上野新平シリーズ(第104話):コンビニに来るお爺ちゃん(4)By源次郎


(7)

「う、ううっ・・・、なぁアサゾウ、お前の長いっから・・・、う、うう・・・、突き上げが凄いんだ、あ、ああ、だから・・・、もう少し浅く突いてくれ、あう、あうあ、ああ。」

別府大分(べっぷだいすけ・65)は、風呂場の床で、尻を高く上げ、その背後に汗をかきながら懸命に長い“ちんぽ”をアナルに突っ込んで抽送している幼馴染の日田朝蔵(ひだあさぞう・65)に痛みを訴えていた。

「ダイスケは、相変わらず我が侭だな。あの頃と少しも変わっていないんだな。」

「うん、我が侭は、自分でも判っている。でもなぁ、苦しくって、痛いのは本当なんだから・・・、う、うう、うう、なぁ・・・、アサゾウ頼むっから、あ、ああ、そんなに突っつくな。ひっ、ひっ、ひひひ、あ、ああ。」

五十年ぶりに、再会できた二人は、公園を出て、“迷惑かけるから・・・”と、遠慮する日田朝蔵の手を掴み通りかかったタクシーを拾って別府大分の自宅マンションに連れ帰った。

「話はゆっくり聞くから、取りあえず風呂に入れ。おそらく数日風呂にも入っていないんだろ。さぁ、こっちだ。」

脱衣場に連れて行き、汗と埃汚れの服を剥ぎ取るように脱がせ浴室に背中を押して行き洗い場に立たせる。

「うっ、ダイスケ、どうしたんだ・・・、う、うう、バ、バ、カァ、よ、よして・・・、く、くく、くれぇ・・・。」

シャワーを手にした瞬間、日田は、足元に回りこんで座った別府に、いきなり“ちんぽ”の先を舐められ“あっ”と言う間に銜えられ、ザラザラした舌を巻き付けるように尺八されていた。

「おい、ダイスケ、刑務所でて、十日余りも風呂に入っていないから、汚れているんだ。臭いだろ・・・、あ、ああ、あう、あう・・・。」

日田が腰を振って逃げようとするが、しっかり両手で腰を掴まれ逃れられない状態だった。

「ダイスケ、五十年前には、こんなこと二人でやっていたが・・・、お前、まだこんな趣味忘れてなくって、好きなままだったのか。あう、あうう、あうう・・・。」

日田は、逃れられないと判り、別府が好きなように身を任せ、天井を仰いで息を荒げ始めていた。

別府は、饐(す)えた臭いの雁のくびれを唇でしごき、竿の根元まで飲み込み、鈴口にも舌先で突っつき、染み出してくる先走りをチュルチュル音を立てて吸っている。

気付くのが遅かったが、シャワーの蛇口を緩めかけていたため“じょぼじょぼ”と湯が別府の洋服に掛かっていた。

「ダイスケ。洋服が濡れているぞ。逃げないから慌てるな。洋服脱いで来いよ。」

「もぐもぐ、うん、判った。ちょっと待ってろ。あの頃のことを思い出させて良い気持ちにさせてやるから。」

名残り惜しそうに、やっと、日田の“ちんぽ”から口を離し、立ち上がりニッコリ笑って脱衣場に行き服を脱ぎだした。

足元に脱ぎ捨てるように服を落とし、浴室に入ろうとして、ドアの取っ手に手を掛け、ふと横の、洗濯機の上に脱ぎ捨てた日田のヨレヨレの服が目についた。

ニンマリ笑った別府は、隠すように服の下に丸めて置かれていた、塩たれたサルマタを取り上げ、日田の気配を気にしながらも、顔に近づけ鼻に押し付け、臭いを嗅いでみた。

先程舐めた日田の股間以上に凝縮されたガバガバの饐えた眩暈がしそうな汗とアンモニアの染みあとの臭いに“うっとり”しながら大きく数回吸い込んでいく。

(ああ、堪らない・・・。良い臭いだ・・・)

