上野新平シリーズ(第105話):コンビニに来るお爺ちゃん(5)By源次郎


(9)

日田朝蔵(ひだあさぞう・65)が、上野新平が“きっと、約束だよ”と言ってくれた公園のベンチに着いたのは、正午少し前だった。

(ちょっと早かったようだな・・・)

そう思い、しばらく待つことにした。それでも一時間が過ぎ、そろそろ午後二時になろうとしている。

(やっぱり、あの男、いい加減なこと言っていたんだ。俺がホームレスだから、そのば繕いで“友達だ”とか“明日も・・・”とか言ったんだ。)

日田は裏切られた気持ちで悲しかった。犬に吠えられたことはあったが、刑務所を出て、十日目にして初めて人間から声を掛けられ、会話らしい会話をしたのであったが、やはり信用する方が間違っていたんだ。

どうして、気まぐれにオレみたいなホームレスの男に声を掛け、親切に弁当とお茶まで持って後をつけてきていたのだろうか。

でも、日田は、おかげで五十年ぶりに別府と遇うことができた。これは間違いの無い事実なんだ。

その上、板前の修業を始めた時、包丁の握り方もまともに知らなかった自分に、一から教えてくれた、いわば板前の師匠ともいえる志免権田に会えるきっかけを作ってくれたのだ。不思議と言えば不思議なくらいに思える男でもある。

出来ることなら、1パーセントの望みでもいいから、あの上野と言う男を信じたかった。

上野新平が現れる方向の公園入り口を凝視していると、なぜか目が潤んできて、街影がぼんやりとしてくる。

正午前から来ていたのだから、行き違いになることはないだろう。万が一にでも、あの男に突発的な用事が出来て来れなかったとしても、オレは二時間も待っていたんだ。男としての約束は果たした筈だ。

子どもの頃から、両親に“約束だけは自分を犠牲にしてでも守れ”と躾られたのだ。だから、これまでの人生で、約束を破られたことはあっても、自分から約束を忘れたり、破ったことがないのだ。

日田は、それだけは胸を張って自慢できることだった。

公園東側通りの向こうのビルに取り付けられている時計は既に午後二時を過ぎている。

諦めきれない気持ちであったが、日田はベンチを立ってズボンの尻を叩(はた)き、あるはずの無い忘れ物はないかと、今まで座っていたベンチを見ていた。

「おじさぁーん、ごめんなさぁーい・・・。」

車の騒音の中から、待ち焦がれた上野新平の声が聞こえたように思ったが、先程から何度も聞こえたような気がしていた。単なる街の騒音だったのだが、自分の思い過ぎだろうと振り返りもせず、ベンチから離れ出口の方に歩き出していた。

「おじさぁーん、ごめんなさぁーい・・・。ちょっと待ってくださぁーい」

確かに上野新平が、自分を呼んでいるようだ。

会いたい一心で二時間も待っていたのでまたも“幻聴”かとも思い、苦笑いしながら上野新平が入ってくるだろうと思われる入り口を振り返ってみる。

それでも、身体は歩き出していたため、新平の姿を確認できた時は十歩くらいベンチから離れていた。

(何だ、あいつやっぱり来てくれたのか・・・)

そう思うとなぜか目が潤んできてしまった。こんな顔を見せたくない。

そう思った日田は、目にゴミが入ったように瞬きしながら中指で涙をサッと拭いて上野新平が近付いてくるベンチの方に歩き寄っていった。

「おじさん、待っていてくれたんですね、有難う。」

上野新平は、駆け足で来てくれたのだろう“はぁはぁ・・・”と息を荒げながら近付き日田の手を取って握手してきた。

弁当を持って来てくれるのを待っていたことに、日田は汗が噴き出ている新平の顔を見て“すまなかった”と思うと同時に、自分の態度に哀れささえ感じ、待ち焦がれていた気持ちとは反対に、この場を逃げ出したい気さえしていた。

「ああ、何もやることが無いからな。待っていた訳ではないんだが、時間潰ししていた。兄さん、忙しかったんだろ。無理しなくってもよかったのに。」

気持ちとは違った言葉が出てしまい後悔したが、新平のニコニコ笑った顔に救われた思いだった。

(どうして自分に正直になれないのだろ。)思いあたるところ、すべてに背を向けようとしている自分に腹が立った。

「ごめんなさい、バイトの大学生が無断欠勤して、勤務シフトが都合できなくて、気になっていたのですが、こんな時間になってしまいました。お待ちどおさま、さぁ食べましょう。」

