

昼間は、一週間の研修でそこそこ町並みも覚え迷うことなく勤められたが、夕食後再びハンドルを握って薄暮の街を流し始めた時、昼間との感じが全く違っているのに驚き不安がつのる。

まぶしく点滅し、美しく川面に輝くネオンに映し出された街の通り、そこを歩く酔客を避けながら汗だくになる。

午前0時頃、キャバレーやクラブから追い出された酔客が狭い通りを我が物顔に大声を上げ千鳥足で歩いている。

そうした酔っ払いと喧嘩しながらも先輩運転手達は、乗客を拾い、雑踏を縫うようにスイスイと走り去って行く。

“俺、やっていけるのかな・・・”いきなり都会の夜を流し始めてはみたが、全く客を捕まえられない。

“あ、客が手を上げている・・・”と近付いていこうとすると、他の会社のタクシーが被せるように割り込んで入り込み、急ブレーキで追突を避けられたが、客を先取りされ走り去って行く。

何度もこうした状況があると臆病になってくる。

後で分かったことだが、新米運転手は会社から貸してくれる車のナンバーが若いのだ。それを見て別の会社の運転手に“新米”だとばれていたらしい。

田舎者の川端は、まだまだ勇気が無い。客がいそうもないネオンが消えた暗い道に入り道路端に停車し窓を開け、客が忘れていった好きでもないタバコに火を付け大きく溜息をついた。

ルームミラーに、車の後方の酔っているらしい紳士が写った。道路の端に停車していたのでその紳士は、一度左側を通り抜けようとしたが思い直して右側に回り川端の顔をチラっと見て通り過ぎた。

生え際の白髪を隠すようにポマードで固めクシの線がくっきりと見えている。エリートサラリーマンなんだろうか、白のワイシャツに地味なネクタイの結び目をチョット緩めている。

メガネのためか、ギョロっとした大きな真っ黒い瞳だ。それに長い睫毛が邪魔くさそう。

一瞬だったが、その紳士の目じりが下がった可愛い顔を見て、“こんな紳士が客になって深夜の遠距離でも乗ってくれたら・・・”と考える。

それに恥ずかしいことに愚息がムズムズするのは何故だろう。

ソープランドには何度も行って女を抱いて欲求を満たしてはいたが、そこの待合室でそわそわして順番を待っていたそれに似た感覚だ。まだ男色経験の無い川端には、不思議だと思ったが、それ以上の感情は無かった。

「あ、すみません。邪魔になったでしょう、お気をつけてお帰り下さい。」

紳士の顔を見た瞬間、川端はタバコを灰皿でもみ消し何故だか謝罪していた。

黙っていても良かったのだろうが車には大きく社名も入っていたので、後からクレームの電話などがあっても困ると思ったからでもあった。

その声が聞こえたのか、フラフラと歩きながら振り向きもせず左手をチョット挙げ先の方に行ってしまった。

売上金を入れたガマぐちが気になって覗いて見たが、これでは会社が言ってる最低売り上げのノルマにはとてもじゃないが足りない。

明日の朝8時の勤務交代までに、深夜売り上げがどのくらいにまでなってくれるのだろうかと心細くなってくる。

気を取り直し前照灯を点け発進させようとして前方を見ると先程の紳士が公園入り口の階段下でうずくまっている。

近道しようと公園を通るつもりだったのだろうか。

(具合でも悪いのかな、あんな酔っ払いを乗せて車内でも汚されたら大変だ・・・、)

見習いの時の研修で、先輩運転手が、臭いの除去と“掃除が大変だ”と、こぼしていたのを思い出す。

(でも、ほっとく訳にもいかないようだ・・・、厄介なことにならなければ良いが・・・)

車を徐行させながら紳士に近付いてみる。

「どうしましたか・・・。」

助手席の窓ガラスを下げ声を掛けて見た。

それでも、うずくまった紳士は振り向こうともせず返事をしない。

(何だ心配して声掛けてやっているのに無視かよ・・・)

川端は、ちょっと“ムッ”となって、そのまま走り出そうとアクセルを踏みながらサイドミラーに目をやった。

そこには、苦痛そうに眉を寄せ、泣き出しそうな顔で車に向かって手を挙げている紳士の姿が映っていた。しかし身体は石段の下にうずくまったままだ。

(呼んでいるようだが、乗車してくれるのかな・・・)