何度も臭いを吸い込んで、シミになった部分をチロチロ舐め、我慢出来ず口に含んでしまった。

塩味がするサルマタの股間部分を舐めまわし、ジュカジュカと噛み締め、舌舐めずりしながら、満足して浴室に入って行った。

「何していたんだ、ズボンのチャックでも壊れて脱げなかったのじゃないか。」

日田は、顔の髭を剃った後、シャワーで身体に湯を浴び、ボディーシャンプーを身体に塗りつけながら振り返って見て来た。

「うん、待たせたな。どれ、背中擦ってやるから・・・。」

そういって別府が、日田が手にしている垢すりタオルを取り上げようとして近付いて来た。

「お、ダイスケ。なんで勃起しているんだ。服を脱いでいただけだろ。」

別府の“ちんぽ”が勃起し、先走りを垂らしているのを目ざとくみて別府の顔を見上げた。

「ああ、アサゾウの“ちんぽ”しゃぶっていたら勃起したんだ。」

「ふぅーん、それだけか?」

とっくにアサゾウの“ちんぽ”は萎んでいたので、いつまでも勃起させている別府の“ちんぽ”を羨ましく、また不思議そうに眺めていた。

日田の坊主頭を洗い、背中から尻へと、力を込め、ゴシゴシこすっていく。

「さあ、後ろは済んだから、こっちを向いてみろ。」

「ああ、前は俺が洗うからいいよ。」

前をと言うことは、当然半勃起し始めた“ちんぽ”を見られてしまう、と考え一旦断ったが、別府は、それには構わず“くるっ”と日田の身体を回転させ、自分も座り込んで首から胸、腹部と洗い始める。

「お、アサゾウも、またしても勃起してきたか。」

別府は嬉しそうに、日田の両膝を開き、竿を掴み、シャンプーを素手で泡立て扱くように洗い出す。

「あ、ああ、気持ちいいなぁ・・・。子どものころは、公衆浴場だったから、ここまではしてもらえなかったなぁ。」

「しかし、その分、俺の家で気持ちよくなるように、しゃぶったり扱いて、射精させてやっていたじゃないか。」

「そうだったな、ダイスケも鍵っ子だったから、暗くなるまでしごき合っていたなぁ。」

浴室での二人は、タイムスリップして五十年前の中学生のころの思い出話に大笑いしたり、涙ぐんだりしながらの会話を続けていた。

日田の股間の泡をシャワーで洗い流し、浴槽に浸けてやる。

「ところでダイスケ、奥さんはどうしたんだ。買物にでも出掛けているのか。」

「そんなことは、あとでゆっくり話すから・・・。お、アサゾウの“ちんぽ”は相変わらずデカいなぁ。それに黒いのも昔のままだな、大人になって、益々ウマみたいにいやらしくなってきたんだな。」

「ああ、俺の“ちんぽ”がデカイのも黒いのも遺伝らしいんだ。小学を上がる頃まで、時々親父と一緒に風呂に入っていたが、意識して見ていなかったので、親父のがどんなだったか記憶が無いんだ。」

「そうか、羨ましい遺伝だな。それにしても、良いおじさんだったな、あんなに早く死んでしまって、あれからアサゾウも、お袋さんとどこかへ引っ越して行ったが、苦労したんだろうな。」