新平が差し出す弁当を受け取るのに一瞬躊躇いがあったが、受け取らないのも大人げないようだし、第一、二時間も待ったのは弁当欲しさだけではなかったのだし、頭を下げ両手で受け取った。

時々、互いに顔を上げて見詰め合うのだが、新平は、終始ニコニコしながら弁当を口いっぱい押し込み、会話など出来ないようだ。

殆ど同時に食べ終わり、ペットボトルの茶で口の中に残った食べ物を飲み込んでから声を掛けて見た。

「上野さんだったね。美味しかったよ、有難う。」

初めて自分に正直になれた気がした。満腹感による心の余裕だろう。

「ああ、お礼言われるとテレます。本当に遅くなってごめんなさい。弁当が無駄にならなくて良かった、こちらこそ有難う。」

「そんなことは良いんだが・・・、どうして、こんなホームレスに親切にしてくれるんだ。声だって掛けてくれない人ばかりだし、第一、皆避けて通るのがあたりまえな世の中だ。」

「ああ、オジサン。そんなこと気にしないでね。たんなる気まぐれなんだから。」

そう言って、新平は弁当が入っていたプラスチックの入れ物をビニール袋に入れ、日田の弁当箱もココに入れてくれと袋を広げ日田の目の前に差し出してくる。

そうした新平の動作を見ながらも、この男とダイスケの関係は何だろうと考えてみるが思いつかない。

(まさか・・・、お仲間? そんなはずは無いだろう・・・)

日田が怪訝そうに見ていると気付いたのか、それでも新平は笑い顔で、ちょっと首を傾けてみてくる。

「ああ、ごめんな。ついつい見つめてしまっていた。あっははは・・・。気まぐれか、うんうん、そうしとこう。でもな・・・、嬉しかった、有難う。」

日田は、ビニール袋を持った新平の手を両手で握り締め何度も上下に振っていた。

「あ、オジサン。勤務シフトが不規則なので、今度は三日後でないと逢えないのですが・・・。」

済まなさそうな顔で日田の顔を見てくる。

「ああ、仕事が大変なんだね。それから、オレも少し暖かいところに場所を移すつもりだから、しばらく会うことも無いと思うよ。」

日田は、しばらく別府大分のところに厄介になろうと心の中で決めていたが、新平の悲しそうな顔を見て、差し障りの無い嘘をついてしまった。

「えっ、引越しですか。折角友達になれたのに残念だなぁ。しかし暖かいところがいいでしょうから、また戻って来てね。」

この上野新平と言う男はどこまでお人好しなんだ、こんなホームレスを友達だなんて本気で言ってくる。

「あっははははっ、引越しだなんて、そんな仰々しいことじゃないんだ。身体一つでドコにでも行けるんだから。それにしても、まだ“友達”と思ってくれるのか、嬉しいな、有難う。あんたも元気でな。」

共通した話題が無いのも当然だが、休憩時間が無いからと上野新平がベンチから腰をあげ握手を求めてきた。日田は慌てて、その新平の右手を両手で握り締めていく。

それに対し、新平は、左手にビニール袋を持ったまま日田の両手を包み込むように乗せニッコリ笑ってくれた。

暖かい上野新平の手に包まれ、日田朝蔵は、全身に電気が走ったように感じ、興奮すらしていた。

(このオトコは、何者だろう・・・。神様?)

日田は、包まれた手をいつまでも放したくなかったが、ごく自然に上野新平の両手が日田の掌から解かれていった。

「じゃぁ、オジサン。元気でね、又きっと会おうね。」

そういって公園の出口に向かって歩き出してしまった。

あっさりした別れで、なんとなく物足りなさを感じた日田であったが、こうした“さばさば”した別れもいいだろうと思えた。

何か声を掛けたかったが、いま声を出すと涙があふれて震えた声が出そうで黙り込んで上野新平を見送り背中に“有難う”と心の中で叫んでいた。

「アサゾウ。やっぱり今夜も“ひさまつ”へ、手伝いに行くのか。」

別府が入れてくれたコーヒーをソファーの左端で飲んでいる日田に、素っ裸の上にタオル地のバスローブを着て、立ったままでコーヒーを飲みながら別府が聞いてくる。

小さい音で、別府が好きなクラシック音楽が流れるのを聞いていると、心地良く、上野新平の笑顔を思い出し、刑務所生活を送ったことがウソみたいに洗い流される思いでもあった。