川端は、半信半疑で運転席から降り紳士に近付いて行った。

「ああ、運転手さんか。公園のトイレに行きたかったんだが、つまづいて弁慶の泣き所を打ち付けてしまった・・・。う、うう、すまんが立たせてくれ、漏れそうなんだ。」

上品な匂いがする紳士の脇の下に頭を入れ、左腕を肩に掛けさせ立ち上がらせ驚いた。

左足のズボンの膝下が破れ、真っ赤な血が滲み出し対照的に真っ白いオナゴのような脛がみえる。

公園の奥にある20mほど先のトイレまで肩を組み右の脇の下に腕を入れ抱え込む様にして連れて行く。

背負ってやった方が早かったが、長い時間この紳士の身体を密着させ抱かかえながら歩きたかった。

トイレに近付くと、独特のアンモニアの饐(す)えた悪臭が鼻を突く。当然、当時は汲み取り式の処理だったろう。

木立に囲まれた公衆便所は、電灯も無く、小便するところも床から一段高くなっているだけで、今のような陶器の小便器などがなく横に数人並んで用をたす形だ。

どうにか一段上に抱えあげ、手を離そうとしないのを不思議に思ったが、小便をする間、身体を支える様な掴まるものが無かった。

(そうだったんだ・・・)

紳士の背後から腰と肩を支えてやると、嬉しそうに振り返って礼を言おうとしていたが身体が不安定なため横向きのまま礼を言ってきた。

腰を後ろに引き、ファスナーを下げ右手で股間を弄って自分の“一物”を探し当てたようだ。

「ふぅー・・・。」

勢い良く小便が前の壁に音を立ててあたり、その下の溝に流れ落ち右側に泡を立てながら流れている。

小便が済むと紳士は、横向きで“一物”をぶらんぶらんと振りながら川端に見せようとしているように思えた。太くってズル向けの“一物”は勃起している風では無かったが中年紳士の“一物”にはそれなりの魅力があった。

川端が見ていることを知って、嬉しそうにニコニコ笑いながら“一物”は完全に仕舞わず、身体を預けるように横向きの姿勢で、一段下で身体を支えてやっている川端に倒れこんできた。

それを受け止めてやった時、酒臭い臭いがして顔を背けようとした川端の唇が生暖かく、ぬめっとしたものを感じた。

(え、何だったのだろう・・・)

呆然と立ち竦んでいる川端の身体から離れ、片足飛びで屋外の手洗い場に出て行く紳士を見送っていた。

あの時、川端が唇に感じたのは紛れもなく紳士が舌で唇を舐めたのだと思ったのは、紳士を自宅前まで送ってやって吃驚するほどのチップを受け取り、その紳士が庭の門扉をあけヨロヨロと玄関に歩いて行く背中を見送っている時だった。

(あ、ひょっとして、あれはキッスされたのでは・・・)

ソープのオナゴとのセックスは何度も経験していたが、そこではキッスなどしてもらったことが無かった。

その日は、片手でハンドルを握り、勃起してくる股間を懸命にズボンの中で、上向きにしたり、左右に納めなおし、我侭な竿をなだめながら深夜作業に励んだ。

先程、紳士を連れて行ってやった公衆トイレの前を何度か横目で見ながら通過したが、明け方我慢できなくなり車を降りトイレに行ってしごき、気持ち良く小便受けの壁に精液を飛ばした。

子供の頃から、大人の“ちんぽ”や“ふぐり”には人並み以上とも思えるくらい興味があったが、彼らをセックスの対象として考えたことがなかった。

しかし、あの近所の禿げたオヤジも“せんずり”掻くのだろうかとか、もし自分が掻いてやったらどんな声を上げ気持ちよさそうな顔をするのだろうくらいは頭の中で想像したことはあった。

夜が開け、仕事を終わらせ会社が持たせてくれていた釣銭と売上金を照らし合わせ引渡しを済ませる。

洗車を済ませ、寮に戻ってそのまま夕方まで爆睡する。これから、こうした毎日が続くのだ。

自分に言い聞かせ、好きで転職したタクシーの運転手だったが、思った以上に過酷だったことに、思惑と違い大変な仕事だと覚悟させられる。

ここで止める訳にはいかないのだ。研修を受けている時、母親から仕送りの催促を受けていた。

以前勤めていた会社には自宅から通勤していたので毎月の飯代と言って給料日には、いくばくかのお金を家に入れていたが、家を出てからまで仕送りをするのは大変な事だが、実家の現状を考えるとむげに断ることも出来ない。