「うん、そうだなぁ、でも過去のことは、もう良いんだ。ダイスケは成功したんだな、商売も上手くいっているんだろ。」

「ああ、仕事は、すでに引退したようなもので、息子たちにまかせっきりだ。それよりマサゾウ、もっと近くに身体を持って来い。」

向かい合わせに風呂に浸かっていた二人だったが、別府の一言で、アサゾウは何を言いたいのか直ぐに理解して近付き、どちらからとも無く顔を近づけ唇を合わせる。

互いの足を交差させて身体を密着させ、しっかりと抱き合っていく。

二人の間には、勃起させた“ちんぽ”が二本上向きでビクンビクンと、互いの腹を叩くように、蠢(うご)めいている。

湯気と二人の体温で、浴室がムンムンとし、息苦しくなり、絡ませ合っていた舌を一旦抜き、顔を見合わせ大きく深呼吸をする。

「ダイスケ、良い身体になったなぁ。」

アサゾウは、抱き合っていた別府の身体から腕を外し、舐めるよう見つめて来る。

「ああ、体力を付けていないと“ちんぽ”も勃たなくなるからな。あっはははは。」

別府は、両腕を湯面から上げ上腕二頭筋に力コブを作って自慢そうにニンマリ笑ってくる。

「そんなものか、体力は必要だろうな。ダイスケ、立ち上がって全身を見せてくれ。」

日田に言われた別府は、何の疑問も持たずに“ザザァー”と立ち上がった。日田の目の前に、別府の半分皮を被った半勃起の、ずっしりした白い“ちんぽ”が揺れている。

「おお、美味そうな“ちんぽ”だ。なんせ五十年ぶりだからな、どれ挨拶させてくれ。」

そう言い終わらないうちに、日田は別府の“ちんぽ”をパクリと銜え込んでしまった。

別府の萎みかけていた“ちんぽ”は一気に日田の口の中でグングンと容量を増していき、完全に勃起してしまう。

「お、おお、美味いもんだ・・・、あう、あう、あ、ああ。」

別府は、両手で日田の頭を左右から挟み、顎を上に向けて腰を前後させていく。

「うぐうぐ、く、く、苦しい・・・。」

喉奥まで突っ込まれた“ちんぽ”を吐き出し、咽(むせん)でいる日田の背中を摩ってやりながら、日田の真っ黒い“ちんぽ”も勃起したままのが湯の中で揺らいでいるのが見えた。

其れをじっと見ていた別府は、何を思ったのか、浴槽から出て洗い場に四つん這いになり、肘をタイルに付け腰を高く尻を突き出した。

「おい、ダイスケ。何をしているんだ。気でも違ったか、そんな露わな格好して、あっははははっ。」

「アサゾウ、その太くって黒いのを、俺のケツに入れてくれ。」

別府は、床に伏せた腕から顔を起こし振り返って泣き出しそうな目で日田の顔を見つめて来る。

「おい、ダイスケ、今何を言ったのだ。」

日田は別府の言葉を聞き逃した訳ではなかったが、信じられない別府の意思を確認したかった。

「だから、お前の“ちんぽ”で突き刺してくれ。五十年前の約束だったろ。」

「ダイスけ、本気か。あの頃は、なんだかんだと言い逃れして、俺のケツばかり犯して、俺には素股で済ませて、一度も入れさせてくれなかったじゃないか。」

「だから、今借りを返すんだ。思いっきり突っ込んでくれ。」

信じられない顔で、暫く無言のまま考え込んでいた日田だったが、ゆっくり浴槽から立ち上がり、別府の尻タブの後ろに座って眺めた。

「いいケツしているんだな、おい、本当に、本気なんだな。あの頃のように、肛門を舐めさせるだけで、また逃げるんじゃないだろうな。」

日田の尻毛を撫で摩りながら、尻タブの割れ目を両手で押し開き、ひくついている菊座を眺め、やおら舌先でチロチロ舐め始める。

「あ、ああ、おお、おお、お、おお、い、いい、うっふぅーん、あ、ああ、いいなぁ・・・。」

「本当に良いんだな、入れるぞ・・・。」

「あ、ちょっと待ってくれ。そこにハンドシャンプーがあるだろ、ボディーシャンプーの横においてる。それを塗りたくってから入れてくれ。」

「うん、わかった。ハンドシャンプーは刺激が弱いから良いだろうな。お前、準備が良すぎるんじゃないか。時々、男を引き込んでココでやっているんじゃないのか。それとも、奥さんとやっているのかな。」

日田は、言われたハンドシャンプーのポンプ式ボトルをシャカシャカ押しながら手にとって、別府の肛門付近に塗りたくり、自分の“ちんぽ”にもしごきながら、たっぷり塗りつけていく。