昨夜の睡眠不足もあって、眠くなって来た日田は、返事するのも億劫だった。

「なぁ、アサゾウ。今夜くらいゆっくり夕食に出掛けられないのか。五十年振りの再会をお祝いしたいじゃないか。」

日田の肩に手を乗せ甘えた声で別府が頼んでくるが、日田の気持ちは決まっていた。

「ダイスケ、お前の気持ちは充分判る。判っているんだ。俺もそうしたい。でもな、昨夜約束したんだ。今夜様子を見に行くからとな。約束していなくても、昨日の今日だろ、四十年振りに会えた恩人の師匠だ。体調が心配なんだ。判ってくれ・・・。」

それを聞いて別府も仕方なく納得した。日田が手にしているコーヒーカップを、そっと取り上げ、自分のマグカップと一緒にテーブルに置き、日田の両脇に腕を差し入れ立たせた。

ちょっとよろめく日田の身体を支えてやり、ギュッと引き寄せ抱き締め唇を近づけていく。

二人顔を見合わせ、日田も少しだけなら時間があることだしと、唇を付け舌を別府の唇をこじ開けるように差し入れていく。

別府は、その日田のヌメッとした舌を吸い込み絡ませてくる。

顔を左右に傾けながら互いの舌をむさぼるように舐めあい自然にどちらからともなく、相手の股間をまさぐり、半勃起した“ちんぽ”をそっと撫であい腰を押し付けていく。

バスローブ一枚の別府の足元に腰を落とした日田は、別府のバスローブの裾を広げ、顔を埋め、“ちんぽ”の周囲に頬擦りした後、垂れた金玉を舐め上げ、水平に突き出てきた日田の“ちんぽ”を咥え尺八を始める。

いつしか、日田の洋服も剥ぎ取られてしまい絨毯に倒れこんでシックスナインでしゃぶりあっていた。

まだ日が暮れる前に割烹“ひさまつ”の玄関前に着いた日田が目にしたものは“本日臨時休業します”の木の札だった。

その木の札を手に玄関扉を横に引き、中に入ったが、薄暗いカウンター先にある大型のガラスの生け簀の蛍光灯だけがボンヤリと点灯し、海水循環ポンプの音だけがやけに大きく響いていた。

また、カウンター席の後ろにも池が掘ってあり、時々、活きのいい鯛が大きく飛び上がり水面を叩きつけている。

「おはようございます。板長、どこですか・・・。朝蔵です。」

静まり返った店内には相変わらず循環ポンプの音と、池で跳ねる魚の水音だけだった。

(二階に寝ているんだろう・・・)

割烹“ひさまつ”の主人(志免権田)は、若いころから腰痛の持病があったので、時々マッサージしてやっていたのだが、狭心症の話しは聞いていなかったので、加齢による体調の変化から来たものだろうか。

日田は、二階に上る階段を軽やかに上がり始めたが、階段の途中まで上がったところで、ヒソヒソと話している男の声が聞こえて来た。

足を止め、聞くともなしに中の様子を伺った。

“あ、ああ、良太、い、いい、そこを強く・・・。う、うう、あ、ああ、いいぞいいぞ・・・”

“ご主人、疲れました。そろそろ終わりにさせて下さい”

一人は、疑いも無く板長の声だが、もう一人の若い男の声は誰だろう、昨夜、休業と言われパチンコに行ったと仲居さんが言っていた男だろうか。

(まずい所に来てしまったな、おそらく若い男と絡んでいるんだろう・・・。病気で臨時休業だと言いながら、いい気なものだな・・・)

日田は、嫉妬心が沸きあがってきて腹が立った。体調が悪いと言いながら、若い男と昼間っからチョメチョメしているようだ。

“ああ、疲れただろう、有難う。だいぶ楽になった。それはそうと、さっき玄関で声がしたようだったが鍵は掛けなかったのか”

“そうでしたか、聞こえませんでした。鍵はどうだったでしょう、忘れていたかも・・・”

“今日は、もういいから明日電話してから来てくれ。それと玄関の鍵は忘れずにな”

“はい、判りました。それではボクはこれで失礼します。ああ、そうだ、仲居のおばさんには電話で休業って連絡しています”