父親は、戦死しているが、その父親の弟が帰国したため、母親が再婚させられていた。

いくばくかの田畑で農業をしていたが、その叔父さんにあたる義父も時々日雇いの仕事で、唯一の現金収入を得ていた。

それに歳が離れた弟や妹もいる。こうした家庭の事情もあって一日も早く実家を出て独立した束縛されない生活をしたかったのだが、母親にしてみれば苦労して育てた息子が早く仕送りをして家計を助けてくれるのだと思っているのだろう。

翌日の勤務に就いて間もなく無線の呼び出しがあったが、よもや自分では無いだろうと聞き流していた。

いつまでもマイクを取らなかったので、近くを走っていた先輩運転手が喧しくクラクションを鳴らし教えてくれた。

(指名・・・、まさか、何かの間違いだろう。まだ、お得意さんなんていないことだし・・・)

半信半疑で恐る恐るマイクを握って応答した。

「か、川端・・・、あ、違った。33号車、空車です、どうぞ。」

「了解、33号車は、東晋銀行瓢箪池支店通用口。まるきゅういちまる、赤坂さん、どうぞ。」

「まるきゅういちまる? あ、9時10分ですね。ひょうたん池支店、赤坂さん? ですか。」

「そう、赤坂さんです。どうぞ。」

「33号車、了解。」

その赤坂さんと言うのは、藤崎の偽名で、今までの指名していた運転手への気遣いだった。

あとで聞かされたことだが、その指名していた運転手の名前を聞くことは無かったが、身体の関係も無かったそうだ。

(10)

「いいから、そのまま、川ちゃんの太くって固いのをあてがって腰を押し付けるんだ。」

「う、うん・・・、でも、お父ちゃん大丈夫なのか・・・。」

藤崎が素っ裸でせんぺい布団に四つん這いになり高く突き出した尻穴を眺めていた川端だったが、自分の“一物”は、はちきれんばかりに勃起しビクンビクンと天を向いて揺れている。

先程から言われるままに肛門に軟膏を塗り指を突っ込んで出し入れしていたが、まさか自分の“一物”を入れる準備とは思っていなかった。

指を出し入れしていると、時々呻き声にも似た善がり声を出していた藤崎に、いよいよ“一物”を入れろと言われ困惑していた。

「お父ちゃん、それはチョット無理だよ・・・。」

「大丈夫だ、構わず突っ込んでみてくれ。」

川端は、藤崎の菊門の綺麗な蕾がヒクヒク呼吸している様子を見とれたまま“こんな所に俺のちんぽが入る訳ないだろう”と眺めていた。

これまで、勤務の日は、指名してタクシーを利用してくれ、また休みの日は夕方呼び出され自分の給料では払えない高価なキャバレーやクラブに飲みに誘ってくれた藤崎が懇願するように言って来る。

要求に答えたいのは山々だが、こればかりは出来そうに無い。藤崎だって、今までシックスナインでしゃぶりあっているのだから俺の“ちんぽ”の太さは判っている筈だ。

何度目かの誘いで飲みに行っての帰り、初めて会った公衆便所がある公園の前を肩を組んで歩いている時、“小便に付き合え”と言われ何の疑問も無く連れしょんをした。

その後、あのアンモニアの強い臭いがする所で抱きつかれ唇をあわせられたのだった。

川端は、一緒に飲みながら楽しそうに話してくる藤崎の唇を見ていて、いつかこの可愛い唇を舐めて見たいと思っていた。

その想いが、いつしか藤崎とキスをして見たいとおもうようになり、また時々話をしながら、それとなく川端の太股に片手を乗せてきた時など背筋に電気が走るような嬉しい感触を楽しんでもいた。

素っ裸で藤崎と抱き合ったのは、安い同伴ホテルだった。

“飲み過ぎたから休んで行きたい”と言い出した藤崎を心配しながらも“こんなホテルで・・・、それも男同士で・・・”と躊躇したが背負っていた背中で泣き出しそうな顔で頼み込まれ初めて入った。