「アホ、そんなことやっていない。時々“せんずり”掻くときに使っているんだ。」

「なんだ、奥さんが居ても、こっそり“せんずり”掻いていたのか。寂しいやつだな。あっははははっ、奥さんにセックス断られていたんだろ。俺もそうだったけどな。」

「そんなことは、どうでも良いだろ。気が変わらないうちに突き刺してくれ。」

「わかった、ちょっと待ってろ。もう少し硬くしてからお邪魔するから。どれ・・・、ケツをもっと高く上げてみろ。」

日田は、片手を自分の竿を支えしごきながら、別府の双丘の割れ目をなぞっていき、ぷっくり膨らんだ菊座の中央に押し当てた。

もう片方の腕で、腰から腹の方に巻きつけ抱き寄せるように引き込み、自分の腰を押し付けていく。

「うっ、い、い、痛い・・・。おい、ゆっくりやってくれ・・・、あ、ああ、ゆっくりにな・・・。」

泣き出しそうなくぐもった声で、懇願してくる別府の言葉を無視するかのように、一気に雁さきを捻じ込んで行く。

「だ、だから・・・、あ、ああ、ゆっくりって・・・、言っているだろ、お、おお、入ったのか、く、くく、苦しい・・・。」

「何、泣き言を言っているんだ。痛いのは一時(いっとき)ってな、うんうん、先っぽが埋まったぞ、どうだ、大した痛みはなかっただろ。」

「あ、ああ、大丈夫だった。でもしばらく、そのままでな、なな・・・。」

日田は、刑務所を出て以来のアナルでの快感をいつまでも楽しみたかったが、食事もままならない生活が続いていたので、体力的に無理があった。

刑務所では、六人部屋で、年寄りから若い男まで、好むと好まざるに関係なく、掘ったり掘られたりで、性処理には不自由しなかった。

栄養管理も行き届いていて、酒やタバコが不自由するくらいで極楽そのものだった。

しかし、日田には“殺人の前科者”というレッテルが貼られたままの冤罪に対する燃え上がる復讐心が頭から離れることは無かった。

二十分程、懸命に抽送していたが、いきり立っていた黒くて太い“ちんぽ”も、いつしか萎んでしまった。

「お、おい、どうした。アサゾウ射ったのか。」

別府は、懸命に苦しさを我慢しながらも、いつの間にか痛さも消え、擦られる前立腺を刺激されダラダラと先走りが洗い場の大理石のタイルに糸をたらしていた時だった。

「ああ、ダイスケ、俺、駄目になった。体力が限界だ。」

悲しそうな顔をする日田を振り返り“そう言えば顔色も悪いし、年齢にしては老けている”と改めてシミジミと、幼馴染の顔を見た。

「何だ、そんなことか。今日から運動して、栄養のある食事をしていったら、昔の元気を取り戻せるんだから、そんな顔するな。」

別府は、立ち上がり、頭を項垂れ(うなだれ)て洗い場に座り込んでいる日田にシャワーの湯を掛けてやり、脇の下に腕を差し入れ立ち上がらせ、唇を付けていく。

「ダイスケ。俺はな・・・、もう駄目なんだ。年金も無いし、住所不定の前科者では仕事も無いんだ。」

唇を離し、吐き捨てるように溜息混じりに、涙さえ浮かべ、呟くように言ってくる日田を、さらに力強く抱き締め顔を合わせ少し怒った口調で言い聞かせる別府の目にも涙が滲んでいた。

「なぁ、アサゾウ。これからは、何にも心配要らない。俺と一緒に暮らそう。どうしても一緒が嫌だったらしょうがないが、ゆっくり仕事探したら良いだろう。取りあえず、数日ここに居てくれな、いいだろ。その間に“冤罪”についても二人で考え、出るべきところに出て解決させる道を探そう。」

強引かとも思えたが、遠慮する日田を説き伏せ暫く滞在させることにした。

(8)