まだ身づくろいもしていない筈のタイミングで障子戸が開いて若い男が部屋から出て来て、階段の中ほどの日田と目があってしまった。

「あ、今日は休業させてもらっています。すみません。」

日田が考えていた茶髪で生意気そうな若僧とはかけ離れた丁寧な言葉遣いで、それに洋服もきちんと着ている。

日田が考えていた板長と若い男の子との絡み合いではなかったのだろうと安心した。

「やぁ、こんにちは。ご主人の様子を伺いに来ましたが、お元気そうですね。」

数段の間があいているので、日田は若い男の顔を見上げ、そのまま足元まで見ていき、当然、股間のふくらみが左右どちらかも確認したが、厚手のジーンズをはいていて、目的のふくらみは股間の中央で上向きに収まっているようだ。

「あ、昨夜の宴会用の料理を作ってくれた人でしょう。有難うございました。」

礼儀も一応心得ているようだ。

「ああ、下ごしらえも済んでいて、お品書きもあったのでご主人には叶わないのだけど、オレなりの料理を作らせてもらった。」

「ちょっと待ってください。親方、昨夜のオジサンが見舞いに来られましたよ。」

若い男は、部屋で横になっていると思われる板長に声を掛けている。

「ああ、案内は要らないよ、勝手に会わせてもらうから。」

朝蔵は、ずかずかと板長が寝ている布団の所に歩み寄って顔色を伺った。

若い男の子の傍を通りすがりに、股間のふくらみに掌で包み込み“ササッ”と撫でてやった。振り返ると、若い男の子は“何をされたのだろう?”と言いたげな赤い顔をして、呆然と立ち竦んでいた。

(10)

「おい、兄さん。そこの里芋の皮を剥いて桶の水に浸けていてくれ。それが済んだらホウレン草を湯がいてくれ。」

「はい、オジサン、承知しました。」

「あのなぁ、客の前でオジサンってのは可笑しいから、そうだな・・・、朝って呼んでくれ。」

「朝ですか、それもヘンですから、朝蔵さんにします。」

「あっはははっ、若い子に“朝蔵さん”って呼ばれると照れるが、ま、いっかぁ。」

割烹“ひさまつ”の臨時休業を急遽取りやめさせ、若い男の子と二人で、まずは“付き出し”を四種類作り、玄関の“準備中”の札を外し客を待つことにした。

「兄さん、休みの予定を変えられて迷惑だったろう。」

「いいえ、朝蔵さんの腕前が見られるのが嬉しいです。先程ご主人の身体をマッサージしながら、朝蔵さんの腕は相当なものだと聞いていましたので、会いたかったんです。」

「そうかい、ちょっと褒めすぎだろうが嬉しいな。今夜は宴会用の料理の予約が入っていないから、次の機会にでも見せてやるよ。」

「是非お願いします。いろんな人の腕を盗めって言われていますので、勉強させてください。」

午後十時に玄関先の庭の照明を落とし暖簾を屋内に取り込み、十一時に全部の客が帰っていった。

「ご苦労さん、俺は二階に挨拶してから帰るから先に帰っててくれ。」

日田は、首に巻いていた日本手ぬぐいで顔を拭き二階に上り、昨夜と同じように“ひさまつ”の主人にマッサージをしてやり、寝息が聞こえてきたから掛け布団を掛け直し、下階に降りてきた。

「何だ、兄さん。まだ帰っていなかったのか。」

照明を落とした薄暗いカウンターの椅子で居眠りしている若い男の子に声を掛けた。

「あ、朝蔵さん。一緒に帰りたかったので待たせてもらっていました。」

「そうか、それでは、川通りの屋台ででも一杯やって行こうか。」

十数件が並んだ屋台で、二人くっ付くような狭いバンコに並んで座り、コップ酒で乾杯して飲み始める。

「おお、若いのに結構イケルんだな。」

三杯目の日本酒を飲み干した若い男に感心する日田も負けずに四杯目をお代わりする。

「お父さん、若いのにってのは余計ですよ。酒の量は年齢には関係ないでしょう。」

「それも、そうだな。わっははははっ。おい、いま俺のこと“お父さん”って言わなかったか。」

「はいはい、言いました。お父さん。ちなみにボクの年齢は幾つくらいに見えますか。」

丸っこい顔で、前髪垂らした悪戯っぽいクリクリした真っ黒い瞳で見つめられる。“可愛い顔をしているなぁ”と、しばらく見詰め合っていると、親方に良太と呼ばれていた男は首を傾げ真っ赤な唇を半開きにし、白い歯を見せてニッコり笑って見つめて来る。