先に風呂に入って、冷たい水を飲ませて寝せていた藤崎の顔を覗き込んだとき、むっくり起き上がってバスタオル一枚の身体をだきしめられ唇を吸われた。

その時、何時の間に脱いだのか藤崎も素っ裸だった。

(ああ、これがキッスなんだ・・・)

ぬめぬめとした藤崎の舌が、生き物のように唇を舐めまわし、それが口の中に入り込んできて暴れまわる。

それだけで身体が痺れ、手足や肩と勝手に震えたりびくんびくんと動いてくる。

見よう見まねで、藤崎がしてきたように舌を巻き付け唾液を送ったり飲んだりしていた。

いつの間にか、藤崎の頭が目の前から消え、川端の胸や腹を舐めている。こそばゆい感触を我慢して身体をくねらせ足をバタバタさせていると、藤崎の身体が、足先に跨り股間に顔を埋めてきた。

(な、なにをするんだ・・・)

川端の硬直したように勃起した“ちんぽ”をチロチロと舐めだしてきたのだ。

鈴口に舌先をあて、入るはずの無い尿道に舌先を入れるように突っついてくる。

(あう、あう、駄目だ・・・)

藤崎に“ちんぽ”を咥えられ舌を巻くようにして数回根元までの往復をされただけで若い川端の我慢も限界に達し、コントロールできない状態で藤崎の口の中に何度も何度も射精していた。

“ごめんなさい・・・”

心の中で叫びながら詫びていたが、それは声にはならず、ただただ荒い息と何故だか鼻汁が出て来てそれを飲み込んでいた。

その間、藤崎は喉奥に打ちつけて来る青臭い精液を感じ、嬉しそうに7発8発と数え、だらだらと最後の雫が垂れるのを確認した後で、やおら“ゴクンゴクン”と飲み込んでいた。
川端は、目を瞑り、ただただ押し寄せる快感に酔いながら、射精している時から、また射精後のけだるさに呆然と天井を眺めていた。

「川ちゃん、どうだ良かったか。」

いつのまにか藤崎はシャワーを浴びバスタオルで身体を拭きながら布団に寝ている川端を見下ろしていた。

「お父ちゃん、ごめんね。我慢出来なくって射ってしもうた。」

「あはははっ、川ちゃん、美味いの御馳走になったよ。たっぷり濃いのをね、有難う。」

藤崎に礼を言われ、何となく分からないまま、矛盾した感じがしたが、それが目的だったのだろうとも思えてきた。

それが最初の交わりで、その後は何も無く、川端としては物足りなさを覚え勤務中も藤崎の顔がちらついて愛おしく早く会いたいと願うようになっていた。

どうしてだかタクシー乗車の予約もない。どうしたことだろう。

それから一カ月後に逢ってくれ、いそいそと出掛けて行った。海外出張で留守だったらしい。

そして、その二回目のホテルで、初めての男同士でのシックスナインを強要された。

強要されたと思ったのは最初だけで、互い違いに寝て上向きになっている川端の顔の上に藤崎の“大人のちんぽ”が乗せられ、それがあこがれていた藤崎の“ちんぽ”をまじかに見せてもらった最初だった。

考えて見たら、藤崎の策略で川端の出方を観察していたようだ。なにも二回目でなく最初のときに“ちんぽ”位は、扱かせるか、せめて触らせて良さそうなものだったのだ。

しかし、藤崎も銀行員という立場から川端に裏切られたりしたら大変だと思っていたのかもしれない。

それともジラスためだったのか、川端としてはどちらでも関係ないことで、早く藤崎の“大人のちんぽ”に触らせてもらい、出来ることなら口に咥えさせてもらいたかった。

赤黒く熟れた果実を思わせるプリンプリンとした亀頭、それに川端のより一回り太くて長く、それに静脈が浮き出ている竿が、目の前にぶら下がっている。

そっと顔を上げて鼻先で股間の茂みの臭いを嗅いでみた。

軽いアンモニアと汗の臭い、それに独特の“ちんぽ”から染み出たオトコの饐(す)えた臭いを大きく吸い込んでいると助平脳が刺激され自分の“ちんぽ”が痛いほど勃起していく。

(あ、咥えられた・・・)