日田は、別府が筋肉トレーニングする前のスリムな身体のころに着ていた服を貸してもらい“一杯やりながら夕食を”との誘いで付いていくことにした。

すでに暗くなり始めた町並みは、看板の照明やネオンが点灯し始め、今まで眺めていた風景とは打って変わって暖かく輝いて見えた。

別府は、こうして五十年ぶりに幼馴染との再会に、上野新平が関わってくれていることを不思議にも思いながら感謝していた。

“静かな所が良いだろうな”と考え、上野新平に誘われ紹介された割烹に予約を入れた。

割烹「ひさまつ」のご主人も、上野新平と来たことを覚えてくれていて、喜んで予約を承諾してくれた。

その日は、二十人くらいの宴会が入っているので、和室の小部屋を開放して全部使うから、申し訳ないがカウンターで良ければとのことだった。

竹垣の扉を押し、打ち水がされた玉砂利を踏み締め玄関の扉を開けようとして、店内の明りが暗いように感じたが、予約は確かに今夜だといっていた筈だったので、引き戸を開けて見た。

「いらっしゃいませ。折角おいでいただき申し訳ありませんが、本日は急遽休業させてもらうことにいたしました。ご予約されてすぐに休業を決めたので、お電話させていただいていました。これは、粗品でございますが・・・。」

カウンターの椅子から立ち上がり、先日上野新平と来た時見かけた仲居のおばさんが気の毒そうに言って、タオルらしいのを差し出した。

「おや、そうでしたか。それは残念だったな。他に宴会のご予約もあったそうですが大変だったでしょう。」

「はい、今、お世話されている幹事さんに連絡取って居るのですが、携帯電話が通じなくって何度も掛けていました。どうぞ、お茶だけでも・・・。」

仲居さんが入れてくれたお茶を椅子に座って受け取り、一緒に入って来た筈の日田の姿が見えないのに気が付いた。

「それで、急遽お休みにされたと言うことでしたが・・・。」

「はい、申し訳ありません。ここの主人には、持病の狭心症がありまして、最近頻繁に痛みがあるそうで、今日は、余程のことだったのでしょう。急に厨房で座り込んでしまいましたので、薬を飲んでもらって、二階の自室に寝かせています。」

仲居さんは、言い訳をしながらも、電話のダイヤルを何度もプッシュしていた。

いつの間にか入って来ていた日田が、カウンター内側の、仕込みかけの材料や、料理のお品書きを覗き込んでいる。

「アサゾウ、表でなにをしていたんだ。今夜は臨時休業らしいんだ。」

「うん、ちょっとな、綺麗に手入れされている庭を見せてもらっていた。ところで、おかみさん・・・。」

「えっ、私のことですか。おっほほほ、私は、おかみさんではありませんことよ。パートの仲居です。」

「ああ、仲居さんでしたか。ご主人に合わせていただきませんか。」

日田は、そう言いながらも、食材の新鮮度とかを確認しているのか、葉や茎を千切っては歯で噛んだり舌の上で味を確かめている。

「おいおい、アサゾウ。何をやっているんだ。お茶をもらったら、食事する場所を探しに行くんだぞ。」

日田の行動に不審を感じながら“こいつに料理のことが判るのだろうか”と疑いの目で見ていた。

「仲居さん、宴会が始まるまで、どのくらいの時間がありますか。」

「だから、今夜は、臨時休業にさせてもらっています。手伝いの若い男の子も、休みだと聞いて飛び出して行きましたよ。きっとパチンコして飲んで帰るでしょうから遅くなりますでしょう。」

「若い男の子とはいいんです。ご主人は二階に休んでいるんですね。ちょっと会わせてもらいます。」

日田が勝手に二階に上がっていこうとするのを、仲居は、困惑した顔で、別府の顔を見てきた。

別府も最初は、この日田が何を言い出すのか理解できなかったが、再会以来始めてみせる輝かせた目つきに圧倒され、じっと見つめるしかなかった。

暫くして、日田が、和服に着替え前掛けをし、ニッコリ笑って階段を降りて来た。

「おかみさん、じゃなかった仲居のおばさん。ご主人の了解をもらったので、本日の宴会は予定通りやります。それに、ダイスケ。小取りがいるんだ、おまえも上着を脱いで手伝ってくれ。」