「うぅーん、そうだな、幾つくらいだろうと考えたことがなかったが・・・、幾つだ。」

「ずるいなぁ、私が聞いているのに。あと一ヶ月で50になります。」

「えっ、50って、お前の親の年齢じゃないんだぞ。」

「わっはっはっはっ、面白いお父さんだ、ボクの親父の年齢を言ってどうなるんです。それに僕の親父は中学三年の時に40で亡くなりましたから・・・。」

そうした会話の間に時々必要以上に膝を日田の太股に突っつくように押し付けて来る。

酔った訳では無かったが、日田も意識して若い男の子の膝を撫で摩ったり、掌で膝の少し上を被せるように摘んでみる。

「そうか、それは寂しかっただろうな。偶然って言うか、俺も中3の時に親父を亡くした。それにしても、あんたが50とは信じられないな。だったら孫が居ても可笑しくないよな。」

「多分まだだと思いますが。あっはっはっは、結婚が遅かったので娘は、まだ小学生です。」

日田は、改めて50だという前髪垂らした良太の顔を見直した。

「そうか、可愛い年頃だな。」

「確かに可愛いです。私が大学を出た頃は就職難民が多く出た頃で、そのためもあって結婚が遅くなりました。嫁は三つ年上で、中学の教師しています。私は、ずっとフリーターみたいな生活でした。それで、生活には困らなかったのですが、食事の準備をずっと、当たり前のようにやってきましたが、その延長線に“料理が好きだ”と気が付き、“仲居さん募集”の張り紙を見て、男でも良いですかって無理に雇ってもらいました。三年前です。」

(姉さん女房の甘えん坊か・・・それにしても、ペラペラと、よく喋るオトコだなぁ・・・)

自分の都合よく考えるのが日田の欠点でもあるのだが、先程からの膝を押し付けて来ていたのは“ある種の信号?”だったとしても不思議ではない。

「ぼちぼち、腰を上げようか。さっきの話では通り道だから家まで一緒にタクシーで送ってやろう。」

いつの間にか、二人の会話も途切れがちになり、ラーメンと焼きおにぎりを食べ終わっていた。

よろめく足取りで肩を組み、川沿いを北に向かい、タクシーが客待ちして長い列をつくっている広い通りの手前まで来た時“小便したい”と言い出した良太を細い路地に連れ込む。

「あ、お父さん。ここでは迷惑ですよ。この路地を抜けたところに小さい公園がありますから、そこまで我慢します。」

「そうか、そうだよな。俺も小便したくなったから一緒に行こう。」

文字通り狭い路地で、肩を組んだまま横歩きしないと抜けられない邪魔な電柱をかわしながら歩いていく。

どこかで、この良太の唇を奪いたいが、拒否されたら“酔っ払ったかな”とか言って、何でもなかった振りが出来そうだ。

でも、相手も大人だ、この道がバレたら“ひさまつ”にも行けなくなるだろう。肩を組んでいる腕にも力が入る。

路地から抜けるところに最後の電柱が立っている。

(やるなら、ここが最後のチャンスだ・・・)

日田は、通りから隠れて見えないように、良太の背中を電柱に押し付け抱きついていって顔を見合わせた。

良太もその気があったのか、抵抗することも無く、目を瞑って身体を硬直させ震えているのが日田の身体に伝わってくる。

断ってから唇を付けていこうと思っていたが、身体が先に行動を開始していた。

日田の唇が良太の唇に触れると同時に良太の方が先に舌を延ばし日田の唇を舐め始めてきた。

左腕を良太の首に巻きつけ顔を傾け思いっきり顔をくっつけていき、半分開いた良太の唇に舌を差し込んでいく。互いの歯と歯がガチガチ音をたてて当たっている。

日田は、空いている右手を良太のジーンズのファスナーを素早く引き下ろし、手を突っ込んでいく。

最近の若い子は、トランクスが多いと聞いていたが、良太はブリーフをはいているようだ。すでに勃起させた上向きの竿に添って撫で上げていくと鈴口の形がくっきりと確認できた。