そう思った瞬間、川端も目の前の“ちんぽ”を一気に咥えこみ喉奥深く咥え込んでいった。

その後は、互いの“竿”を尺八し合い一緒に断末魔の雄たけびを上げて果てた。

今夜は、三回目のホテルでのまぐわいだった。一緒にシャワーを掛け合い、いつしか湯を掛けっぱなしで抱き締め合い、それぞれ片手は相手の“ちんぽ”を握り、唇をむさぼりあっていた。

「あ、お父ちゃん。駄目だ・・・、あ、ああ、射っちゃうぅ・・・。」

川端は、洗い場で立ったまま、藤崎の股間に向け“ビシンビシン”と射精してしまった。

「あっはははっ、川ちゃんは早過ぎるんだよ。若いからね、でも丁度良いかもね・・・。」

何かしら川端には“丁度良いかも”の意味不明の言葉が気になりながら風呂を出て布団に入った。

「川ちゃん、今度は指を二本に増やしてやって見てくれ。すこしは肛門が弛緩して広がるだろうからね。」

言われるまま、軟膏をたっぷり指に取り、中指と人差し指を押し入れて見た。

「あ、入った。お父ちゃん、大丈夫か。」

「う、うう、あ、ああ、川ちゃん、その調子だ、あ、ああ、うまくなったな、あ、ああ・・・。」

川端は、指を直腸の中でクリクリ捏ね回していくと、金玉の裏側に突起したような柔らかい袋のようなものに触った。

「あ、ああ、川ちゃん、それ、それ、そこが・・・、あ、ああ、い、いい・・・、多分、前立腺だ。あ、ああ・・・。」

そんな身体の中の臓器の名前など知るわけが無いのだが、藤崎が異様に善がるので面白くなって、そこを重点的に指先で摩ってやった。

「あ、ああ、川ちゃん、もう大丈夫だ。そろそろ入れてみてくれ。」

荒い息遣いで“ちんぽ”を入れてくれと言ってくる。まだ諦めていないようだ。

川端は、先程から萎えかけていた“ちんぽ”をベトベトに軟膏が付着していた手で扱き勃起を促し、膝立ちで藤崎のピンク色の双丘に近付いて行った。

菊座に亀頭を押し当て、両手で藤崎の腰骨を掴みジワジワと自分の腰を押し付けていく。

「あ、ああ、丁度良いところに入ってきている。あ、ああ、そのまま突き刺して・・・、あ、ああ、うっうう・・・、あははっ、ちょっと、あ、ああ、痛いけど・・・、うんうん・・・。」

菊門には強い抵抗があったが、構わず押し込んでいくと、生暖かい広い空間に入っていった感覚だった。

そのままズルズルと押し込んでいくと、亀頭に何かがあたった。

(うん、このあたりが行き止まりなんだろうな・・・)