「アサゾウ。気でも違ったか。俺たちは、客なんだぞ。飯も食わずに何をしようとしているんだ。それに、ここは、そこいらの居酒屋とは違って舌の肥えたお客さんが来るんだ。判っているのか。」

心配する別府の言葉には耳もかさず、宴会場のテーブルの配置を見に行き、戻って来てカウンターの中に入り、食材と宴会のお品書きを照らし合わせ始めた。

あっけに取られた、別府と仲居は、日田の動きを見ていたが、“本気でやる気だ”と感じ、あたふたしながらも日田が指示する手伝いをしていった。

今にも飛び跳ねて船盛から出て行きそうな生き生きした鯛の活き作りを四隻作り上げ、テーブルに並べ終わり、宴会客が来るのを待つだけになっていた。

「おかみさん・・・、じゃなかった、仲居さん、今夜の宴会の客は、どんな団体ですか。凄い料理を計画してありましたけど。」

カウンターの中で、取りあえず一仕事を終えた日田が聞いてきた。

「まぁ、すばらしい手際の良さで、吃驚しました。ここのご主人とお知り合いだったのでしょうか。」

「まぁね、話せば長くなるけど四十年振りだったかな。昔色々と教えてもらった兄貴です。それで宴会の客は・・・。」

「私も、詳しくは聞いていませんけど、電話受けた時、宗方大臣の事務所と言っていましたから、政権報告会の二次会ではないかと・・・。以前にも何度かおいでいただいています。」

「そうですか。これから、また忙しくなりますから頑張ってくださいね。ダイスケも早いところエプロン着けて手伝いの準備してくれ。さてと・・・、なにから取り掛かろうかな。」

別府には、日田がやる気になって目を輝かせているのを見て、改めて惚れてしまった。

少なくとも、料理の心得があるのは確かだろうが、心配でもあり、また一緒に飲めないのが不満でもあった。

戦争みたいな数時間が過ぎ、慣れない仲居さんもどきの手伝いでクタクタになった別府は、宴会の客を送り出した後、食器類の後片付けをし、宴会場の掃除まで済ませ、開放して作っていた和室に襖で小部屋に仕切終えたところで、その場にひっくり返って大の字に寝てしまった。

「ありゃ、こいつ、伸びてしまったのかな。おい、ダイスケ、大丈夫か。」

「仲居さん、何か毛布でもあったら掛けてやってて下さい。私は、器の洗物を済ませます。残業になってしまいましたね。先に帰宅していいですよ。」

「これが済んだら、ご主人に報告して帰ります。」

仲居は、日田に言われたように別府に毛布を掛けてやり、座布団を二つ折りにして枕代わりに頭の下に入れてやってから

「明日も何時の時間に参ります。見習いの兄ちゃんは帰って来ないでしょうから火を落として帰ってくださいまし。お疲れ様でした」

と言い残して帰って行った。

洗物を済ませ、残飯をビニール袋に入れ終わり、カウンターと調理台周りを拭きあげ、照明を切って椅子に座りコップに注いだ酒を一気に飲み干し大きく溜息をついた。

「何だ、こいつ本気で寝込んでしまったのか、このくらいの仕事でくたばってしまうなんて、筋トレも肝心な筋肉を鍛えていないんだろな。あっはははは。」

日田は、別府に掛けていた毛布を掛け直し、二階で休んでいる割烹「ひさまつ」の主人のところに報告に上がっていった。

「板長、朝蔵です。お品書きを参考に作らせてもらいました。おかげで、宗方大臣もご機嫌でお帰りになりました。板場は簡単に拭きあげています。今夜は取りあえずこれで帰りますが、明日の夕方にでもまた来て見ますのでゆっくりお休みになっていてください。」