その部分を親指の腹で撫で摩っていて異変を感じた。

「良太。濡れているが、漏らしたのか。」

「はい、突然だったので吃驚して、チビっちゃいました。」

「わっはははっ、ウブなんだな。後はトイレでやってくれ。こんな所で漏らしたら冷たくて歩きにくいだろ。」

首に回していた腕を一旦離したが、再び良太の唇を吸ってから解放してやり公園のトイレに急いだ。

小便臭い狭い路地を抜け、一方通行の道路を横切った所に、切れかかっているのか点滅している蛍光灯の外灯の先に、公衆便所らしいブロック作りの建物が見えた。

五個並んだ小便器があったが、左右に分かれて立ち、同時に音を立てて放尿を開始する。

路地を出た頃から二人の会話が無くなり黙りこんで小便器の前に立ったのだが、黙り込んだままでは気まずい感じがする。

「兄さんは、親方から良太って呼ばれていたが、名前聞いていなかったよな。」

奥の右端の小便器で自分の小便の泡を覗き込むように下を向いていた良太と呼ばれていた男が顔を上げ、日田のほうを向いて口を開いた。

「そうでしたね。芦屋良太(あしや・りょうた)って言います。さっきも話しましたが“ひさまつ”に勤めだして三年になります。それまでは色々な仕事をしていました。いわゆる派遣社員です。腕に技術がないと将来が心配になりだしたので、“仲居さん募集”の張り紙を見て、歳はくっていましたが、一年は無給でいいからと親方に泣きついて雇ってもらいました。」

一度聞いていたのだが、一気に喋りだしたので、日田は、芦屋良太に顔を向け黙って聞いていた。

「そうだったか、それにしては若く見える。腕に技術ってのは確かに大事なことだからな。俺は、日田朝蔵、65歳だ。親方とは、40年くらい前に数年一緒の所で働いていた、板前の師匠だ。」