そう感じ、暫くそのままで待っていると、腸壁が萎むように、また竿全体を包み込むように締め付けて来る。

それは、柔らかい真綿で優しく包み込むようにジワジワと締め付けて来る不思議な感触だった。

「あ、ああ、お父ちゃん。何か気持ち良いんだけど、このままで良いのかなぁ・・・。」

「うん、それじゃゆっくり出し入れしてみてくれ。おま○こしたことあるだろ、あの調子だ。あ、ああ、そうそう・・・、あ、ああ・・・。」

10分程抽送していたが、川端は又しても我慢できなくなった。

生暖かいヌメヌメした直腸内は、抽送にあわせタイミングよく締め付けを繰り返してくる。

「あ、あれ・・・、お父ちゃん、あ、ああ、射っちゃう、あ、ああ・・・。」

川端は、浴室で射精したばかりだったが、初めて経験するアナルセックスの気持ちよさに我慢出来なくなっていた。

「お父ちゃん、お父ちゃん、あ、ああ、駄目だ・・・。あ、ああ、射っちゃう、あ、ああ、い、い、射っくぅ・・・。」

川端は、先程の風呂で射精したとき以上にたっぷりと藤崎の直腸に身体を震わせながら射精してしまった。

気持ち良さと気だるさを感じ、天井を仰いで大きく深呼吸を何度も繰り返し、汗でじっとり濡れた藤崎の背中に抱きついていった。

「川ちゃん、疲れたか。そのまま抜かないで待っててくれ・・・。よいしょっと。」

藤崎は、身体を捩り、片足で川端の身体を交わし器用にクルッと上向きにし正上位の体位になって川端の身体を引き寄せ抱きついて来た。

あっけに取られている川端の唇に吸い付いて舌を捻じ込んでくる。

川端の“ちんぽ”は半勃起状態にまで萎えかけていたが、甘い囁きと、耳朶へ息を吹き掛けられ、又してもムクムクと固くなり始めた。

その初夜とも言える二人の絡みは短時間ではあったが、若かった川端は四回も射精してしまった。

こうして始まった二人の関係は、川端が幼馴染と結婚し二人の子供が産まれても続いた。

川端が独身時代に、藤崎がロンドン支店に単身赴任した時はタクシー会社を休職して付いて行き、三年間の甘い新婚家庭のような同棲生活も送った。

その後、川端は藤崎の勧めで会社を退職し、個人タクシーを開業したが、これも藤崎の金銭的のバックアップがあったからだった。

子供が出来ない藤崎夫婦の家にも何度も遊びに行き宿泊していたが、奥さんに“わが子同然”に可愛がられていたからだった。

二人の間の別れは、あっけなく訪れた。

藤崎は、支店長として、県内を二・三年くらいずつ勤めていたが、定年も近付いた時、彼の自宅近くの支店に赴任していた。

そうしたある日のこと、藤崎の秘書から電話があった。

予約の電話は、いつもこの秘書が電話を掛けて来ていたので、御礼を先に言って、行き先と時間を尋ねた。

暫くの沈黙の後、沈んだ静かな声で秘書が淡々と話し始めた。「支店長が今朝、自分で車を運転していて事故死しました。」

藤崎との別れは、こうして突然にやってきた。その後は、藤崎との思い出が強くタクシーから降りて数ヶ月は廃人同様だった。

“いつかは別れが来る”との思いはあったが、あまりにも唐突で立ち直れない状態が続いた。

数年後、ロンドンでアルバイトして覚えた料理の腕で喫茶店を開業したのも、藤崎との同棲生活を忘れられなかったからでもある。

藤崎に教えられた“男色の道”も当然忘れることは出来なかった。

それ以来、相方として付き合ったのも数人いたが、しかし、誰とも長くは続かなかった。それは藤崎との最高の付き合いが出来たこととのギャップがあったからだろう。

そんな時、時々打ち合わせや待ち合わせに利用してくれるようになった上野新平が好きになっていった。

この上野新平は、時々待ち合わせる相手が間違いなく“お仲間さん”だとの確信があったが、上野新平が、そうであるとは限らない。

川端は、自分が臆病になっていることを分かっていた。それでも口に出して打ち明け、万が一にも彼が“男色”に理解が無かったら二度と喫茶店を利用してくれなくなるだろう。

川端は、片思いのままでも良いとまで思って、上野新平を大切に見守ってきた。

藤崎の27回忌の法事に出た翌日、ちょっと沈んだ顔の上野新平を見て、堪らずきっかけが欲しくって、居酒屋に誘ってしまったのだった。

上野新平を見ていると、自分が若かった頃と重なり、ときめきを覚え、心が癒されるのだ。

藤崎との思い出を、断片的に思い出すことはあったが、今夜は上野新平と逢えると思い嬉しくなって涙がでそうになり、また過去の思い出が次々と浮かんでくる。

「今晩は、マスター、どうしましたか。」

いつの間にか目の前に、上野新平が立って声を掛けて来ていたが、藤崎は涙ではっきりと見ることができなかった。

「マスター。」

上野新平がカウンターの中に入って来て肩を揺すってきた。

川端は、藤崎に抱きついていっている錯覚で抱きついていき、思わず“お父ちゃん”と口走ってしまった。

それでも上野新平は、何もかも理解してくれているかのように、聞こえなかった様子で川端を抱き締め唇を近づけていった。

男同士のこうした様子は、常識人と自認する者には理解出来ないことだろう。男女、男と男。いずれも人間と人間だ。それが愛し合うのにどこが間違っているのだろう。

神様の一部には、こうした同性同士の愛情の結びつきを認めないと聞く。

人間と人間の愛情があることを認めてこそ本気で万物を見守ってくれる神様ではないのだろうか。

(つづく)
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お断り:小説の中に登場する人名、地名、企業名はすべてフィクションであり、故意的なものではありません。(源次郎)
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