奥の座敷で寝ている主人に手前の部屋から障子戸越しに正座し畳に手を付いて声を掛けてみた。

「ああ、朝蔵。有難う、やっかいかけてしまったな。おかげで助かった、ご苦労さん。」

眠っているかとも思っていたが、やはり宴会のことが気になっていたのだろう、朝蔵の報告を待っていたようだった。

「板長、水臭いですよ。困った時くらい手伝いさせてくださいよ。」

「ああ、有難う。朝蔵の声を聞けるなんて思いもしなかった。四十数年振りだろうな。」

「はい、私も、ここで兄貴に会えるなんて思いもしなかったことです。それで、身体の調子はどうなんですか。」

「うん、最近、頻繁に不整脈が有ってな、そろそろ引退の時期かとも思っているんだが、長年のお客さんが承知してくれないんだ。」

「ご無理されないようにして下さい。それでは、明日また来てみますから、今夜は連れも居ますのでこれで失礼します。」

「連れと一緒だったのか。ああ、別府さんとか言う人だったかな。」

「はい、ガキの頃の友達で、彼とも、偶然五十年振りで逢いました。」

「そうだったか・・・、別府さんと友達だったか・・・。久し振りのことだったのに厄介掛けてしまったな。別府さんにも宜しく伝えてくれ。」

「ひさまつ」の主人の声が涙声で震えている。それを聞いた日田は、堪らず障子戸を開けて布団に横になっている主人のところに歩み寄って行った。

「兄貴。厄介だなんて思っていません。そんなこと気にしないで休んで下さい。」

「ああ、有難う。」

割烹「ひさまつ」の主人、志免権田(しめごんた・70)は、日田に言われるまま身体を横にしてマッサージしてもらうことにした。

「あ、ああ、朝蔵。本格的なマッサージだな、気持ちがいいよ。こんな技術をどこでおぼえたのだ。あ、ああ。包丁さばきより美味いんじゃないか。」

「包丁さばきよりってのは、褒めすぎですよ。でもそうかもしれない、あっはっはっはっ。兄貴も風の便りにお聞きでしょうが、しばらく臭い飯食っていましたが、その時教えてもらいました。」

「そうか、ご苦労だったんだな。冤罪だとの救う会が出来ていたようだったが、いつの間にか消えていたようだが。」

「はい、色々と応援してもらっています。今でも連絡先はあるんですが、罪を認めた形で服役しましたので、自然消滅していったようです。」

「そうか、それは残念だな。しかし、自分が殺っていないのなら最後まで戦うんだな。俺も手伝うことがあったら何でもいってくれ。役に立つことがあるかもしれないからな。」

「有難うございます。お袋の50回忌までには冤罪を晴らして報告してやりたいのですが。まだ何も出来ないでいます。」

三十分余りマッサージしてやったが、「ひさまつ」の主人が気持ちよさそうに寝息をたてだしたので、そっと掛け布団を掛けてやり階下に降りた。

うたた寝していた別府を起こし、帰宅途中屋台でとんこつラーメンを食べ、焼酎三杯を飲んでマンションにたどりついたのは午前一時過ぎだった。

朝の目覚めは、九時過ぎていたのではなかっただろうか。セミダブルのベットで、素っ裸の二人は、ほとんど同時に目を覚まし、絡ませた足を抜くことも無く、別府に引き寄せられるまま身を任せ抱き合い唇を重ねていった。

昨夜の激しい二人の絡みとは打って変わって、あっさりした朝の挨拶だった。

勧められる朝食も牛乳を一杯飲んだだけで、日田は、顔髭も剃らずにマンションを出た。

垢抜けた格好では、公園で会う約束をしている上野と言う人に失礼になるような気がしたためだが、別府は“そんな気は遣わなくっても・・・”と言っていた。

親切に弁当持ってきてくれると言っていた、上野という男の期待に対しなんとなく失礼だと思ったからだ。

昨日、上野に弁当を貰い、五十年ぶりに再会した別府と座ったベンチには正午前に着いた。

(つづく)

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お断り:小説の中に登場する人名、地名、企業名はすべてフィクションであり、故意的なものではありません。(源次郎)
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上野新平シリーズ(第104話):コンビニに来るお爺ちゃん(4)By源次郎 への1件のフィードバック

  1. take より:

    上野新平シリーズを楽しみにしています。私も相方さんと6年間、愛を育んでいます。この物語と同じような付き合いです。

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