「そうでしたか・・・。」

先に小便を済ませた良太が、日田の後ろを通って出口に向かおうとしているのを、小便しながら右手を後ろに広げ良太の身体を掴んだ。

「わっ、・・・・・・。」

日田に引きずられるように身体を捕まえられたまま横に立たせられる。

「最後の締りが悪いので困ったもんだ・・・。」

日田は、左手で“ちんぽ”を摘み“ちょろちょろ”と最後の雫を落としている。

良太は、ここで初めて日田の黒くて太いどっしりした重量感がある“ちんぽ”を見せられた。

「うっわぁ、でかいですね。それって勃起していない時でもそんなにでかいのですか。勃起したらどんなになるのでしょう。怖いような・・・。」

「見せてやろうか。見たいんだったら良太の手で太くしてみてくれ。」

日田は、まだ滴る竿をプルプル振りながら良太の方に黒くて太い“ちんぽ”を突き出していく。

目を丸くして、じっと眺めていた良太が、日田の雁先を親指と人差し指で輪を作り握って来る。

「うっわぁ、入らないですよ。すっごいなぁ。」

感心して雁先を摘んだり竿を掌で包むようにして扱き始めている。

「うっ、遊びは、そこまでだ。それ以上されると貯まっているから発射してしまう。あ、ああ・・・。」

日田は、腰を引いて良太の手から逃れ、それでも半勃起し始めた“ちんぽ”はズボンから出したまま、良太の身体を両腕で捕まえ引き寄せていった。

腰を押し付けていくと、一旦逃げられてしまった獲物が良太がぶら下げたままの手に捕まってしまう。

日田は、良太の首に腕を回し顔を引き寄せ唇を付けにいく。

「う、うう、ここではマズイっすよ。うぐうぐ・・・。」

唇を塞がれ舌を捻じ込まれた良太は、目を見開いたままトイレの入り口に人の気配がないか凝視している。

「そうだな、見られても構わないが、関係ない人を興奮させてもまずいだろうな。」

日田は、顎を突き出しトイレのブースに入ろうと無言で伝える。

抱かれたまま、良太は後ろを振り返り、トイレの扉を見て、日田が言わんとしていることを了解した。

良太は、背中に回された日田の腕に押され、ブースに押しやられるように一緒に入っていく。

トイレのブースに押しやると同時に、日田は後ろ手で扉を閉め、鍵のフックを回していた。

用便器を跨ぐようにして立ち、良太の身体を隣のブースとの仕切り板に押し付け唇を重ねていく。

「うぐぁうぐぁ、うっふふ、うっふぅーん・・・。」

良太は、閉ざされたブースに入って安心したのか、思いっきり気分を高揚させ日田の顔を両手で固定し、逃げないようにしてくる。

日田の両手が空いたので、良太のズボンのベルトに手を掛け“ガチャガチャ”と外しに掛かる。

ファスナーを引き、両手をズボンの中のブリーフに差し入れ、そのまま膝下まで落とし、先走りでじっとり濡れた雁先を摘んで撫で回していく。

ぬるぬるの雁先が一段と先走りで濡れ、それを掌で掬うようにして竿を扱いていく。

「あ、ああ、お父ちゃん、あへあへ、あへ、あ、ああ、あう、あう・・・。」

舌を絡ませていたのも忘れ、顎を天井向け喘ぎ始める良太の泣き出しそうな顔をみて、日田は、用便器に座り込み良太の竿を一気に咥えこみ尺八を始める。

「あ、ああ、そんな、そんなことを・・・、あ、ああ、お父ちゃん、うふうふ、あ、ああ、堪忍してぇ、あ、ああ・・・。」

良太は、日田の頭に両手を乗せ、日田が尺八のスピードを落とすと、自分で腰を前後させ“続けてくれ”と催促するようにしてくる。

舌を巻きつけ、喉奥まで飲み込み、一気に雁の括れまでひきだし、また喉奥まで飲み込んでいく。

唇だけで扱き、良太が突っ張っている両足がガクガク震えだしたところで、スピードを上げていく。

「あ、ああ、あん、あん、お父ちゃん、駄目、駄目、駄目だよ、あ、ああ、出る、出る、出ちゃう・・・、あ、ああ。」

間もなく、日田の口の中にドロドロしたものが勢いよく発射され、入りきれなかった精液が唇の端からダラダラと流れ出してくる。

良太の震えが納まった頃“ごっくん、ごっくん”と飲み込んでいった。

「あ、お父ちゃん、そ、そんなもの飲み込んじゃ駄目、あ、ああ、飲み込んでしまっちゃったぁ。ごめんなさい、教えるのが間に合わなかった。」

翌朝、日田は“虫の知らせ”というものなのか、胸騒ぎがして、ダイスケの朝食の準備をすませると、走り書きのメモを置いて“ひさまつ”に出掛けた。

割烹“ひさまつ”に到着すると、庭の端の“信楽焼きのタヌキ”の傍に隠している鍵で玄関を開け二階に駆け上がって板長の寝床に急いだ。

そこには掛け布団が剥がれていて、板長の姿が無かった。敷布団を触って見ると、随分前に起きたのか冷たくなっている。

一階には居なかった筈だから、便所にでも座っているのだろうかと、二階の廊下奥の便所を覗いて、板長が意識をなくし、便座からズリ落ち、床にうずくまっているのを見つけた。

日田は、慌てて板長を抱え上げ、布団まで連れてきたが、心臓に耳を当てて微かだが鼓動を確認して安心した。

救急車を呼び、大学病院に緊救入院させ、取りあえず意識が戻ったところで医者の説明を聞き、担当医と一緒に手術することを説得した。

診断によると、心臓から出る動脈の内、二本のバイパス手術が必要とのことだった。

急を要するとのことで、種々の検査の後三日後に手術が行われた。

胸部から腹部を開腹し、肋骨二本を折って、大腿部の血管を利用してバイパス手術をすると言う、大掛かりなもので十時間かかってICU室に運ばれてきた時には、無事を祈る日田と芦屋もヘトヘトになっていた。

それからは、深い絆で結ばれた日田と芦屋は、“似合いの親子コンビ”と“ひさまつ”の常連達に言われるような仲の良い呼吸で店を盛り上げ休業することもなく、板長・志免の留守を守った。

(つづく)

ーー
お断り:小説の中に登場する人名、地名、企業名はすべてフィクションであり、故意的なものではありません。(源次郎)

*****************************************************************************・上野新平シリーズ(BY源次郎)に戻る

カテゴリー: 未分類, 上野新平シリーズ, 作者:源次郎 パーマリンク

以下にコメント・投稿を記入下さい。お名前は必ず記入下さい(匿名可)。メール情報(非公開)は必須ではありません。既コメントに対しては、当該コメント下部の返信をクリックし、記入下さい。

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中